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異世界へ  作者: 馬子友也
第3章 緑の大地に生きるもの
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エルフの住まう森

しばしの時間を牢で過ごした後、伝令に行っていたエルフが帰ってきた。


「フランカ族長より『協力してもらえるのであればありがたい。釈放せよ』とのことです」


 この牢屋から出られるようだ。腰を上げる三人。牢の鍵が開けられ、そのままエルフの後をついてドアの前へ。開かれたその先にある景色はーー


広間を構成しているのが木の幹であることから予想してはいたが、ここは「樹上」だ。足元を見るとなかなかの高度。ルーチャやレストリーの言葉で言えば5メートルといったぐらいだろうか。辺りを見渡すと同じように樹上に大きな膨らみを持つ木が幾つも存在している。

木は、一様に同じ高さに膨らみを持っているわけではなく、ここ以上のものもあれば、地上すれすれのものまである。


 ドアの外は人が二人立つのがやっとなほどに小さなデッキがあり、周囲を木の柵で囲んでいる。そこに立って見下ろすと、改めて自分のいる場所の高さを思い知る。


「下りられるか?」

「あ、ああ」


 周囲の景色に圧倒されていたギリーは背後からの声ではっとする。何もかもが薄褐色の以前の世界とは違う、すべてを包み込むような深い緑の大地に圧倒されていた。気を取り直して下を見ると木製の梯子がかかっているのみ。ゆっくりと踏ざんの部分に手をかけ、下りていく。エルフたちは皆、周囲の木に自身の持っている蔦を引っ掛け、あっという間に飛び降りていく。まさか、エルフという種族はこれが皆出来るのか?


「これ、高所がダメな奴ってやばいんじゃないのか?」


レストリーが下りながら呟く。ギリーの後から降りているため、上から声がする。


「エルフってそういうのが大丈夫な種族だったりするんじゃないか?こう、生まれつきというか…」


ギリーが答えた。梯子の上と下での会話のため、少し声を張っている。周囲の木の部屋の中や地面でほかのエルフたちがこちらを見ながら話しているせいか、がやがやとしているためというのもある。

砂漠での静けさに慣れ切った三人にとっては、このざわめきを感じられるのがうれしいように感じる。


無事に地面に降り立ち、黒みがかった土を踏みしめる。靴の中に入っていた砂を落としてみる。


「しかし…最高だな。緑あふれる大地ってのは。なんかこう、無条件に落ち着くというか、ここに生まれて育ってきたんじゃないかっていう安心感というか…」


 レストリーは生まれて初めて見た大自然というものに感動している。彼のこれまでに見てきた緑は川の岩についていた小さな水草と洞窟で見つけた一本樹とその寄生植物のみ。人生で初めてこれほど多くの大自然に囲まれるのは彼にとってはどれほどのものなのだろうか。

想像してみるが、元々このような自然で育ってきたギリーにとってはあまり想像がつかない。が、これほどまでに大きな木は見たことがない。それも一本ではなく、何本も何本も生えているのだ。自然と慣れ親しんできたギリーでさえ、これらの巨木には圧倒される。

幾つかの木の肌は苔むしており、年季を感じさせる。これほどまでに育つのにはいったいどれほどの時間がかかったのだろうか。久々に目にした緑はこれほどまでに美しく見えるものなのか。


「こっちだ」


先導するエルフの男についていきながらも辺りを見渡すと、あちこちの木から梯子が下りている。いずれも木のふくらみに通じており、エルフたちはあそこで生活しているのだろうと推測する。

この世界には巨木だけでなく、シダの類の形をした植物や小さな樹木が所狭しと生い茂っており、砂漠と違って土が顔を出すほどの余白が存在しない。


「ここってどんなところなんですか?」


ルーチャが尋ねる。


「エルピアンタ、我らエルフの住まう森だ」

「へえ。エルピアンタか、素敵な名前ですね」

「…そんなにかしこまらなくても大丈夫だ。貴殿らは一体どこから?」


 その質問を受けて、ギリーとルーチャが瞬間答えに詰まる。そんな二人を他所にレストリーが答えた。


「トルスパイツという村だ。聞いたことはないか?」


 かしこまらなくていいと言われ、いち早く切り替えたレストリーの問いにエルフの男は首を振る。


「そんな名称は聞いたことがないな。そもそも異世界では地域ごとにそうした名前の呼び方を分けていたりするのか?」

「そうだな。国だったり、村だったり、一概に地名と言っても行政云々で規模が異なったりするから、○○村とか○○町とかつけないと名前だけ聞いても分からなかったりするが…」

「ふむ…なかなかに興味深いな。我々はこのエルピアンタ以外にはそうした地名は知らないからな」


 するとこの世界では人間はいないのだろうか。そんなことを考えるギリーと同じ思考に至ったのか…


「この世界には『人間』はいるのか?」


 レストリーが尋ねる。少なくともここに住んでいる人型の存在に、人間と同じとがってない耳を持った者は見られない。


「ニンゲン?知らないな。貴殿らはそういう種族なのか」


 不思議そうに答えたエルフの男の回答に一同は驚愕する。この世界は、あの鳥籠のように人類のいない世界なのだろうか。


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