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異世界へ  作者: 馬子友也
第2章 熱砂に浮かぶ孤島
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眠って起きて

少年が帰ってくるまでに、そう時間はかからなかった。彼は6匹ほどの魚を器の中に入れて帰って来る。

厨房にいったと思えば、数分も経たずにルーチャの部屋にやってくる。

 彼の持ってきた大きな石皿には、きれいに飾り付けられた赤橙色の魚の切り身がのっている。これまでのこれはもしかして…


「「刺身か!」だ!」


 ギリーとルーチャは喜んで声を上げる。…もちろん小声で。


「へえ、異世界人のあんたらも知ってんのか」

「もちろん!」


 ルーチャが元気よく答える。二人ともがあると答えたということは、割と様々な世界で見られる食べ方なのかもしれない。


「一緒に持ってきたこの二本の棒は?」

「ああ。箸だ。これをこう持って」


ギリーの問いに少年が答える。聞いたギリーは島では基本手づかみ、以前の世界では刺すだけ、掬うだけのフォークやスプーンだったため、難なく順応出来ていたが、ここの食べ方は少し違うような気がしていた。

少年が2本の棒を右手で持つ。中指、薬指、を丸め、そうして作った指の土台の上に1本の棒を、中指を挟ませてもう1本の棒を重ねる。器用に指を動かし、カチカチとならせる。

 ギリーは受け取り、マネをしてつかんでみようとするが、なかなかおぼつかない。苦戦している青年を尻目に、ルーチャはしっかりと使いこなしている。彼女は使ったことがあるのだろう。


「くうう」


青年の頭の中で、空腹と意地がぶつかり合う。手づかみにシフトして喰らうか、あくまでもここのやり方に従って食べるのか。だが、そんな状況ではないということをすぐに察する。

ルーチャの手が早い。あっという間に4分の1を食べきっている。どうすべきかーーー


「いや、無理なら手づかみでもいいぞ」

「…大丈夫だ」


プライドを選ぶ。というよりも、ギリーの関心は「食べたい」から「使いこなしてみたい」へと移っていた。そうして苦戦しながらも切り身を1枚つまんで口の中へ放る。


美味い。舌に乗せた瞬間に溶けてしまうほどの脂、一度噛むたびにあふれ出す魚本来の持つ甘味と旨味。調味料いらずの素材の味の濃さ、ボリューム。ギリーはしばし、目を瞑って味の余韻に浸っていた。

そんな愉悦に浸る青年を尻目に、黙々と食べ続ける少女。


「…お?」


もう一枚と手を伸ばすも、皿にあった切り身は全て無くなっていた。


「あんた、よっぽど腹が減ってたんだな…」


すべてを平らげた人間を見ながら、ぽつりと少年が漏らしたのだった。


 


 そして翌日。目を開けると石の天井が見える。以前のベットから見える景色とはまた違う無機質さに、異世界に来たんだという実感を得ていると


「――――」


外で話し声が聞こえる。目をこすりながら、ギリーは耳からくる音に集中する。


「今日もお勉強かあ?レストリー君。立派だなア」

「うるさい」

「アんだよ。その態度はよお」


バチンと音がする。ただ事ではないと思い、ギリーは飛び起き、家の外へ出る。広間は入り口と直通なため、一瞬でたどり着く。

そこには、立ち尽くし俯いているレストリーと、見知らぬ子どもが3人いた。レストリーの頬ははたいた跡がくっきり見える。太り気味の男子がレストリーの正面に立っており、体格もあってリーダー格のように見える。その後ろに痩せ気味の男子となりの整った女子がおり、二人はおまけのような立ち位置。3人ともレストリーと歳の差はないように見えるが、レストリーだけ仲間外れにされているような形だ。

「おい、何やってるんだ!」

ギリーの声に気づいた子供たちはそそくさと遠ざかっていく。

「大丈夫か?」

レストリーは「俺にかまうな」と言っていたが、ここでも無関心を決め込むのは無理だ。そう思って一人になったレストリーに話しかけようとするが、レストリーもまた別の方向へ歩いて行ってしまった。


一人速足で歩いていく少年は昨日と同様、とがった石と本を持っている。だが、昨日見た時、棚にあったのは様々な用途に用いられる石器ばかりだった。あの本はいったいどこから持ち出したのだろうか?

 

 レストリーが歩いて行ったのは岩山だ。大きく回っていけば、昨日会ったところで合流できそうな方角。今すべきは合流だ。さっきのことについても話が聞きたい。ギリーは家の中に戻り、ルーチャを起こし、外に出る。


 昨夜は暗くて見えなかったが、村は四角い中庭を囲む大岩でできた集合住宅のような形で出来ており、外からでは家を形成している岩の窓が見えるが、どこの小部屋と小部屋がつながっているのかは判断がつかない。中央部には大きなため池があり、昨日の夜、少年が獲って来ていたものと同じ種類の魚が泳いでいる。

地面は茶色の土で、弾力性が全く感じられないほどに硬い。そして、この村に緑は一切見えなかった。周囲が水路に囲まれているという地形上、作物が育てられていてもおかしくはないのだが、異世界ゆえの違いだろうか。

 

 村から外れ、橋へと歩いていくと、水路を隔てて、ちょうど茶色の土地と岩地に分かれているのが分かる。水は澄んでおり、人三人分ほどの深さがあるのが分かる。

 

そうして二人は、レストリーと話した場所へ向かったのだった。


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