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英雄の箱庭〜君と共に生きるための物語〜  作者: 松野ユキ
第四章 七月 共に生きるための涙
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四十 突然の来訪者

 レイとの初対決では予想外の展開になったがなんとか二人とも生き残ることができた。


 しかし、レイが持つ悪魔の魂が予想以上に早く覚醒し始めていることについては何らかの手を打つ必要はあるだろう。


「とりあえず、しばらくはペアリングを通じてカズヤくんの光の魔力を供給していれば大丈夫だろう。ただ……二人の実力差がなくなればリングの特性上、魔力が常時供給されなくなってしまう。新たに魔力を供給する装置を用意しなければいけないね」 

 

 マルスさんの言うとおりだ。


 これからレイに追いつくとなるとペアリングによる常時の魔力供給は期待できない。


「それ以前に僕が悪魔の魂をコントロールできなかったのは、カズヤを信じきれずに動揺してしまったせいでもある。もっとメンタルを鍛えないと……」


 レイが申し訳なさそうに俺の方をみる。



「全くだ。その程度で俺たちに挑もうとか舐められたもんだ」


「言い方というものがあるだろう。レイもそれはわかっているはずだ」


 一人は黒髪の少年。細見ながらも筋肉はかなり鍛えられているのがわかる。


 もう一人は長い金髪の女性……? いや、制服は男子のものだから男だ。


 大人びた美しく顔立ちをしており、身長も高くて見た目では少年とは言えないな……


 というか、この二人はどうやって時の狭間に入ってきたんだ?

 

 それに俺たちに挑むってまさか……


「副会長と会長なんでここに……」


 レイが冷や汗をかいて動揺している。


「クォーツ、ヴェヌス、あなたたちは仕事で忙しくて今回の件には関与しないと言ってたのではなかったのですか?」


 フレイアさんが問う。


「そりゃあ、計画通りにやってるならマルスも理事長もいるし、俺たちが関わる必要はないわな。でもあんな禍々しいものを感じたら駆けつけないわけにはいかないだろ」


 感じた?


 ここは時の狭間だぞ?


「理事長、仕事なら私が全て片付けてきている。もちろん副会長の分も」


 さっきから副会長とか会長とか言ってるけどやっぱりこの人達が……


「あのぉ……大変失礼ではあるんですけど、お二人は『永遠の生徒会』の会長と副会長でよろしいんですよね? 俺はカズヤ・ヴァンといいます」


「そうだな。自己紹介がまだだったな。私は『永遠の生徒会』会長のヴェヌス・フォールだ。以後よろしく」


 ヴェヌス会長と握手を交わす。


 近くで見るとイケメンというよりホント美女だな……


 よく見ると小さな角が二本生えているけど魔族なのか?


「俺は副会長のクォーツ・リンドウだ。うちのレイが迷惑をかけたな。すまなかった」


 クォーツ副会長が俺に頭を下げる。


「いえいえ! 自分の力量を測るために俺が頼んで挑んだことですし……」


「それでも引き受けた以上はレイの責任だ。それはそうと、お前は今俺に挑んでこないのか?」


「――え?」


 今? レイとの対決が終わって疲れ切ってるんだぞ?


 いやたとえ万全の状態でもクォーツ副会長から滲み出る殺気を感じれば安易に挑めないだろう。


「――大人気ないことをしたな。でも俺に挑みたいと聞いてたから少し試してみただけだ。白創の剣(はくそうのけん)をようやく発動させたみたいだしな」


 副会長ならば白創の剣(はくそうのけん)のこともご存知か……


「クォーツ副会長、申し訳けないけど、カズヤくんとレイの今後について話し合ってもいいかな?」


 マルスさんが申し訳なさそうに会話に割り込んでくる。


「そうだな。血の契約で抑えられなくなってきてるのはやばいしな……」


「まぁ、あの程度の契約で破壊の悪魔をいつまでも抑えられるわけないだろう。とりあえずカズヤくんの光の魔力を供給して抑える装置をクレセントのアスに調達してもらうしかないな」


「お前なぁ……あの程度の契約って……」


 副会長と会長って仲が悪いのかな?


「とりあえず装置の調達については生徒会を通してクレセントのアスに調達してもらう。あとカズヤくんとレイは夏休みの間は僕が合宿で鍛えるということでいいかな?」


「神具持ちを鍛えるならお前しかいないだろうしな。あとはカズヤに光の魔力についてもそろそろ教えてやるべきだろ」


「ちょっと待ってよ! 二人で勝手に話を進めてるけど僕とカズヤは夏休みはずっとマルス兄さんにしごかれるのかい?」


 レイが困惑した表情で抗議する。


「レイ、君は今のままでは私に勝てないことは分かっていると思っていたが? それにまたカズヤくんに迷惑をかけるのか?」


「会長……僕にだって予定というものが……それに生徒会の仕事も……」


「夏休み期間中はそんなに仕事はないだろ。それに副会長が君の仕事をやってくれるそうだ。何の心配もいらないぞ」  


「は? なんで俺が?」


 クォーツ副会長が本気で怒っている。


 前から聞いてはいたが本当に仕事をしたくないんだな……


「君はいつもレイに仕事を丸投げしてるだろ。たまには彼女の仕事をしてあげてもいいだろう」

  

「俺だって遊んでいるわけではないのに……わかったよ。マルス! 本気でレイはしごいていいからな」


「え? 僕だけ? カズヤは?」


 永遠の生徒会のメンバーは加入時点で歳を取らないというけれどクォーツ副会長は一体実年齢は何歳なんだろうか……


「まぁまぁ二人とも平等にしごいてあげるからレイもカズヤくんも安心していいよ」


 鍛えてもらえるのはありがたいけど何か納得いかない流れだ……


「あのマルス様……その合宿に私も参加させていただけないでしょうか?」


「俺も是非お願いします」


 スカーレットとケブが嘆願する。


「どうしようかなぁ……僕はカズヤくんとレイを鍛えるのに集中したいんだけど……」


 マルスさんが腕を組んで悩む。


「二人はグリットに預けてみてはどうかしら? 彼なら炎魔法と大剣のスペシャリストだし」


 フレイアさんが提案する。


「そうだね。あの人なら二人を鍛えて貰うのに適任だ。二人ともそれでいいかい?」


「お願いいたしますわ」


「アドル様の相棒と言われたお方なら文句があるわけないです!」


 二人とも快諾する。


「アドルの相棒のグリットねぇ……まぁグリットの特訓についていけるならこの二人は化け物になって帰ってくるだろ」


 クォーツ副会長が意味深な表情をしている。


 俺としてはグリットさんは口は悪いけど情に厚い人だから心配ないとは思うけど、スカーレットみたいなお嬢様には厳しいと思われているんだろうか。



 突如現れた、会長と副会長。


 この人たちを俺とレイは秋に倒せる力を身につけないといけない。


 七月も今日で終わり、マルスさんと過ごす地獄の夏休みが明日からいよいよ始まる……

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