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異世界へ  作者: 馬子友也
第1章 鳥籠の世界 カフィッグ
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1か月後

「確かに、ここから脱出しようとしてるのはギリーとボクだけなんじゃないかってことは薄々感じてたよ」


 少女は続ける。

 「彼らとボクらの感覚は多分大きく違う。だから目的を『みんなで脱出する』ことから『二人で脱出する』ことに変えるのはアリなのかもしれない。でもね、その案に二つ返事で乗っかることはできない」

 

 議論は続く。

 「もしボク自身の転移が成功したとしても、ギリーも一緒に来れるのかは分からない。二人で脱出するのなら、より確実な方法を考えてからでも遅くないだろう?」

 「そう…だな」

 ギリーは少し間をおいて答える。だが、少しずつ前に進めてはいるはずだ。


 「これまでで、ルーチャはどんな時に転移したんだ?」

 「これまでボクが転移した辺りの状況は2つ。『命が消えそうになった瞬間』と『こんなのは嫌だ、と強く思ってそのまま眠りについた時』だったと思う。」

 「前者はともかく、後者に関しては十分再現は出来そうじゃないか?」

 「かもしれないね。いずれここから出るようになった時は試みてみよう。もしかしたら意図せずに起っちゃうかも」


 「なら、それを試みるまでの期限を決めておこう。とりあえず現状で、だ。どのくらいまではここにいたいと思う?」

 体の寿命が長いギリーにとっては余裕があるため、ルーチャの意見を優先すべきだと考え、聞く。

 「そうだね。とりあえず1か月だ。そして1か月後、またここから出たいか、そうでないかを考えよう」


そうして、1か月はここで過ごす、と二人は決める。今日から1か月後が決行の時だ。


「しかし、オレの転生にしろ、ルーチャの転移にしろ随分と不思議なもんだな」

「そうだね。どっちも終わったはずの体が動いてるわけだし」

ギリーの体もルーチャの体も「病に侵され、動かなくなっていた」はずの体だ。


「そういえばルーチャは、元の世界に帰りたいとは思わないのか?」

「うーん、出来たら帰りたいとこなんだけどね。この転移の仕組みが分からないんだ、今のところはどうしようもないよ。それとまあ、ボクの場合は元々余命宣告されてたから『くいのないように』って思って動く余裕があったんだ。それで大体やりたいことをやり切って転移したから今すぐにでもって感じじゃないかな。むしろギリーの方はどうなんだい?」

「そうだな。オレは帰りたい。またみんなと会って、あの平和な島でただ過ごしたい」

「そう…だよね。早くこの転移の仕組みを解明しなくちゃだね」

「ああ、だけどもうちょっとだけ流されるままに世界を見てみたいって気持ちもある」

ギリーは続ける。

「こうしてルーチャと出会ってからは、オレの知らないモノってのがたくさん出てきた。機械にしろ、魔法にしろ、驚かされることばっかりだ。だから、次はどんなものに出会えるのかって、今も楽しみにしてる。ルーチャもそうじゃないか?」

少女は指先に火をつけて答える。小さな火が照らすのは、笑顔。

「そうだね。こうして魔法が使えるようになったのは、異世界に来たおかげだもんね」

ギリーの大きな火、ルーチャの小さな火は、ゆらゆらと二人の間に揺らめいていた。


『ここでの話は、もう少しだけ続く』

「そういえば、ルーチャのあの鞄も転移してきたことになるよな」

黒い鞄。中にはスタンガン、狙撃銃と、今はペンとメモ帳も入れられている。

「そうだね。ボクが転移する度に、辺りを見渡したらすぐ近くにあるからね。ほんとに助かってるよ」

「あれ以外に一緒にモノが転移してきたりは?」

「ないね。あの鞄以外にはモノが一緒に転移したってことはないな」

少女は鞄から目の前にいる男に目を移す。

「人に関しては別だけどね」

「ああ、一人、いるな」

一緒に転移してきた人は笑みを浮かべた。


そうして二人は別の話題に移った。

「ルーチャはどんな景色を見てきたんだ?」

「そうだね…山って知ってるかい」

「いや、それってなんだ?」

「うーん、ここの鳥籠の部屋に土を満たすだろう?すると大きな盛り上がった土地が出来る」

「ああ」

「それが山だ。この鳥籠の数十倍の高さがあるものだって存在するんだ」

「へえ、すごいな!一番上から見下ろしたらいい景色が見れそうだ」

「そう。それはもう最高なんだ!そこで食べるご飯ってのも特別においしいんだよ」

ぎゅっと目を瞑りながら話す少女の口元には、笑みがこぼれている。どれほどおいしいのだろうか。

「ご飯ってどこで食べても味は一緒なんじゃないか?」

「ふふふ、そういう人は多いさ。真実かどうかは外に出た時のお楽しみだね」

「他にはどんなところがあるんだ?」

「うーん。砂漠、とか?」

「ほお、それはどんなところなんだ?」

「辺り一面砂なんだ!ものすごく暑くてね。でも夜になると…」

そうして二人は他愛のない話をしばし続けたのち、眠りについた。


ここから出ようと試みるのは少なくとも1か月後だ。それまでは、ゆっくりここでの生活を楽しもうじゃないか。


二人は目を瞑り、明日を待った。



ベッド、こんなに硬かったか?それに体も傾いてる気が…

目を覚ますと、雲一つない青空。シェルターの中から恋焦がれた景色だ。隣で桜色のショートヘアを揺らした少女が目をこすっている。


二人の眠気は一瞬で吹き飛んだ。目を見張り、二人の声が揃う。

「「ここは、どこ?」だ?」


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