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異世界へ  作者: 馬子友也
第3章 緑の大地に生きるもの
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センス

一行は服屋で様々な衣服を見ていた。ドレスやシャツといった日常生活で着ることがある服が並べられている。赤や黄色を全面に出した派手なタイプのものから藍色やウグイス色といった落ち着いたものまでさまざまな色彩に染められた衣服が並んでいる。緑を基調としたものが多いように感じるのはそうした染料が多いからなのか、はたまたは緑の好きなエルフが多いのだろうか。


「試着されてみますか?」

「いいの?ボク達、ここで交換できるようなものは持ってないから買えないんだけど…」

「ええ。大丈夫ですよ。もしいいのがあれば持って行っても大丈夫です。今すぐに対価を出せってわけでもありませんし」

「やったあ!それじゃあ…」


 そう言いながらルーチャが奥の試着室へと入っていく。ここでは人数が少ない故か、そうしたツケ払いのようなシステムでも回るらしい。店員の女性もルーチャの方へと向かって言った。

この店においての唯一の店員が去っていったため、男二人が衣装室に残される。ギリーがレストリーの方を見ると、欲しいといった様子を見せず、ただじっと生地を見つめている。


「レストリーは着てみたりしなくていいのか?」

「ああ。見ているのが楽しいからな」

「へえ、欲しいとかは思ったりしないのか?」

「そりゃあただでもらえるんなら欲しいけど、現状なにかと交換してまで欲しいってことはないな」


 ルーチャに比べて、服に対する欲求は低いようだ。ギリーにとってもレストリーの考えとあまり相違はない。砂漠を旅する際に多くの衣服を持って行っていたため、不足しているわけではない。もしかしたら自身らの持っている衣服と交換してもらうこともできたりするのだろうか。


「確かに世界ごとに服は異なったりするが…そんなに面白いものなのか」

「勿論。あっちの世界じゃ見られなかった生地や染料が目の前にあると思うと、ずっと見てられるな」

「そうか。…ただその、女性用の服をそうまじまじと見てたら、勘違いされるぞ?」


 はっとしたように辺りを見渡すレストリー。試着室から出たばかりのエルフの女性がこちらを見ていた。タイミング悪く、手元には女性用の水着を持っている。


「い、いや。これはあくまで素材に興味があるからであって決してこういうのを着たいとかそういうわけじゃない。だから…」

「そうでしたか。たまにそういうのを欲しがる男性もいらっしゃいますので」


 二人は顔を見合わせ、首をかしげる。エルフの文化の一つなのだろうか。そんなことを考えていると、ルーチャが新たな衣装を着て出てくる。


「ねえねえ、これどうかな?」


 声の方に顔を向けると、少女が着ているのは…虹色のドレス。どこからとってきたのだろうか、なかなかに攻めたデザインのものだ。数分見ていると目が疲れてきそうなほどにドレスの主張が強い。なぜこれを置いているのか、どこでそんなものを見つけたのか、どうしてそれを選んだのか…聞きたいことが頭に押し寄せてくるがともかく。


「それはあんまり勧められないな…」

「ああ、もっと他のはどうなんだ?」

「うーん、そっか。着替えてくる~」


 ギリー、レストリーともに却下。それを聞いたルーチャは再び試着室へ戻っていく。これまでの冒険で世界が変わるたびに服を変えてきた。だがよく考えてみると、これまでルーチャ自身が選んでとったという事例がない。ギリーの島にいた時は島民全員対してデザインの変わらないボロ着を着ておりそれを身に着けていた。魔女の世界ではマドリーが見繕ったもの。レストリーの世界にいた時もある程度決まった服装でかつ、レストリーが機能性で選んでいた。

 すなわち彼女のファッションセンスがいかなるものか、未知数だった。さっき見えたものが「本物」である場合…


「これはどう?」


 虎柄。

 致命的にダサい。世界ごとによる感覚違いなのだろうか?と疑ってギリーは周囲にいる二人の顔を見てみるが、店員女性も困り顔、レストリーはあんぐりと口を開けて呆然と立ち尽くしている。感覚は間違っていないようだ。


「よし、分かった。ルーチャの服はオレが選ぼう」

「ね、ねえ。感想!感想は?」

「ああ、頼む」


 ギリーがハンガーラックから服を取ってルーチャに渡す。ギリーは笑顔でルーチャに選んだものを渡し、それを受け取ったルーチャは頬を膨らませ、恨めしそうにこちらを見たのち試着室に入っていった。


「なかなかにいいセンスをしてたな」

「というかあれって作ってるからここにあるわけだよな。虹とか虎柄とか…」


 店員を探してみるが、ルーチャについて行って今はいない。果たして趣味で作ったものなのか、それを買うものがいるから置いているのだろうか。


「どう?」


 出てきたルーチャを見て、一同おおっと声を上げる。若草色のドレスは彼女にとてもよく似合っていた。店員の勧めもあり、彼女はドレスを購入したのであった。

 満足して服の店を出ていき、本屋へと訪れる。こちらも服屋と外装は変わらない。いずれも緊急時に備えてか、外に出るための非常扉やシャッターが掛けられるようになっており、バームルの対策がなされている。


「おお!すごいな」


 内は広くはないが、狭い通路の両脇に本がぎっしりと詰まっており、奥には白ひげを蓄えた老人が本を開いて座っている。


「…」


 老人は静かに本へと目を向けたまま、ただじっと座っていた。


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