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異世界へ  作者: 馬子友也
第3章 緑の大地に生きるもの
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時間の計り方

「ねえ、その祭りってバームルを倒せば行われるんだよね?」


 レストリーの話から、ルーチャが祭りの開催についての話に移す。


「ああ、もちろん。祭りが開催出来るようになったのならば、君らも参加していってほしいところだな」

「やった!なら頑張って早く倒さないとだね」

「確かにすぐにでも倒せるのなら、ありがたいことこの上ないのだが…」


 倒そうと思ってすぐにでも倒せるのなら、こんなことにはなっていないというのもまた現実。


「現状、そうした算段や作戦ってどうなってるんだ?というより、そもそも住処を変えるとか…」


 ギリーの話にアルフィオが答える。


「我々はここにある特殊な植物と過ごすことによって、こうした生活を送れているんだ。だから、この場所を捨てるというのに抵抗がある」

「特殊?」

「ああ、木の形状が家具の形をする、というものだね。今君たちの部屋となったあの場所の設備は、その一例だな」

「あれってこの世界での一般的な植物じゃないのか?」

「いや、ここでしか見られない。我々エルフが長らくこの地で生活しているうえでああ変化していったそうだが、具体的な原因というのは明らかになっていないんだ。一説にはエルフが植物の世話をするうちに、エルフたちを住み着かせて自身の世話をさせようとこうなっていったという『共生説』とかがあるな」


 となると、最初にいたあの部屋は変化した後の木、食堂にあった人工のテーブルの置かれているあの木は変化する前の木ということになるのだろうか。


「なら、どこかに移り住んで世話をしていれば、また同じように変化するんじゃないのか?」

「だったらいいのだが、残念ながらそう言った現象はほかの地では見られていない。もしそうなら、エルピアンタはもっと大きな場所になっていて、もっと大多数のエルフがいたかもしれないな」


 アルフィオのつぶやきのような一言を聞いて、ギリーの頭にそういえば、と質問が浮かぶ。


「そもそもの話、エルピアンタってどれくらいの大きさの場所なんだ?」


 「エルピアンタ」という地名を聞いてはいるものの、それがどこまでなのかというのは明確には分かっていない。国を知らないために村程度の小さな場所なのかと思っていたが、歩いているとそれほど小さくもないように感じる。

 ここにしか住まうのに便利な植物はいないということだが、現状その便利な植物しか見えておらず、ここの世界にはそう言った「住居植物」みたいなものが存在することが当然なのか、と思っていたところにこの情報だ。すなわちある程度歩いていくと普通の植物が存在しているということ。そしてなぜ他の集落のような場所が見つかっていないのかも謎だ。


「そうだな…端から端まで歩いてみるか?そう時間はかからないぞ」

「おお、やってみよう」



 そうして店ごとの案内をいったん止め、エルピアンタの端から端まで歩いてみることとなった。とはいっても区画整理された土地とは違い、外形が整っていないため、徒歩の時間から導き出すという大体での計測。

ざっくりと測った結果、端から端まで歩いて15分程度という結果になった。


「そこまで広くはないのかな」

「我々はここ以外にそう言った多くのエルフが住まうような場所を知らないからな…何とも言えないな」


 他との比較というのは存外に大事なのかもしれない。ギリーもルーチャやレストリーと一緒にいる中で住まう集合の規模というものを実感していたりしたが、元いた島では環境は全く違えど、今のエルフたちの感覚とそう変わらない。村、町、国と規模が大きくなっていくということもあそこにいたままでは気づくことすらなかっただろう。

 そんなことを考えていると、ルーチャがふと質問を投げかけた。


「そういえばこの世界って、時間はどうやって計ってるの?」

「ああ、空からの光で判断しているんだ。ちょうどいいのがあるな。ここを登ってみると良い」


 アルフィオに促されるままに近くにあった木の洞穴に入ると、らせん状に階段が連なっていた。食堂で見られた手で削りだしたような荒々しい造形とは異なり、木自体がもともとそういう造形になっているかのように完成された階段。

足元に気を付けながら、ゆっくりと上がっていく。想像していたよりも長く、三人はへとへとになりながらも木の頂上にたどり着く。ドアを開くと、小さなテラスのような場所に出た。


「わあ、すごい…」


 眼下に広がっているのは、さっきまでは見上げていた大森林。どこもかしこも緑で、この森がいかに広いものなのかがよくわかる。


「この木は『塔木』と言ってな。たまに景色を見にエルフが来たり、天気の予報をしたりするんだ」


空は青く、そんな青を覆うようにいくつかの大きな雲がかかっている。

生命にあふれる景色の中で、ひときわ目を引くものがあった。この塔木よりもはるかに太く、どうやって立っているのか不思議なほどに長く長く天まで伸びているいくつもの木。雲に覆われ、幹だけしか見ることが出来ない。


「『灯木』という木だ。あの木の葉が雲の裏に隠れているんだが、時間に応じて灯ったり消えたりする。我々はその光で時間を判断し、生活を送っているんだ」


この世界ではギリーの島やレストリーのいた場所のように天体で確認するのではなく、植物の活動に根差した生活を送っているようだ。そんな異世界の空を見ながら、三人はしばしの間、空を眺めていたのだった。



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