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異世界へ  作者: 馬子友也
第1章 鳥籠の世界 カフィッグ
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脱出への策

ジュースを飲み、眠気に襲われたギリーは寝床へと向かう。そのままベッドに飛び込み、いびきをかき始めた。

 ルーチャもふらりふらりと自身のベッドへ。ふとギリーが呟く。

 「オレが行くしかないのか…」

 「それはダメ!」

 ルーチャが答えた。少女がギリーの顔をのぞきこもうとするといびきが聞こえる。

 「寝言か…」



『オレが行く』

ギリーとルーチャの間で出たが、「あくまで最終手段」となった策だ。

それはギリーが死んでも転生して生き返るだろうと仮定し、ギリーが地上に出るというだけのもの。


今回のようにして閉じ込められると、案として「とりあえず出てみる」という選択肢が出てくる。だが、汚染されたであろう地上に誰かが出て確認するのであれば、その出た人物が帰ってきても生きていられるという可能性は未知だ。それは魔女も然り。


では誰が行くのか。人間であるネロが道半ばで息絶えた、という事実から同じ人間であるルーチャはまず候補から外される。すると残るのは魔女だ。彼らの中で「たとえ失敗し、亡くなっても大丈夫かも」な存在が一人。それが転生の可能性を秘めたギリーだ。


だが、これにはいくつかの問題がある。


まず入り口を開けなければならないこと。

開ける瞬間、外からの空気が流れ込む。入り込んだ空気に繁殖力の強い悪性の細菌やウイルスがいれば終わりだ。医療機器というものはここにはない。核兵器によって汚染された土壌で生き延びた生物がいるなら、そうした変異をしている可能性は十分に考えられる。


次にギリーの転生についての知識が定かではないということ。

現在、彼は3回の転生をしている。兵士長、魔女ギリー、ベイトル。魔女ギリーをのぞけば、二人とも死の淵をさまよっていた。一人は毒を飲まされ、一人は病に伏していた。だが今、この施設内にそのような死の淵をさまよっている者はいない。もし転生したとしても、その先に転生したギリーと家族の双方に心の葛藤が生じるであろうことが問題だ。

それにこの転生に限りがあるならばどうだろうかという点。「1つの世界において転生は1回まで」やそもそも「転生は3回きり」であれば、ギリーは帰ってこない。


そして最後に、中身はギリーだが動いているのはベイトルの体であるということ。

これは倫理的なもので、当人たちにその気がないとしても、ベイトルの体を被験体として用いることになる。父の体で行こうとすることにバーディとマドリーが耐えられるだろうか。それはなにより、彼の体に転生しているギリーが一番気にしていた。


こうして外に出る案は二人で話した結果、奥の手とすることになったのだ。もちろんこの案はバーディにもマドリーにも話してはいない。


ギリーもルーチャも、このまま過ごし続けるか、外への脱出を試みるかはまだ決められずにいる。


 とりあえず、今日は眠ろう。

二人は瞬く間に眠りに落ちた。



翌日は前日とそう変わらない日々を過ごした。

ギリーはバーディの植物の手入れを手伝ったり、シェルターの掃除を行った。

ルーチャはマドリーの料理を手伝ったり、他の魔女たちに魔法を見せてもらいに行ったりした。

 

 オレは、ルーチャは今や彼らとともに、この小さな世界の中で立派な一員として過ごしている。魔女のみんなは優しく、オレたちは不和なく受け入れられている。こうしてずっと過ごしていくのも、悪くはないんじゃないか?

そもそも、なぜこのままここにいることが「悪いこと」のように感じているんだ?

ギリーは己に問うてみる。答えは返ってこない。ただ、心の靄が晴れるような気がしない。

考え続けるしかないか。


 その晩も、ギリーとルーチャは話し合っていた。ギリーの手から出した火が二人の顔を照らす。既にこうして寝る前に話すのは日課のようになっている。今日は何があったといったことから、ルーチャの知識から出てくる話、そしてどうやったらここから出られるかについてまで。島暮らしだったギリーにとって、ルーチャの語る電気や機械、国の話は聞いていて興味は絶えない。

 この日はギリーが話し始める。

 「なあ、一つ思いついたんだ」

 「へえ、なんだい?」

「ルーチャの異世界転移を引き起こすってのはどうだ?」

今日は脱出についての話だ。

「うーん、難しいな。ギリーの転生と一緒で、ボクの転移についてもまだ分からないことだらけなんだ」

ギリーの出した奇策に少女はあまり乗り気ではない。

「そもそも、異世界転移したとしても、この問題の解決になってるような、なってないような…」

「そう、そこだ」

ギリーは言う。

「これまで生活してきて、ルーチャとオレは如何にして『ここにいる全員が』このシェルターから出るかを考えてきた。だけど魔女である彼らは違う。いかに毎日を豊かに、楽しく生きるかを考えて過ごしている。別に愚痴を言っているわけじゃないんだ。ただ彼らにとっては『ここを出ることはそう重要じゃない』んだ」

壮年の姿をした青年は続ける。

「それは魔女のみんなと話しててそう感じた。この違いは彼らが数百年生きるからあるのかもしれないし、外に出ても迫害する者がいた過去からくるのかもしれない。だから、こう考えてみたんだ」

少女は黙って聞いている。


「オレとルーチャだけでも、最悪ルーチャだけでもここから出られればいいんじゃないかって」


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