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異世界へ  作者: 馬子友也
第2章 熱砂に浮かぶ孤島
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目の前にあるいくつか突き出た岩の奥は、見渡す限りの砂景色。地平線が見えるが、茶の地面が続くだけ。随分と広い陸地だ。

 自身らのいる場所を見ると、岩の上に寝ていたようだ。灰色と白の混ざった岩肌はほんの少しひんやりとしているが、じりじりと照り付ける太陽から送られる熱の方が勝る。

「暑い…」

声を出して気づく。そして自身の体を見ると体がまた、元の「ギリー・ティグケットの姿」になっている。壮年の姿ではない。


「岩山の…中ほどにいるって感じかな」

自らがいる場所を把握しようとしているルーチャにギリーが問う。

「オレの髪の色は?」

「緑。兵士たちのようなライトグリーンというよりかは、くすんだ緑って感じだ。これまでに見たことのない色」

「ということは、ここは異世界と考えていいわけだ」

異世界に来た、ということを二人で確認した。


日差しを嫌って額に手をやるギリーと同様、ルーチャも額に手を当てている。しかし手のひらは逆方向、自身の頭に向いている。日差しをよけてといるという仕草ではない。

「ルーチャ、大丈夫か?」

「う、うん。ちょっと頭が痛むくらいだから」

転生をして、順応できるであろう体のギリーとは違い、少女の体は元のままだ。この世界の環境に慣れる時間が必要なのだろう。

「それと、さっきの世界よりも空気のまとわりつくような感じが強いかな…」

「分かった。このまま落ち着くのを待とう」

二人は照り付ける日差しの中、しばし座って待つことにした。


ギリーは顎に手を当て、考えをめぐらす。

異世界に来たが、なぜそうなったのかが分からない。

考えられたのはルーチャがあの世界から出たいと強く願ったのだろうか、ということ。本人に聞いてみるしかないか。


ギリーは隣に座る少女に向けていった。

「ルーチャはすぐにでもあそこから出たいと思ってたのか?」

「ううん。1か月後って言ったのは嘘じゃない。それまではあの中で過ごそうって思って寝てたんだ。だからボクもどうしてこうなったのか分からない」

すると、異世界への移動は何が原因で起こっているんだ?


しかし、今は別のことを考えるべきだろう。

「こういう環境ってのは、安全なのか?」

「そうだね…」

ルーチャがあたりを見渡す。

「ざっと見た感じ、大丈夫だと思う。脅威はこの暑さぐらいかな。砂漠の中にポツンと立った岩山ってとこだね」

「これも山?土じゃなくて岩で出来てるものもあるのか」

「だね。山としては小さ目な気がするけど」

「この大きさでか!ルーチャの知っている山ってのは相当大きいもんなんだな」

鳥籠に比べ、はるかに大きい隆起した土地を見て、ルーチャは小さいという。彼女の知る世界にはどれほど大きいものがあるのだろうか。


「ともかくボクらの今の目的は周辺状況の把握だね。異世界移動の話はその後、また落ち着いたときにすべきだ」

「そうだな」

少し休み、ルーチャが回復したため、二人は辺りを探索することにした。


遠方に何も見えない砂の土地は後回しにして、自身のいる岩山を調べてみようと歩き出す。

熱にさらされ続けた二人の体には、汗が流れ落ちる。気を抜いていると、あっという間に体の水分をすべて持っていかれそうだ。


二人の持ち物はルーチャの黒い鞄だけ。また二人の寝ていた場所の近くにあったが、それ以外には何も持っていない。鞄はギリーが担いでいる。


 魔法は、この世界でも使えるのか?


 そう思ったギリーがふと足を止め、水の魔法を使ってみる。

 が、上手くタイミングがつかめず、なかなか出来ない。この体が魔法を使うのに適していないのだろうか。


「どうしたんだい?」

ルーチャが突然足を止めたギリーに向かって声をかける。

「いや、水の魔法を使おうと思ったんだが…」

「ああ、そういうことか!」

聞いたルーチャは両手を小さな胸の前に掲げ、唱える。

「ウォル!」

 突如、直径が体半分ほどの大きな水球が現れる。突如規模の違う魔法を唱えた少女を見て、ギリーは混乱した。


 ルーチャは得意そうに…ではなく、愕然としている。自身の出した魔法でありながら、この規模で魔法が出るのは想定外だったようだ。

「お、大きい…」

 水球は突然、思い出したかのように重力に従って落ちていく。すかさずギリーはその一部を両手で受け止めた。口に運び、一息つく。


「ふぅ、ありがとう。しかし凄かったな」

「ボクもびっくりしたよ!どうしてだろ…」

「ルーチャが練習したから強くなった…とかだといいんだがな。練習でどうこうなるなら、数百年生きる魔女のみんなは、もっとでかい魔法が使えてしかるべきだな」

「世界によって魔素の濃度が違うのかも。このまとわりつくような感じ、そういうことかな」

転生した体のギリーでは気づくことが出来ない。魔素は世界によって違うのか。

「となると、世界を移動する度に魔法が使えたり使えなくなったりするわけか…便利なんだかそうじゃないんだか」


しかし、魔法を使うのに苦戦していたギリーに比べ、ルーチャはすんなりと唱えられた。これも世界ごとでの違いだろうか。

「ルーチャはあっさり魔法を唱えられたな」

「そうだね。ギリーは出来なかったの?」

ルーチャが首をかしげる。瞬間、少女がひらめく。

「もしかして、力を入れるタイミングが分からない、とか」

「ああ、どうして分かったんだ?」

随分と察しがいい。


「ボクが魔法を使うときにことばを言ってるのは、そのためだよ。魔法を出す瞬間に名前を言う!ギリーもほら、やってみて!」

少女のアドバイスに従い、手のひらを上に向けたギリーが口を開く。

「ウォル」

が、魔法は出ない。

「うーん、もう一回!」

もう一度、ルーチャの名付けた魔法名を口にする。

「ウォル!」

が、出ない。

「もう一回!」

こうして元魔女の青年は数分間、人間の少女に魔法を教わっていたのだった。




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