十三 永遠の生徒会
目を覚ますとベッドの上にいた。
「ここは?」
「医務室だよ。今は僕と君しかいない」
「あれは夢だったのか?」
「いいや? 現実だよ。君の目論み通り、白のリングは覚醒した。ただし、覚醒したのは『サブリング』の方だけどね」
「サブリング………」
左手を見ても白いリング模様しかない。
「確か、小指に赤色のリング模様ができてたような」
「あくまでサブ能力だからね。使用後は残らないよ」
「それで? 何か『見えた』かい?」
「いや何も……」
「やっぱり第二階層にいかないと駄目だね。まぁこれで炎魔法は前よりは自由に使えるようになるはずだ。でもペアリングをつけてるときは安易に白のリングを使用したら駄目だよ? 魔力が枯渇はしなくても意識を保てなくなる」
「とりあえずペアリングに頼らない自前の魔法を手入れたってわけか」
「普通はこんな無茶な方法で習得しないんだからね……」
「こうでもしないとお前に追いつけないだろ……」
「まったく……とりあえず二人を待たせてるから入れるよ?」
「二人?」
扉が開くとケブとスカーレットが入ってくる。
「カズヤ! 無事でよかった!」
「少し疲れただけだよ」
スカーレットが何かいいたそうにしている。
「その……悪かったですわね……」
「俺はいいよ。それより約束を守ってくれよ」
「ケブさん……あなたのことを侮辱してごめんなさい」
スカーレットが深々と頭を下げる。
「オレはもう気にしてねぇよ。英雄になるならそれ相応の振いをしないといけないからな!」
あっ……
「ケブ。お前、妹がいるんだろ?」
「なんで知ってるんだ?」
「昨日、偶然あった。立派な立ち振る舞いで俺の友人を助けてくれたよ。ありがとうな」
「よくわからんがどういたしましてだ」
「妹の名前は?」
「ヌト・テラースだ」
「じゃあヌトちゃんに『うちのアイビーは君のおかげで真面目に働いてるよ』と伝えておいてくれ」
「わかった」
ケブは親指を立ててニッコリと笑う。
「あと、スカーレット……」
「なんですの?」
「よかったら今度炎魔法について教えてくれないか? あれは偶然出たものだし、まだまだお前には勝てないよ」
コホン。
レイがわざとらしく咳をする。
「ここにナンバーワンの炎使いがいるんですけど……」
「でもお前はなんか仕事があって忙しいんだろ?」
「そうですわ! レイ様は現役学生で唯一の『永遠の生徒会』のメンバーなんですから」
「永遠の生徒会……?」
「おい、カズヤ! お前レイ様と一緒に住んでるのに知らないのか?」
「いやその……」
返事に困っているとレイが口を開いた。
「生徒会のことは君が気を使うから敢えて黙ってたんだけど、もう説明しないといけないね」
「生徒会が凄いのは分かるけど永遠ってなんだよ」
「永遠の生徒会メンバーは会長、副会長、会計、書記の四人で構成される。なぜ永遠と言われるかは、生徒会メンバーであるかぎりずっとこの学園に残れて歳を取らないからだ。もちろん単位を全て取得していれば授業に出なくてもいい」
「そんなずっと留年してて何のメリットが?」
「不老というメリットもあるけど、学園から報酬も支払われるし、戦って負けるか、理事長から解任されなければ辞めなくてもいい。そして学園を越えたところにも影響力を持つ」
「選挙で選ばないと独裁になるだけじゃねぇか!」
「そうだね。でも弱いやつはこの学校の秩序を守れないんだよ。ちなみに会長以外は何回か勝負で負けて辞めさせられている」
「ちょっと待てよ! 会長以外はって……」
「そう……彼はこの学園の設立時の会長で一度も負けてはいない。そして生徒たちだけではなく島のあらゆる権力者たちからも絶大な信頼を得ている」
「その会長はお前より強いのか?」
「今はね……」
この学園にレイより強いやつがいるなんて……
「で、でもレイ様だって入学してすぐに書記になられましたしいつかは生徒会長にだって……」
スカーレットがフォローをする。
「いつか? 秋には彼に勝てるようにするよ。もちろんカズヤもそうなってもらう」
「は?」
「当たり前だろ? これくらい目指してもらわないと僕とは釣り合わないよ?」
「そうですわ! 副会長くらいにならないとレイ様のお側にいるには相応しくないです! これからはビシビシ鍛えて差し上げます!」
「カズヤのハードルがどんどん上がってるけど、俺もサポートするよ」
「うぅ……頑張るよ……」
勝手にハードルを上げられてるけど『極限の殺し合い』をするにはこれくらいは乗り越えていかないと駄目なんだろう。
新しい力、新しい仲間、新しい目標ができて、いよいよ学園生活は本当のスタートを迎えた。




