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異世界へ  作者: 馬子友也
第2章 熱砂に浮かぶ孤島
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レストリーの家

レストリーに指示されて二人は入り口で靴を脱ぐ。

家というより集合住宅のうちの一室という形ではあるが、部屋は大きく、かつ複数の部屋とつながっているため、レストリー一人のものというわけではなさそうだ。

家に入ると、まず手を広げた大人が3人ずつ入れそうなほどの広間がある。そこから双方に1つずつ部屋があり、一室は二人は住めそうな小部屋、もう一部屋は厨房のようだった。3人が寝ることのできそうなスペースは十分にある。

広間も小部屋も、家具に当たるのは座れる大きさの石、椅子代わりとなるものがいくつか存在しているくらいだ。テーブルがなく、かつ椅子である石が部屋の隅に置かれているせいか、以前訪れた屋敷の一部屋や魔女の一軒家に比べ、非常に広く感じる。タンスやクロゼットに当たるのは石壁をくりぬいて作ったくぼみが役割を果たしており、やや無骨な印象を抱く。


「ようこそ。今はこの家は俺一人のモンだから、気にせずくつろいでくれていい。寝床を用意するから待っててくれ」


今、ということは、元はほかの人間がいたのだろうか。レストリーについて気になる点は痣にしろ一人でいることにしろ、如何せん触れづらいところが多く、聞けずにいるものが多い。ルーチャは奥の小部屋、ギリーとレストリーは広間の方で寝ることとなった。


「なあ、レスト…」


呼びかけようとしたギリーが名前を言いきらぬうちに、レストリーはそれを遮った。


「シッ。ここはほかのやつらにも聞こえかねない。あまり深く詮索はするな。ともかく今日は休め」

「あ、ああ。分かった」


少年が二人分の布団を取り出し、埃をはたいて持ってきた。


「これで大丈夫か?」

「うん。ありがとう!」


ルーチャが答え、二人はその布団を受け取った。多少埃のにおいがするが、眠れなくなるほどのものではなさそうだ。

二人分の布団をすぐに取り出せたところを見ても、やはりこの家は彼だけのものではない、またはなかったと確証を得る。


だが、そうだとすると一体どういう理由でこうなっているのかが謎だ。この家は村一番ともいえるほど立派なものであるのに対し、そこに住まう少年に対する男の当たり方は敬っているという様子ではなかった。

突如現れた危険かもしれないオレ達を押し付けるように、この家に案内したことも含めて、だ。そして、さっきからレストリーがオレ達と面識がなかったようにふるまうことも。


痣や風当たりの強さから、この少年を何らかの理由で憎んだりして、蔑んでいるのであろうかと考える。だが、そんな人間をこんな立派な家に住まわせるのはなぜだ?

考え出すと次々と疑問が浮かんでくる。



絞った声でギリーは寝ようとしている少年に言った。


「レストリー、明日オレたちはあそこに行く。だからその時に、いろいろと教えてくれ」


少年は頷き、広間にいる二人はそのまま眠りにつこうとする。辺り一帯が闇に包まれ、静寂が訪れる。が。


ぐるるるる


腹の虫の鳴く音が聞こえる。方向からしてルーチャの方だ。確かに今日一日、水でやり過ごしてきたために空腹感があることは否定できない。

だが、寝ればいい。寝ることさえできれば、よく朝起きた時にはある程度マシになっていたりする。島暮らしで「定時にご飯を食べる」という習慣は持っていなかったことに加え、兵士たちに少ない食事で強制労働させられてきた過去を持つギリーにとって、空腹感を無視して寝ることはたやすいことだった。だが。


ぐるるるるる


ルーチャの腹の虫がおさまらない。明らかに自然ではない音を無視して寝るのは、また話が違う。それはレストリーも同様だった。


「…ちょっと待っててくれ。食糧を取ってくる」

「手伝おう。オレも行くぞ」

「いや、一人で済むからいい」

そういってギリーの提案を断り、レストリーは棚となっているくぼみから石の器を持って闇の中に消えていった。そのままでは眠れないため、一人広間に残された男はルーチャの部屋に行くのだった。


部屋に入ると、少女はなんとか寝ようと思い切り目を瞑っているところだった。寝ようとしているのは分かるが、ああなると余計眠れなくなるのは目に見えている。すこし話すかとギリーは少女の元へ歩いて行った。足音に気づき、少女が目を開ける。


「ぎ、ギリー。聞こえてた?」

「ああ。まあ仕方がないな。何も食べてこなかったわけだし」


青年は少女の枕元に座った。ギリーはふと、島の子供たちを寝かせてやっていたときの感覚を思い出す。


島では各々に寝床があったものの、ここで寝たいから今日はここで、ということもざらにあった。そのまま眠くなるまで話し込んで…という場合が多かったが、たまに「兄ちゃんと一緒に寝たいから」といった理由でまだ小さな妹や弟が来たりする、ということもあった。

そういう場合、ギリーは慣れない寝床で眠れない子の面倒を見ていた。眉間の当たりをなでてやると、魔法がかかったようにすやすやと眠ることがほとんどで、そういった面倒見の部分でもギリーは島の者たちに信用されていたのだった。

そんな物思いにふけりかけたギリーは現実にもどり、未だ眠れそうもない少女に向けていった。


「今、レストリーが食料を取りに行ってくるって出ていったんだ」

「それは…申し訳ないね」

「いや、こちらこそだ。オレが魔法を使うのに時間を割いてもらったりしたからな」


いろいろと話がしたいところだが、如何せんこの村の状況的にやすやすと異世界への転生・転移の話をするわけにもいかない。二人は、ゆっくりと少年の帰りを待っているのであった。


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