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英雄の箱庭〜君と共に生きるための物語〜  作者: 松野ユキ
第二章 五月 在りたい姿と輝く石
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十九 時の狭間

 翌日の昼、俺とレイとケブとスカーレットのいつもの面子で昼食をとっていると食堂の入口がザワザワとしていた。

 

 何事かと思ったらフレイアさんとマルスさんが食堂にやってきたのだ。

 

 いきなりの島の守護神の登場に食堂は混乱しかけたが、フレイアさんがその場を収めた。

 

 そして俺たちの方に近づいてきた。

 

「お食事中のところお騒がせして大変申し訳ございませんでした。実はマルスがどうしても学生食堂で食事をしたいと申しておりまして……」

 

 フレイアさんはとても申し訳なさそうに話す。

 

「食事もそうだけど、可愛い妹の友人にご挨拶もしたくてね。カズヤくんとケブくんとスカーレットさん、いつも妹の無茶に付き合ってくれてありがとう。相席いいかな?」

 

「はぁ……どうも……」

 

 突然のことにどう返事を返せばいいのか困る。

 

「は、は、初めまして……ケ、ケブ・テラースと申します。マルス様のことはずっと尊敬しており、いつかあなたのような英雄になりたいと考えております!」

 

 凄い緊張感してるな。

 

 一方スカーレットは……

 

「は、は、初めまして……スカーレット・ブーゲンビリアと申します。こちらこそレイ様をいつもすうは、失礼しました……レイ様には大変お世話になっております。今後ともレイ様のお側にいられるように頑張りますのでよろしくお願いいたします」

 

 こっちは別の意味で緊張しているな……

 

 マルスさんとフレイアさんが席に着くとレイが口を開く。

 

「それで? 二人とも何を頼むの? 僕が注文するよ」

 

「おすすめは何かな?」

 

 この流れは……

 

「兄さんなら、日替わり定食でしょ。母さんは?」

 

 あれ? 超大盛りメガフライ定食はどうしたんだよ!

 

「私は紅茶でいいわ」

 

「日替わり定食と紅茶っと……、それで本当の要件は何?

 わざわざこんな目立つことをして兄さんらしくないな」

 

「素直にお前の友人に挨拶をしたかったんだよ。それと学生がどんな物を食べているか気になったんだ。お前は食事は人生においてとても大切だといつも言ってるだろ?」

 

 見た感じは普通の優しそうなお兄さんだな。

 でも大戦中から島を守ってたということはレイとはかなり年が離れているはずだけど、二十代にしか見えない……

 

「ところでカズヤくん、君は僕に用事があるようだね? 今日は予定を空けたから放課後に会わないかい?」

 

「本当ですか!」

 

「ただし条件をつけさせてもらう。レイとケブくんとスカーレットさんも一緒だ」

 

 それだと英雄についてつっこんだ話ができないじゃないか……

 

 フレイアさんの方をみると申し訳なさそうな顔をしている。

 

 ケブはガタガタと震えだした。

 

「プライベートでマルス様にお誘いいただけるなんてなんという光栄……喜んでお受けいたします」

 

 スカーレットもガタガタと震えている。

 

「レイ様のお兄様が私をお誘いに? つまり私こそレイ様に相応しいということですか? もちろんお受けいたしますわ」

 

 願望が口から出ているぞ。

 

「それで? カズヤくんとレイは?」

 

「こんな機会は滅多にないのでよろしくお願いします」

 

「カズヤが行くなら僕も行くよ」

 

「じゃあ、放課後に理事長室で」

 

 理事長室かぁ……初めて行くんだよな。

 

 ピー、ピー!

 

 レイの腕のデバイスが鳴った。

 

「兄さんが動くと面倒なことになるから僕が取りに行ってくるね」

 

「あっ、レイ様! 私が取りにいってまいりますわ!」

 

 こうして、騒がしい昼ご飯は終わった。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 授業が終わるとケブとスカーレットに急かされて、四人で理事長室に向かった。

 

「失礼します!」

 

「どうぞ」

 

 扉を開けると机には山のような書類があった。

 

 壁の方をみると様々な本で埋め尽くされていて理事長と学園長を兼任している過酷さを物語る。

 

「書類だけでも片付けようと思ったのですが、最近は思ったより多くて間に合いませんでした。申し訳ありません」

 

「雑多なことなんて僕ら生徒会に任せればいいんだよ。特に副会長なんて事務仕事を全くやらないし」

 

「学園長の仕事を生徒に任せることはできないわ。それにあの人が動いているから会長がここで落ち着いて仕事ができているじゃない」

 

 そんなやりとりをしているとソファに座っていたマルスさんが話しかけてきた。

 

「四人とも来てくれたようだね。それじゃあ、あの場所に案内するか」

 

「兄さん! あそこは普通の生徒が入っていいところではないだろ!」

 

「理事長である母さんの許可を得ているんだ。それに会長と副会長の許可もね」

 

「何を企んでいるのか知らないけど、この二人にはちゃんとあそこの存在を口外しないようにしておいてよね」

 

 レイは不満そうに言う。

 

「レイ様! 私ならどのような拷問を受けようが口外いたしませんわ! だからご安心を」

 

「マルス様が俺を信じて秘密の場所に案内してくれるのだからそれを裏切るようなことは絶対にしません」

 

 俺はいいのかよ?

 レイの方を見る。

 

「君にそれを言う必要はあるかい?」

 

 まぁ俺は普通の生徒でもないし、口外しても面倒なことになるだけだからな……

 

 フレイアさんが、本棚にある赤色の本を取り出す。

 

 その本に魔力を込めると、光だし、部屋に扉が現れる。

 

「この扉は『時の狭間』という場所につながっています。この本に登録されたものが魔力を込めると入口が現れる仕組みになっています」

 

「それじゃあ、四人とも行くよ」

 

 マルスさんに促されて、僕らは『時の狭間』に入った。

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