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異世界へ  作者: 馬子友也
第2章 熱砂に浮かぶ孤島
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夜に来る旅人

この世界に来ての初めての日没となる。すぐに日は沈み、あたりが暗くなってゆく。周囲の気温が一気に下がり、噴き出ていた汗が体温を奪う。


「どういうことだ?」

「こっちのセリフだよ。やっぱりお前ら嘘ついてるんじゃ…」

「それはない。オレたちはただ思うまま、感じたままでアドバイスしただけなんだ」


少年の魔法はいまだに顕現しない。数十分ほど絵を眺めていた二人は、その後レストリーの魔法指南を行っていたが、一向に魔法が使えそうな気配はなかった。


「ともかく、もうずいぶん日が暮れた。今日はレストリーの村で泊めさせてくれないか」

「…分かった。あんたらはまあ、間抜けそうな見た目だし大丈夫か」


少年が無駄口を叩きながらも了承する。真剣に向き合っていたが故か、こちらへの当たりは多少良くなったように感じる。

そして、彼は一言付け加えた。


「村に入ったら『トルゼーデの者じゃない』と言え。『あんな国クソくらえ』とかでもいいな。それと俺と会ってないフリをしろ」

「どういうことだ?」

「聞くな。だけどこれはお前らのためを思って言ってるんだ。じゃあな」


少年は告げるだけ告げて去っていこうとする。口調はきついままだが、多少心を開いてくれたように感じる。

「トルゼーデ」はレストリーの名前にもあるが、何か関係があるのだろう。だが、聞こうにもこたえてくれるかどうかが怪しい。

ついていこうとするが、足元が見えないために二人は火の魔法を使う。突如二人の方向が明るくなったことに気づき、少年が振り向いた。


「あ、あんたら、火も灯せるのか?」

「ああ」


少年は少しの間顎に手を当て、手に火をともす二人に向けていった。


「明日、またここに来てほしい」

「それは『交渉』か?」

「いや、頼み事だ。嫌なら来なくていい」

「分かった」


ギリーが答える。少年はこちらの返事を聞いたのち、そそくさと闇の中へ消えていってしまった。




 暗い山道を二人で歩き、山の最も高いであろうところまでたどり着く。

 そこから見えたのは、円状に形成された山の中に存在する一つの集落。集落の周りを囲うように水路が通っている。橋が東方、西方の2方向にかかっている。


「あれがトルスパイツか」

「だね。明かりも何もないから見にくいや」


 二人は、見えづらい足元に注意しながら、慎重に山を下りていった。

 

 


ギリーとルーチャの二人は集落の入り口にたどり着く。見る限りは、灰色の石を積み上げられた家と茶色い土程度しか見えない。


「ここは普通の土なんだね」


ルーチャが意外そうにつぶやく。


「そんなに驚くことか?」

「うん。全方位砂漠っぽそうだったからてっきりここもそうなのかと思ってた」

「秘境とかそんなとこか?」

「かもしれないね。とりあえず行ってみよう」


明かりを灯しながら歩く二人。そんな明かりに気づいてか、四方から村人に囲まれる。レストリーと同じくすんだ緑色の髪を持つ者たちは手に石包丁を握っており、とても穏やかな歓迎とはいえない。というより、レストリーはどこだ?


「お、落ち着いてよ。ボク達はただの旅人なんだ」

「嘘つけ!そういって騙すつもりだろう!」

 「妖術みたいなのを使いおって!怪しい奴め」


一筋縄ではいかなそうだ。ここでギリーはレストリーの言葉を口にする。


「『トルゼーデの者じゃない』」

「ッッ!」


村人たちが一瞬ひるむ。すかさずルーチャが畳みかけた。


「『あんな国、大嫌いだ』」

「お、おお。そうだったのか」


村人たちの戦意が消える。人々は持っていた武器を下ろしていった。レストリーの助言に間違いはなかった。二人はほっと胸をなでおろす。ギリーは鞄の開き口の金具に手をかけていたのを止めた。


「砂漠を歩いて来て、へとへとなんだ。どうか一泊泊めてはくれないか?」


村人たちが顔を合わせる。がやがやと話し合う素振りを見せたのち、ひげを伸ばした初老の男が前に出てきて言った。


「分かった。案内しよう」


そうして二人は男の後をついていく。この人物が歩いていくのを見送った村人たちは各々の家へと帰っていく。彼らの行く先からして、ここはちょうど「中庭」に当たる部分であったことが分かる。彼らはこの中庭を四角に囲んで共同住宅のようにして住んでいるようだ。二人はその中でもひときわ大きな部屋に案内された。


「おい、レストリー!いるか!」


男が声を上げる。レストリー?この部屋にいるのか。


「ああ?なんだよ」


レストリーが出てくる。夜の気温に合わせてか、少し服を着こんで出てきた。ギリーとルーチャを見て、初対面のような発言をする。


「誰だ?」

「遠路はるばるわたってきた旅人だそうだ。お前の家ならこの家で一泊泊めてやってくれるか?」


頼み事をしているようで、若干脅迫まがいのような言葉の圧を感じるのは気のせいだろうか。


「ああ、分かった」

「よろしく頼むぞ」


男性は二人に向けて笑顔を見せ、言った。


「では、ごゆっくり」


そうして男を見送ったのち、レストリーが二人に向かって言う。


「上がってくれ」


こうして、二人はレストリーの家にたどり着いたのだった。


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