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英雄の箱庭〜君と共に生きるための物語〜  作者: 松野ユキ
第三章 六月 道を切り開くための風
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二十五 顔合わせ

 放課後、空き教室に行くと二人の生徒が座っていた。

 

 一人はゴーレム、もう一人は水色の髪に変わった耳の形をした少女だ。

 

 

「みなさん、ごきげんよう」

 

 スカーレットが二人に挨拶をする。

 

「あぁ……スカーレットか」

 

 表情は読み取れないがゴーレムは不愛想な返事をする。

 

「スカーレットちゃん! やっぱりあなたも選ばれたのね。一緒に頑張ろ!」

 

 青髪の少女は嬉しそうに飛び跳ねながらスカーレットの両手を握る。

 

「で、スカーレット。隣にいるのはお前が炎魔法対決で負けた学園長特別推薦の奴か?」

 

「カズヤ・ヴァンさんですわ。実力は私が保証します」

 

「カズヤ・ヴァンだ。よろしく」

 

 ゴーレムは俺のことをじっと見つめる。

 

「――なるほど……ティタン・グレイブだ。よろしく頼む」

 

「私はローレライ・ワルツ。スカーレットちゃんとの対決でカズヤくんが出した光る火柱はとても綺麗で感動だったね。よろしく!」

 

 ローレライはあれを見てたのか……

 

「ところで彼は? まだ来ておりませんの?」

 

「どうせあいつならギリギリにくるだろう」

 

「あの人優秀だけど、苦手なのよね……」

 

 最後の一人は男なのか?

 

 それも評判悪いみたいだけど……

 

 その時ドアを開き、緑髪の少年が入ってくる。

 

「結局このメンバーかよ? ってドラゴはいねぇのか? 代わりが理事長特別推薦のコネ野郎か? 選抜チームもコネで入れて羨ましいねぇ……」

 

 もうこういうのはお約束になっているから慣れてしまった。

 

「カズヤ・ヴァンだ。ドラゴくんではなくて申しわけないけど君の足を引っ張らないようにがんばるよ。よろしく」

 

「ふんっ! アネモイ・ウィンディアだ。俺は実力で島外からこの学園に入ってきた。邪魔をしたら俺の風魔法で吹き飛ばすぞ」

 

「そうならないように努力するよ」

 

 また、ドアが開くと今度はフェイ先生が入ってくる。

 

「みんな揃ってるな。俺は二年Aクラスの担任のフェイ・サルビアだ。今回は選抜チームの世話をさせてもらうことになったよろしくな」

 

「フェイ先生! 自分のクラスだからってこのカズヤとかいうのを選んだんじゃないでしょうね?」

 

 アネモイがフェイ先生を睨みながら問う。

 

「これは二年の担任三人で決めたことだ」

 

「それならカズヤの実力を見せてくださいよ。この面子なら前衛で俺と組めるのはドラゴくらいでしょ」

 

 アネモイは俺の方を見て言う。

 

「いいだろう。そういうと思って室内訓練場を前から予約してある。メンバーの能力を確認する必要があるので、そのときにカズヤの実力を見定めればいいだろ」

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 こうして俺たちは室内訓練場にきた。

 

 体育館くらいの広さと天井の高さだ。

 地面は黒土で覆われている。

 

「さて、誰から魔法を見せてくれるかな?」

 

 フェイ先生がみんなに尋ねた。

 

「じゃあ、私からいきますわ」

 

 スカーレットはふところから手のひらに収まるくらいの杖を出す。

 

 魔力を込めると杖が伸びる。

 

「そんな武器を持っていたのか?」

 

「最近、お父様に作っていただいたものですの。それではいきますわ!」

 

 スカーレットが燃える杖を水平に振ると、地面に赤い線が引かれる。

 

 さらに杖を地面に刺すと、赤い線から炎の壁が吹き上がる。

 

 なるほど、防御壁か。

 チームプレイをするならいい技だ。

 

「これまでは自分のための魔法に拘っていたのにチームのための防壁とは成長したな。それで次は誰がいく?」

 

「俺が行かせてもらう」

 

 ティタンは大きな拳を振り上げて魔力を地面に放出する。

 

 すると十数メートルさきの地面が割れた後に、大きな岩がいくつも出現する。

 

「じゃあ次は私ね! それ!」

 

 ローレライが両手を広げると、地面の破れ目から水の龍が出てくる。

 

「今は怪我人がいないからこんなことしかできないけど、専門は回復魔法と捕縛魔法よ」

 

「さて、残り二人だが……どっちが先にいく?」

 

「俺が格の違いを見せてやりますよ」

 

 アネモイが片手を振り上げると、数本の竜巻があたり一面に広がる。

 

 これは回避するのは難しいな……

 

「まぁ、魔法はこんなもんだ。本当に得意なのは剣術だけどな。で、お前はなにができるんだ?」

 

「とりあえず二つの魔法を見せるよ」

 

 まずは白のリングと黄のサブリングを発動させ、ダイヤモンドの盾を出す。

 

「このダイヤモンドの盾は非常に硬いけど、強い衝撃に弱いのと高熱だと燃えてしまうのが欠点だ……次は光炎だ」

 

 赤のサブリングを発動させ、収束した高出力の光炎を放つ。

 光炎ビームは訓練場の壁を貫通してしまった。

 

 こっちは室内で使うと危ないな……

 

「こっちは威力があって、収束させれば今みたいにビームにできる。あとは剣に(まと)わせることも可能だ。まぁ室内で収束した光炎を出すのは危険だな」

 

「訓練場の壁を貫通する魔法なんて見たことがないぞ……しかも速すぎて軌道が見えなかった……」

 

 ティタンは驚いている。

 

「凄い速さと威力です! どうやってそんな魔法出してるんですか?」

 

 ローレライがはしゃぎながら俺に尋ねる。

 

「それは……」

 

 俺が答えに困ってると……

 

「カズヤは生まれつきの特殊体質で地魔法と炎魔法を強化できますの」

 

 スカーレットがフォローしてくる。

 

「そんな体質は聞いたことねぇぞ! その左手にはめてるリングで威力で強化してるんだろ?」

 

 アネモイが左手にしている銀色のペアリングを指さしていう。

 

「別に外してもダイヤモンドの盾と光炎は出せるけど、出そうか?」

 

 その言葉を聞いたアネモイは歯ぎしりをしながらこちらを(にら)んでくる。

 

「まぁアネモイ。 喧嘩をするために互いに能力を見せたわけではないんだから落ち着け」

 

 フェイ先生が熱くなっているアネモイをたしなめる。

 

「とりあえず全員の能力は見せたわけですわね。それでフェイ先生。試合のルールはどういうものですの?」

 

 スカーレットがフェイ先生に尋ねる。

 

「三十分以内に敵陣地のフラッグを取るか、全員気絶させたら勝ちだ。どちらも無理なら最後に立っていた人数で勝敗を決める、当日はフレイヤ様が防御壁を張るから今日みたいに壁が貫通することはないだろう」

 

「まぁ三年生を全員気絶させることは無理だな。なんとかフラッグを奪いにいくか、制限時間内に三人以上立っているかどらかだな」

 

 ティタンの言う通りだ。

 

「問題は攻めと守りの役割分担ね……私は先程言った通り、回復役だから攻めはできないわ……」

 

「ローレライが気絶したら回復役がいなくなるから、優先して守る必要がありますわね」

 

「つまり二人で協力しながら攻めて、ローレライを含めた三人で旗を守るのがいいってことか?」

 

「そうだな。俺は見ての通りそんなに素早くは動けないから攻めには向かない。スカーレットかアネモイかカズヤのうち二人が攻めにいくべきた」

 

 確かにティタンは二メートル以上あってケブより重そうだ、から旗取りには向いてないな……

 

「俺は攻めをやらせてもらうぜ。剣は得意だし。風魔法ですばやい移動ができる。問題は俺についてこれる奴がいるかだけどな」

 

 アネモイは俺とスカーレットの方を見る。

 

「それなら攻めはカズヤに任せるしかありませんわ。身体能力ならカズヤの方が上ですもの」

 

 まぁ、白のリングと二つのサブリングで身体能力を強化すればそこそこは動けるからな。

 あと光炎でのブーストで加速ができる。

 

「ふん、俺の足を引っ張ると置いていくぞ。お前のせいで俺がアピールできなかったら困るからな」

 

 アネモイは小馬鹿にしたような顔でこちらを見てくる。

 

「アピールってなんだ? 成績に特別加算でもされるのか?」

 

「成績には加算されないが、優秀な二年生は来年もメンバーに選ばれやすくなる。そして来年メンバーに選ばれればこの学園のトップクラスの生徒として対外的にも強くアピールできるのさ」

 

 フェイ先生が説明してくれる。

 

「そうだ。俺はお前らと違って将来はウィンディア王国を背負わなければいけない。そのためには世界トップレベルのこの魔法学園で実績を残して優秀さを国で示す必要があるんだよ」

 

 ウィンディア王国?

 アネモイ・ウィンディア……

 

 つまりアネモイはウィンディア王国ってとこの王子様なのか!

 

 嫌な奴だと思ってたけどアネモイも大変なんだな……

 

 

 こうして、顔合わせ済み、試合の役割分担も決まった。

 

 はたしてこのメンバーで三年生のトップスリーに歯が立つのだろうか。

 

 いや、この三人に勝たなければレイには追いつけない。

 

 試合までにやれることをやってチームの勝利に貢献できるようにしよう。

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