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異世界へ  作者: 馬子友也
第3章 緑の大地に生きるもの
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伝承の産物

エルフの男は説明を始めた。


「我々はその変異種のことを『バームル』と呼んでいる。近づく生物に襲い掛かり、自身の栄養として喰らう。傷を負わせても周囲の土壌から養分を吸い上げて、とてつもない速度で回復する怪物だ。我々もほとほと奴に困らされている」


 怪物。今度はこっちが伝承の産物を目の当たりにする番なのだろう。これまで異世界を旅してきて、そのようなものは見たことがなかった。だが、この世界にはそれがいる。三人は気を引き締める。

 

 そんな三人に突然エルフの男は頭を下げる。


「このような扱いをして済まないと思っている。あれが現れる前だったらもっとまともな歓迎が出来ていたはずだ。だが今、ここでは民の不安が蔓延している。突如現れた怪物に打てる手立ても見つからず、そんな中、君たちが現れた。凶兆の訪れなのではないかと怯えるものも多かったのだ。そのために…」

「こうして監禁するという形を取ったというわけか」


 なんともタイミングの悪い…

この世界の状況としては、突然怪物が存在し、ここにいる民はそれに怯えている。非常に分かりやすい構図だ。自身らの旅において「異世界で問題が起こっていたら出来る限りで解決する」と決めた。怪物が問題の軸であり、あとはそれをどう片付けるかについて考えればいいのではないだろうか。


「そのバームルって奴には挑んだりは?」

「している。だが、弓を放っても切り傷をつけてもすぐ再生する。再生には周囲の土壌や生物から養分を必要とするから傷をつけるほど狂暴化するし、植物たちが育たなくなっていったり野生動物たちが被害にあっている。幸い民たちに被害は出ていないが時間の問題だ」


 再生するためにそれが不可能なほど傷をつけなければならない。だがそうして傷を負わせれば負わせるほどにさらなる被害を生む。なかなかに厄介だ。


「ボク達も協力できないかな?」

「…そうだな」


 ルーチャとギリーが言葉少なに意思を交わす。それを聞いたレストリーも頷いた。思っていることは皆一緒のようだ。


「我々もあなた方に協力させてもらうことは出来ないだろうか」


 ギリーの申し出にエルフたちは話し合っている。こちらには聞こえないように話しているため、内容は聞こえない。どう反応が返って来るのかを待つのみだが、ともかくエルフたちが「異端者は排除」の種族では無くて助かった。

 最初、監禁されていることに気づいたときはどうなるかと思ったが、その状況からしてはいい方向に進んでいるのではないだろうか。


「拷問とかじゃなくてよかったよな」


 ぽつりとレストリーが呟く。全くだ。この旅は命あっての物種。死んでしまっては元も子もない。

 これまでは比較的穏やかな世界を渡って来ていたが、文化や考え方、そこに住まう生物というのはみな違う。今後異世界へと移る際にはこうしたリスクをカバーする方法を考えなければならないだろう。


 そんな考えを頭に巡らしていると、エルフの男がこちらに向かって口を開いた。


「少し待っていてくれ」


 一人が外へ出ていく。ここにいる三人では判断しかねるのだろうか。もう少し待つことになりそうなので、少し聞いてみる。


「この中をうろつくのは?」

「構わない。好きにしていてくれ」


 ちょっとした自由時間というわけだ。ギリーはここに来た時から気になっていたことを聞いた。


「私達はここに入れられる前、どこにいたんですか?」


 ここはドアから見えた景色から推測するにやや高いところにある樹上の場所。もし地面で寝ていたのならこの場所までわざわざ持ち上げられ、収容されたことになりそうだが…


「ああ、ここのすぐ下だ」

「てことは、ここまで持ち上げたと?」

「まあな」

「ど、どうやって?」

「これだよ」

 

そういいながら、エルフの男は腰に携えている蔦の鞭を指す。見た目に反してなかなかに丈夫なのだろうか。家具の形をした幹、部屋を形成するほどの大きさを形成する大きな木、人を支えられるレベルで丈夫な蔦とこの世界の植物は興味深いものが多い。


「この世界の植物って面白いな…」

「そうか?おれ達にとっては普通のものだからな~」


異世界ギャップというものだろうか。特にこの世界では不思議だと感じるものが多い。エルフの装備にしろ、周囲にある道具にしろ、これまで見てきた「人の用いている道具」の形を取った植物というものが多く見つかっている。あのドアの先にはどのような世界が広がっているのかという期待が胸の中に広まっていく。無事に出られればいいのだが。

それともう一つ、気になっていることを聞く。


「そういえば荷物って?」


こちらの持ち物は今ない。砂漠を歩くのに使っていたリュックも、ルーチャの銃の入ったかばんもだ。衣服はそのまま。砂漠を何日も歩いていたために砂にまみれている。身ぐるみがはがされていないだけマシかもしれない。

異世界に転移してきたときに無くしたのかどうかというのは大事だ。なぜか魔法を使うことが出来ない現状、こちらの持ちうる怪物を倒す手段として「狙撃銃」と「スタンガン」がカードとして存在するか否かがかかっている。


「ああ、預かっているぞ」


大丈夫そうだ。後はここを出られるかの答えを待つのみ。三人はゆっくりと伝令の帰りを待っているのだった。


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