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異世界へ  作者: 馬子友也
第2章 熱砂に浮かぶ孤島
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三人目

 ひとしきりの準備を終え、三人は一息つく。だが、これで終了というわけではない。


「これから外に出るんだよな」

「ああ、大丈夫か?」

「うん、行けるよ」


 外は随分と暗くなっている。明かりのない村であるがゆえに日が沈むと何も見えなくなってしまうといっても過言ではない。そのため、村人たちは日が沈み始めると全員家の中に帰っていく。全員が家の中に戻り、外がしんと静まりかえったころに三人は行動を始めた。


「一応聞いておくが、別れは良いんだな?」

「ああ」


 ギリーの質問にレストリーは迷うことなく答える。だが表情は村人たちに対する憎悪よりも、これからの旅に対する期待で満ちているように見える。


 各々リュックを持ち、ルーチャの武器の入った鞄はギリーが持っている。レストリーだけでなく、ギリーとルーチャもレストリーからもらった元貴族たちの服に身を包んでいる。

 ギリーは頭にターバンを巻き、金の刺繍の施された白のアンダーシャツに緑のオーバーコート、橙色のボトムを身に着けた。ルーチャは踝まである紫のフード付きローブを着ている。分厚い布の靴を履き、旅路へと備えている。

 

一行は静かに歩いていき、誰にも気づかれることなく橋を渡っていく。山道に足を踏み入れ、難なく村を囲う山から抜け出した。


辺りに誰もいないことを確認したレストリーが口を開く。


「よし、抜けられたな」


レストリーの声は喜びに満ちている。そんな喜ぶ少年にギリーは聞いた。


「こっちでよかったんだよな?」


村から少し離れ、次第に周囲の景色は一様になっていく。レストリーは空に見える星を見れば方角が分かると言っていたが、異世界から来た二人にとっては何も分からないまま進んでいるのと何ら変わりない。


「ああ、こっち側に行けばゼードの大森林へと辿り着くはずだ」


レストリーは自信に満ちた答えを返してくる。村にいた時から、もし出ることが出来たのなら、どこに行くのかというのは決めていたらしい。地図を見て、どの方角に行っても砂漠を抜けるのにかかる日数が一週間と数日を超えることから村から出るのは現実的ではないと悲観していた。人間が生命を維持するのに必要な水の量と、村から自身の持ち込むことのできる水の量がどうしても十分とは言えず、出ようにも出ることが出来なかった。

そんな中「水を生成出来る人間」と出会った。これによって水に対する問題が解消されたことで彼の脱出計画は思わぬ形で実行されることとなったのだ。


この世界において、ギリーが転生した姿は「人間」であり、レストリーや村の住民もまた「人間」だった。それゆえにレストリーの持っている人間についての知識というのは二人にとっても十分に役に立つ情報だった。何日間食料を取らずに、水を摂取せずに生きられるのかというのをレストリーは計算し、それを二人に話しながら計画の話をしていた。


レストリーと話している際、二人は「異世界に行くことになるかもしれない」と伝えたが、それは彼を止める理由にはならなかった。


この三人は現在、「トルゼーデの悪政」の範囲にはなかったゼードの大森林という地点を目指して歩いている。


 ある程度歩いたところで、休憩を取ろうということになりテントを設営する。一通りの設営が住んだところで、内臓を取り除いたレイントラウトを魔法の火を使って焼き、各々食べていく。持って数日分の貴重な食糧ということで、皆ちびちびと齧っていた。


「なあ、アンタらってどういう目的でここまで来たんだ?」


 一足先に食料を完食したレストリーが口を開いた。


「目的、かあ。そうだね…」


ルーチャが満天の星空を見上げながら、ぼんやりと呟く。

 正直に言えば、明確な目的をもってここまで来たというわけではない。命がついえたと思えば、なぜか生きており、しかしそこは自身の知らない異世界。そこで目の前にある問題を解決しようと挑み、成し遂げたと思えばまた異世界へ。なすが儘に行動をとってきた結果、ここにいるというのが現状だ。


「まさか、気づいたらここにいました…ってことか?」

「はは、そんなところだね」


 反論はしない。これを黙々と食事をとって聞いているギリーも同様であった。だが――


「今回ここにきて、思ったんだ。ボクたちはなぜこうして異世界へと飛んでしまうのかを突き止めたいってね」

「へえ、随分な目標だな。それが不思議な力でよく分かんないものだった、とかだったらどうするんだ?」


レストリーの問いにギリーが代わって答える。


「『起こりうる事象には必ず道理がある』だろ?レストリー。知りたいって思うのが人間の性だ。それがどんなにブッ飛んでる事象でもな」

「ははは、馬鹿げてるな」


 声をあげて笑った後、少年はギリーの方へ向いて言った。


「俺も仲間に入れてくれよ。面白そうだ」

「「もちろん」」


 断る理由などどこにもない。二人は笑顔で答えた。

こうして、レストリー・トルゼーデが仲間になった。


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