六 新たな同居人
その後、オークの少女と別れてクレスター邸に戻ると、アイビーを連れてレイと一緒にフレイアの部屋に向かった。
「フレイアさん、失礼します!」
「どうぞ、入ってください」
ドアを開けるとフレイアさんは三人分の紅茶とお菓子を用意して待っていた。
三人が来るのことを予想してしていたかのような持てなしだ。
「さぁ、紅茶が冷めないうちにどうぞ」
とりあえず座って紅茶をいただく。
優しくて心が落ち着く味だ……
レイが口を開いた。
「母さん、お願いがあるんだ。今、うちは男の使用人が足りないと言ってたよね? こいつを雇ってくれないかな?」
フレイアはアイビーのことをじっと見つめて答える。
「アイビーさん、あなたはどうしたいのですか?」
自己紹介もしてないのに、なんでフレイアさんはアイビーの名前を知ってるんだろうか。
アイビーも驚いた顔をしていたが、すぐに覚悟を決めた表情になり、真っ直ぐとフレイアさんを見て答える。
「俺は、フレイア様とレイ様にお使えしたいです。そして使用人としてだけではなく、カズヤ様を友として側で支えられるよう強くなりたいです。自分のような者を許してくれた方々に少しでも恩返しができるように頑張ります!」
「フレイアさん! 居候の身で大変厚かましいお願いなのですがこいつを雇っていただけないしょうか?」
「いいですよ」
予想外にあっさりと承諾されてしまった。
「フレイアさん、本当にいいんですか?」
「友のために強くなろうとする覚悟をもち、罪を認め恩人のために頑張ろうとする誠実さをもつ者を私は見捨てられません。それに若い男性使用人がほしかったのは確かですし。まぁ、アイビーさんのような方を追い返したらどうせ夫が連れ戻してくるでしょうから……」
「フレイアさん、ありがとうございます!」
「クレスター家、カズヤ様、そしてお世話になった方々のために精進してまいりますのでよろしくお願いいたします!」
アイビーは深々と礼をして感謝の言葉を伝える。
「うちの屋敷はアイビーさんのように訳ありの方もたくさん雇っています。その者たちはきっと力になってくれるでしょう。もちろん私も……あなたはもう独りではないのです」
「フレイア様……本当にありがとうございます……」
涙を目に浮かべてアイビーは再び深々と礼をする。
「ところでフレイアさん、どうしてアイビーの名前をご存知だったのですか? それにどうして俺たちがここに来ることも……」
「それは私は島の子どもたちのことは全て把握しています。あと、カズヤさんとレイの他にアイビーさんがこの屋敷に近づく気配を感じたので、三人ですぐにここに来ると予想して準備をしていただけです」
うーん……
レイも凄いけどフレイアさんも化物なんだろうな……
とにかく、アイビーという同居人が増えてこれから賑やかになりそうだ。