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異世界へ  作者: 馬子友也
第3章 緑の大地に生きるもの
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翌朝

小鳥のさえずりに耳を傾けながら目を覚ますと、薄褐色の景色。目に映るは木目の模様。


「朝、か?」


 入口の方から光が差し込んでいるが、ベッドが部屋の奥にあるために部屋が薄暗い。隣のベッドを見ると、ルーチャはまだすやすやと眠っている。起こしてもいいが、あまりにも心地よさそうに眠っている様をみると気が引ける。レストリーは外の方にいるようだ。


「おはよう」

「ああ、おはよう。ここに来てみるか?風が心地いいぞ」

「へえ」


 レストリーの方へと歩いていき、外に出てみると確かに涼しい風が吹いている。これまでの世界とは違い、日が昇って朝になるという形ではないため、時間が分からない。見下ろしてみると人の行き交いがまばらだ。まだ朝早いのかもしれない。


「さて、どうすべきかな」

「ルーチャが起きるまで待っててもいいんじゃないか?」

「いや、すぐに起こしていくべきな気がするが…」

「俺は早く起きたからここで少し見てたが、今はちょうどみんなが起きる時間だと思うぞ。もう少し寝かしといてもいい気がするな」

「そうか、なら…」


 洗面台の方へと歩いていき、顔を洗って口をゆすぐ。ひんやりとした心地の良い水温。目を覚ました後、机の元に座ってぼーっとしていた。


 バーディ達の世界ではルーチャの方が起きるのが早かった。今はその逆でルーチャが熟睡している理由は分からないでもない。砂漠での長旅の疲れが出ているのだろう。もともとあの環境で過ごしていたレストリーや奴隷生活を送っていたギリーはともかくとして、こうして熟睡するほうが自然なのかもしれない。はたまたはルーチャ自身の慣れなのかもしれないが。


 しばしの時間を各々過ごした後、ルーチャが目覚める。


「二人とも起きてたの?!起こしてくれればよかったのに」

「あそこまでぐっすり眠ってると起こしづらいんだよな…」

「嘘!もしかしていびきとか掻いてた?」

「いや、それはなかったぞ」

「それ『は』?もしかして歯ぎしりとか…」

「大丈夫だって!」


 寝起きからなかなか元気だ。どうやらちゃんと眠れていたようで。




 軽く支度をして外へと出ていく。三人は作戦会議場となっている木へと向かう。


「バームルが夜に動かないってのはありがたいな」

「確か、光合成が出来ないから、だったか?だから狙うんなら夜だろうな」


 もしバームルが夜もうろついていたのであれば地響きで眠れなかっただろう。動物は夜行性で夜に動いたりするものがいるが、バームルはあくまでも植物。その点は助かった。


「そういえば荷物とか、ちゃんと返してもらえるのかな」


 昨夜は何も持たぬままに解放されたが、荷物が返されていない。砂漠を歩いてきたリュックとルーチャの銃の入った鞄。


「転移時にこっち側に送られてたなら、多分返してもらえると思うんだがな」


 現状こちらに持ってこれたことが確認されているのはルーチャの鞄のみだ。レストリーがこちらに来れていたのなら、リュックもこちらに来ていると考えてもいいだろう。


「昨日何で返してくれなかったんだろ」

「確かにな。ルーチャの鞄はともかく、俺たちのリュックには危険なものは入ってないし渡してもいいと思うんだが」

「まだ確認出来てなかったんじゃないのか?」

「かなあ。だといいんだけど」


 とにかく会って聞いてみるのが一番だろう。そうして話していると会議場の木へと辿り着く。昨日会った族長のいる木のすぐ隣。人が数十人ほどは入りそうな切り株に洞穴を開けた場所だ。備え付けられた扉を開くと、大きな円状の机を囲うような形で椅子が並べられている。族長をはじめ、男女構わず様々な顔が見られる。昨日会ったアルフィオもいる。皆が席についている中、いくつかの席は空席。遅刻というわけではないようだ。


 入り口にいた穏やかそうな雰囲気を放つエルフの青年に案内され、三人は席につく。


「皆が揃うまで、もうしばらくお待ちください」


 指示に従って、三人は他のエルフたちが来るのを待った。




「さて、では始めようか」


皆が集まり、族長であるフランカが口を開いた。それに続いて、エルフの男がギリー達の方を見ながら言う。食堂で並んでいた際、すこし話していたおっさんだ。


「バームル征討作戦に参加してくれることとなった三人のため、改めて作戦の確認をしよう。異世界から来た君たちの意見も聞いてみたいところだ。もし何か思うところがあったら気にせず言ってみてくれ」


 作戦に参加するものとしてだけでなく、第三者からの意見を聞きたいという意趣もあるらしい。三人は男に向かって頷く。

 エルフたちはギリー達が来る前から作戦は立てていた。これは事前にアルフィオから聞いていたことだ。

 エルフたちもバームルに襲われる中、ただ怯えていたわけではない。いかにしてこの状況を打破できるかを模索していた。まずは自身らの村での安全を確保したのち、打開する方法を考え、実行に移す。ギリー達がやってきたタイミングは作戦を実行に移す手前。ギリー達が参加の意向を示し、人手が増え、作戦に動かすコマが増えたために作戦の幅を広げられる可能性もある。


「バームルを倒す場所として適当なのは、ここだろう」


 エルフの男は壁に貼り付けられた大きな地図の一部を木の棒で差す。見たところ、ここから北東の方角にある開けた場所のようだ。


「ここは開けているため、視界が良好だ。奴を一斉に叩くのに向いている。バームルをここにおびき寄せ、奴が回復できないまで叩きつくす。それが現状の策だ」


 瞬間的に多くの傷を負わせ、バームルを倒すということらしい。なかなかの荒っぽい作戦だ。ギリーが手を挙げて質問の許可を取る。


「どうぞ」

「火矢を放って燃やすっていうのはどうなんですか?」


バームルも怪物とは言えども植物。一度火がついてさえしまえばそのまま燃え尽きたりはしないのだろうか。


「出来なくはないが、なるべく避けたい選択肢だ。土中に逃げられるかもしれないというのと、暴れられた場合にここら一帯が大火事になって被害が甚大になる可能性が考えられる。異世界から来たという君達の思う作戦も我々も」

「確かにそうですね、軽率な発言、失礼しました」

「いや、どんどん言ってくれて構わない。他二人も何か案が浮かんだりしたらまた言ってくれ」


 彼らも考え抜いたうえでこの作戦を立てたことが分かる。環境や現状については彼らの方が詳しいのは当然で、ここは彼らに従うのがベストだろうと考え、三人は作戦会議に耳を傾ける。会議は続いていく。


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