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英雄の箱庭〜君と共に生きるための物語〜  作者: 松野ユキ
第三章 六月 道を切り開くための風
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二十四 二年生選抜チーム

 ここ最近はずっと雨だ。

 

 外に出なくても学園内に室内訓練場はあるのだが、三年生が優先して使うのでなかなか予約がとれない。

 

 早く風魔法を自由に使いこなせるようになって、レイみたいな風の球体で完全に身体を覆えるようになれば雨の中でもやれることはあるのだが……

 

 始業前にそんなことを考えながら、指先で小さな風の傘を作って遊んでいるとレイが話しかけてきた。

 

「風のコントロールは慣れてきたね。傘くらいならもう余裕で作れているじゃないか」 

 

「そりゃ、ここ最近はずっと雨だからな。嫌でも傘の作り方は覚えるよ。お前みたいに風の球体を作れたら雨の中でも訓練ができるんだけどね」

 

「別に訓練のためならペアリングで僕から風魔法を借りればいいじゃん?」

 

「半分くらいまではできるようになってるから自力でなんとかしたいんだよ。自分でやれることは自分でやらないと成長しないだろ」

 

「君は本当に真面目だねぇ……」

 

 レイがため息をついて呆れているとチャイムがなり、担任のフェイ先生が入ってくる。

 

 

 出欠をとり、諸々の連絡を済ませると、最後に二年生の選抜チームと三年生の選抜チームで試合を行うと発表した。

 

「毎年恒例の行事だが、二年生から選抜された五人と三年生から選抜された三人で試合を行う」

 

 二年生は五人なのに三年生は三人なのか。

 まぁ流石に対等な条件では勝負にならないのだろう。

 

 でも、三年生の三人って……

 

「もちろん『永遠の生徒会』に所属している者は選抜対象外とする。つまりレイは選抜対象外だ」

 

 そりゃそうだよな。

 

 生徒会まで選抜対象になったら三年生は会長と副会長と会計で枠が埋まるから選抜の意味がなくなるし。

 

 それにレイを入れるにしてもこちらが有利になり過ぎるからな……

 

「それで、うちのクラスからは二人選ばれることなった」

 

 二人かぁ……

 

 まぁ、レイを除けば一人は間違いなくスカーレットだろう。

 もう一人は二年生で五位以内の成績を修めているという、竜族のドラゴくんかな?

 

「スカーレットとカズヤだ」

 

 ほら、スカーレットだ。

 

 ん? 俺?

 

 周囲の視線を感じる。

 

 レイの方を見ると小さく拍手をしながらニコニコしている。

 

「じゃあ、二人とも放課後に他のメンバーと顔合わせをするから、二階の空き教室に集まってくれ」

 

「はい、わかりましたわ」

 

 スカーレットは返事をする。

 

「カズヤはどうした?」

 

 反論はしたいけどおそらく無駄だろうな……

 

「が、頑張ります!」

 

「それじゃあ以上だ。今日も一日頑張ってくれ」

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 午前中の授業はとても憂鬱だった。

 

 選抜チームの一員として選ばれことでやることなすことが、注目されているような気がした。

 

 そんな中、ドラゴくんは「カズヤなら大丈夫だよ」と気遣ってくれた。

 

 優等生の笑顔がとても眩しい……

 

 

 そして、昼食の時間、学食の隅の席で俺とレイとケブとスカーレットのいつもの四人で食事をしながら選抜試合の話をしていた。

 

「いやぁ、カズヤまで選ばれるとは予想外だったね!」

 

 レイは嬉しそうに山盛りのミートソースパスタをほおばる。

 

 嘘つけ、お前は絶対に知ってただろ。

 

「カズヤには悪いけど、成績を考えたらドラゴだと思ったぞ。

 カズヤの成長は明らかに異常ではあるけど……」

 

 ケブが申し訳なさそうにこちらを見てくる。

 

「いや……いいんだ。俺だってドラゴくんで間違いないと思ってたし」

 

「私はカズヤの方が連携しやすいですわ。マルス様との戦いでカズヤの実力はわかっていますし。それはそうとして、試合ではどこまで能力を出しますの?」

 

「リングの力は大量の魔力を必要とするからここぞというときのために温存しておくかな? チーム戦となるとこの力を説明するのも面倒だし……」

 

 以前よりはリングの力は持続できるにせよ、一般生徒が相手ならあまりリングの力は見せないほうがいいだろう。

 

「三年生相手にそんな舐めたことしていいのかい? 生徒会メンバーが出ないと言っても相手は現役三年生のトップスリーだよ? 会長と副会長と僕がいなければ生徒会入りしててもおかしくない面子だ」

 

「でもチームのメンバーにはリングの力についてなんて説明するんだよ?」

 

「別にリングの力なんて表の歴史に出てるわけでもないし、そういうもんだと適当にあしらえばいいだろ? それにリングなしの君だとメンバーに馬鹿にされるぞ?」

 

 デザートのアイスクリーム盛りを食べながら、レイは答える。

 

 確かに成長はしているとはいえ、リングの力がないとチームの一員として認めてすらもらえないからな……

 

「カズヤのことなら私がフォローしますから大丈夫ですわ」

 

「スカーレットさん(・・)が同じチームにいて本当に心強いよ……」

 

 思わずスカーレットの手を握って感謝しそうになったが、レイがジト目でこちらを見ているのでやめた。

 

「まぁ、今回は生徒会の立場があるからあまりカズヤに協力しないでおくよ。それにたまにはノーヒントで成長してもらわないと。あとケブは明日から僕と特訓だ。君はこの試合に出られなくて二人と経験で差がつけられちゃうからね」

 

「レイ様と特訓? それはありがたいことだ。よろしくお願いします!」

 

 ケブは嬉しそうに頭を下げる。

 

「ず、ズルいですわ! レイ様と二人きりで特訓なんてそんなの…… ケブさん、メンバーを交代しましょう!」

 

「スカーレット……お前、自分がついさっき言ったこと覚えてるよね?」

 

「スカーレット、カズヤを任せられるのは君しかいないんだ。

 君は賢い子だから分かるよね?」

 

 レイが真剣な眼差しでスカーレットを見つめる。

 

「私しかいないなんて……分かりましたわ! カズヤのことは任せてください! 安心してケブさんことを絞ってくださいね」

 

「えぇ……絞るって……」

 

 ケブは困惑した表情でスカーレットの方をみる。

 

 

 突如、二年生を代表する選抜チームとして現役三年生と試合をすることになった。

 

 もう決まったことはもう仕方ない。

 今持てる能力を出してぶつかっていこう。

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