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異世界へ  作者: 馬子友也
第3章 緑の大地に生きるもの
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「ほう、つまり遠くからでも敵を眠らすことのできる麻酔銃というものがあり、この子しか使うことが出来ない代物な訳か」

「ああ、そうだな」


 ギリーに向かって確認がなされ、それに同意する。厳密にいえば使えなくはないが、正確に狙うことは出来ない。実物をもって説明するような場面がなかったため、ギリーもレストリーもスコープから見える数値の意味が読めないままだ。


「分かった。君達が持ってきた荷物は保管庫においてあるから、後で君らに戻そう」


 銃の入った鞄だけでなく、ここに来ていた時に共にあったという三人分のリュックも返してもらえることとなった。エリゼオから言ってもらえれば、疑いなく取得することが出来るだろう。ここで生活していくうえで必須という品があるわけではないが、やはり自身らの荷物は手元にあったほうが安心する。


「だが、その前にここの案内だな」


 話しているうちに生活区間から出てきていたようだ。これまでの住居植物の育つ生活感の漂う森とは違い、自然の木や葉が生い茂っているごく自然な森。


「それと、あんたらにこれを渡しておこう」


 エリゼオが周囲に生えている蔦を、腰に携えた葉のナイフで切って三人に渡す。


「硬蔦、といってな。樹上へ移ったりするときに使うもんだ。慣れればこの森をすばやく移動できて便利だぞ」

「樹上へ?」

「ああ。やってみた方が早いか。行くぞ」


 そう言いながらエリゼオは腰に携えている蔦を近くにあった木の高い部分にある枝へと伸ばす。たちまち枝に絡みつき、エリゼオの握っている部分から枝へとピンと伸びる。


「で、こうだ」


 軽い口調で言いながら、蔦を手繰り寄せながら木の幹を駆け上がる。あっという間にエリゼオは樹上へと昇り、太い枝の上に立っている。


「なっ…!」


 全員、絶句している。口調の軽さとやっていることの落差がすごい。


「曲芸か何かだろ、これ」


 レストリーが呟いている、同感だ。


「まさか、これをオレ等にやれと…?」

「ああ。バームルに挑むのなら、これぐらいの身のこなしは出来てほしいな。万が一これからであったときのことも考えるとな…人間には厳しいものなのか?」


 口ぶりからすると、エルフは皆出来て当然の芸当らしい。


「どうだろうな。やってみなくちゃ分からない」


 レストリーは意気揚々と木の根元へ歩いていく。早くやってみたくて仕方がないという思考が顔に漏れている。


「な、なあ。これって失敗したら大変なことにならないか?」

「大丈夫だ。失敗してもここらは植物が生い茂っているからクッションになる。地面もやわらかいし、落ちた時の衝撃はそう気にしなくていい」

「そうか…」


 そうはいってもエリゼオのいる場所や周囲の木の枝の高さは短い場所でも3メートルはある。すぐにやれと言われてもできるものではない。ここにいる一人を除いて。


「よし」


 意を決したようにレストリーは上方にある枝に向かって蔦を伸ばす。ひょいと放り投げると、たちまち蔦が枝に絡みつく。蔦の先端が枝を一周、二周と回ってしっかりと巻き付いたことを確認したのち、レストリーは自身の手元にある蔦を巻き取りながら強度を確認する。


「すごいな、これ。全く切れる気配がない」


 そう言ったのち、蔦を巻き付けた木に向かって走り、幹に足をかけてゆっくりと昇っていく。少年の体は垂直になり、手の力だけで体を支えている状態になる。

 慣れてきたのか、足取りが次第に早くなっていき、すいすいと上へ上へ昇っていく。気づけばあっという間にエリゼオと同じ高さにまでたどり着いていた。


「おっ、何とかなったな」

「ええ…すごいのはキミだよ」


 たどたどしいながらも、見よう見まねで一発で成功させたレストリーを見ながら、ルーチャが呟いた。


「全くその通りだな」


 ギリーもルーチャに同意する。全く切れる気配を見せない蔦もすごいが、あれをやり遂げられるのは才能だろう。


「次はキミの番だ。ほら」

「いや~木に近いのはルーチャだから…」

「つべこべ言わない!ほら、行った行った!」


 無理矢理に木の近くまで押していかされる。木の前に立ったギリーを皆が見ている。


「やってみるしかないか」


 やってみれば案外簡単なものなのかもしれない。ましてギリーの体は今、エルフのものとなっている。エルフが生まれつき上手くいくのなら、オレだって…


「フン」


 力を込めて蔦の先端を木の枝に向かって放り投げる。が、蔦はあらぬ方向へ。


「もう一回だ!」


 蔦を放るも、枝に弾かれ、ギリーの手元に帰って来る。


「ギリー…」

「そりゃあ一度もやったことないんだから、最初はこんなもんだろ。一発で全部決めたレストリーの方が異例だろ。ルーチャもやってみれば分かる」

「そうかな」


 ルーチャもギリーに促され、木の根元に立つ。


「それっ」


 少女の投げた蔦は枝に引っかかるも、勢いが足りずに先端が垂れ下がる。もう一度ツタを手元に戻した後、同様にして蔦の先端を放る。


「えいっ!」


 今度は一回転して巻き付いたが、軽く引っ張ると枝から外れ、手元に戻ってきた。


「ギリーの言うとおりだね。これ、見てるよりか何倍も難しいや」


戻ってきた蔦を手で遊ばせながら、ルーチャは呟く。


「こりゃあ、ちょっと時間がかかりそうだな」


エリゼオが頭を掻きながら呟き、木の根元へと下りていったのだった。


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