九 入学初日
入学初日なのに始業ギリギリになってしまったが、フレイアさんはあらかじめ手続きを済ましておいてくれたので、あとは担任の教師と顔合わせをするだけだった。
「じゃあ、僕は先に教室で待ってるね!」
レイは手を振り教室に向かって行った。
すると、フレイアさんと担任の教師と思われる三十代くらいに見える優しそうな男性が階段を降りてこちらにやってきた。
「さて、カズヤさん。時間もないので、早速紹介いたします。こちらが担任のフェイ・サルビア先生です。彼は私が理事長になる前からの付き合いがあり、とても信用できる方です」
「フェイ・サルビアだ。クレスター夫妻とは長年の付き合いがあり、今回の事情は聞いている。困ったことがあったらなんでも相談してくれ」
「ありがとうございます」
「ではフェイ先生、あとはよろしく頼みますね」
「はい。さぁカズヤ、教室に行こうか。二年生の教室は二階にある。」
階段を昇って二つの目の教室の前に立ち止まる。
「それじゃあ、俺は先に入るから呼んだら入ってきてくれ」
「わかりました……」
まさか高校を卒業してまた二年生からやり直すことになるとは……そして魔法学園という異世界の学校にはどんな生徒が集まっているのだろうか。
「カズヤ! 入ってきてくれ」
扉を開け中に入る。
教室には俺を除いて生徒が十五人と意外と少ない。
人間と魔族が半々でその中にはレイの姿もあった。
「それじゃあ簡単に自己紹介を頼む」
「カズヤ・ヴァンです。至らないところがありご迷惑をおかけすることがあるかもしれませんが、よろしくおねがいします」
とりあえず無難に挨拶をして一礼する。
「じゃあ、カズヤの席は……」
フェイ先生が空いている席を指さそうとすると……
「カズヤ! こっちだよ! こっち!」
レイが嬉しそうに隣の席を手招きしながら指さしている。
何だかみんなの視線がさっきと変わったような気がする。
そそくさと席に座る。
「困ったことがあったら何でも言ってね。もしイジメてくるような奴がいたらちゃんとお仕置きしておくから安心していいよ」
「転校初日から不穏なことはやめてくれよ……こんなこと言える立場ではないけど最低限のフォローで頼む」
そんなやり取りをしてるとさっきより周りの視線がキツくなった気がした。
その後、いくつかの連絡事項が伝えられて、いよいよ授業が始まった。