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異世界へ  作者: 馬子友也
第1章 鳥籠の世界 カフィッグ
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日記

 「さて、何があったのか見てみようか」

賑やかになった部屋でルーチャは言う。さっきのメモに書いてあったのは解放のコードだけではない。ギリーとルーチャは並んで立ち、タブレットを見つめている。

「マドリーやバーディの話から考えるに、書かれてる内容は『ネロの父の日記』と『ネロの日記』らしきものに分かれてるね」

 ルーチャは書いてあるうち、2つの文を読み上げていった。

 

 10367年 2月5日

 「魔法を使う人間」というものと出会った。辺境に訪れていた私が彼らに気づき、木陰から見ていると、子供が突如指先に火の玉を作り出していて驚いた。彼らと出会えたのは幸運だった。私にとって彼らは貴重なコレクションだ。「命を保証してくれ」と頼まれたが、もちろん断る理由はない。それどころか「安住の地を与えよう」というと、彼らはそれを飲んでくれた。

 こちらに気づかれ、護衛の兵士が銃を向けた際、やられるかと思った。てっきりあの火の玉をこちらに飛ばして応戦してくるものだと思っていた。だが、彼らは無抵抗だった。自身の周りに火を起こすことが出来ても、それを飛ばすということはできないのかもしれない。運が良かった。

抵抗されると思ったが、彼らのあのすました余裕は一体何なのだろうか?魔法を使えるということがそれほどまでに心に余裕をもたらすのだろうか?だが、そんなことを考えていても仕方がない。

 世間にこのようなことがばれてはならない。地上に収容施設をつくってもいいが、ばれる可能性が大いにある。だが、私は本当に運がいい。地下帝国だ。私が作ろうとしていたものが、こうも役立つとは。

地下帝国を造る予定は変更だ。私は6つの鳥籠を模した施設をつくることにした。

誰も足を踏み入れない辺境だ。念のため見張りをつけて、もう数年待ってもらうとしよう。


10372年 4月21日

 遂に完成した。彼らの住まう鳥籠だ。魔女籠と名付けようと思ったが語呂が悪い。まあいい。こうして彼らは完全に私のものとなった。

 不思議なのは5年前に見たはずの彼らの姿は何一つ変わっていなかったことだ。特に小さな子供であれば、多少大きくなっているはずなのだ。だが変化はほとんどしていないように見えた。魔女というのは不老不死なのだろうか?いや、そんなはずはない。そうであれば大人と子供の区別が出来るはずがない。

 謎は多い。彼らは無口で、私には何も話してくれそうにない。だが、十分。十分だ。


「これが『ネロの父の記録』だと思う。魔女の一族を捕まえて、あの鳥籠に入れるまでの経緯が書かれてる。護衛の兵士だったり地下帝国だったりの単語から推察するに、大金持ちだったり権力者だったりするんだろうね。魔女である彼らをコレクションと呼ぶ辺りは悪趣味な感じ」

 ルーチャはあまり好感が持てない、といった感想を漏らした。

「そしてこっちは『ネロの日記』だね。こっちは魔女の人たちと交流していた話と、少し時間がとんで最期の記のようなものになってる」

 再びルーチャが読み上げた。


 10382年 3月5日

 今日は「魔女」と呼ばれる者たちに会った。彼らは親父に閉じ込められたにもかかわらず、俺にはとても友好的に接してくれた。彼らを解放したいが、親父のような人間はわんさかいる。今、彼らを解放したところで、見世物にしようとする人間がまた彼らを捕まえるかもしれない。そうなれば、いたちごっこになる。それどころか、親父のような軟禁じゃなく、捕まえて解剖して、なんてやつも出てきかねない。俺からすれば、魔女よりも、何人も何人も集まって力を振りかざしたりする人間の方がよほど怖い。


 10382年 3月8日

 今日はベイトル一家に会いに行った。彼らは優しい一家で、マドリーのふるまってくれるナオザのサラダは本当においしい。10歳ほどの子だと思っていたバーディは中身が違うんじゃないかと思うほど大人びていて、見た目とのギャップが面白い。


 10383年 3月21日

 我が国、カフィッグによる徴兵に応じなければならない。当面この日記は書けないだろう。

だが再び、無事にここの人々と会えることを願う。


「彼は魔女の一族とうまく交流してたんだね。でも兵士として呼び出された、と」

 彼が魔女と出会い、徴兵によって呼び出されるまでの期間に、あの鳥籠の中にあった様々な発明品を作った記録も書き残されていた。

「その、『チョウヘイ』ってのはなんだ?」

島暮らしのギリーにとってはあまり想像がつかない。

「若者を兵士として呼び出す国のシステムだね。ギリーの島はこれが必要ないくらい平和だけど、大きな陸地に人がたくさんいて、かついくつかの団体に分かれてたら争いが起こるかもしれないだろう?ここでいう団体が国だ。それで、国同士が争うことになった時に備えて、国の若者に一時的に兵士として働いてもらうっていうシステムだ」

「ずいぶんと厄介なもんなんだな。その『国』ってのは」

「そうだね。でもギリーの島の人数の何十倍、何百倍でことを成し遂げようとするから、出来ることも多いんだ」

「ルーチャもその国とやらにいたのか?」

「うん。だけどボクのいた国は徴兵はなかったね」

やはり、謎の多い少女だ。


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