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異世界へ  作者: 馬子友也
第1章 鳥籠の世界 カフィッグ
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解放

 「上がるか」

 小部屋の中で、ギリーは言った。この部屋には1本、上から梯子が降りている。

 「そうだね」

 ルーチャも答える。

 

 6つあるハッチの中は開けてみたが、いずれもさっきまで来た通路と瓜二つだった。多分、他の魔女たちが閉じ込められているはずだ。その前に他の部分も見ておきたい。もしかしたら、この上にあのゲートのシステムを止められるものが存在するかもしれないのだ。

 

 階段を上る。鉄の蓋を押しのけ、上の階に足を踏み入れる。


 大きさはさっきの部屋より大きい。横幅が人一人分増えたぐらいか。内装はかなり長い年月が経っているのか、ボロボロだ。前には上へ上がる梯子が見える。すぐ左手にはいくつもの者が置けそうな棚。食糧庫だろうか。だが棚にはほとんどものが置かれておらず、あるのはよくわからないボロボロの袋がいくつかある程度だ。右手には2段ベッドが二つ。階段側の左手にはボロボロの紙の置かれた作業台のような机、右手側には物々しい機械が下に見えるテーブルが見える。


 中央にあるのはやや豪華なテーブルと椅子が3つ。装飾的に、骸骨の持っていた椅子と同じもののようだった。入口には謎のマスクや銃が立てかけられている。


「シェルターみたいだ」

ルーチャが呟く。

「シェルター?」

「避難施設のこと。なにか災害とか異変があったとき用の家ってとこかな」

「そんなものがあるのか」

ギリーは驚く。島で暮らしていたギリーにとっては島自体が家のようなものなので、あまり想像がつかない。


 梯子の先には小さなのぞき窓がある。非常に重厚に作られており、近くの壁には数字を入力するパネルがあった。ギリーはのぞき窓を覗く。

「分からないな」

見えるのはボロボロの天井からのぞく青い空。外につながっているのなら、開けるのはあとでいいか。


 「きっとこれだよね」

 ルーチャが機械の方へ歩いていく。テーブルの上にはタブレット、と横には手回しハンドルがついている。

 「そうだな」

 タブレットを操作しようとするルーチャの隣にギリーが立つ。

 「うーん、電源が切れてるっぽいな…」

 ルーチャが残念そうにつぶやく。


 「ねえギリー。そこのハンドルを回してみて」

 「ああ、分かった」

 指示されたとおりにギリーはハンドルを回した。テーブルに四角い光の枠が見える。

「ちょっと回し続けてみて」

ルーチャは四角い光の枠の中にタブレットを置き、ギリーに指示した。

そうして数分間、男はハンドルを回し続けていた。


「も、もういいか」

へとへとになり、ハンドルから手を離したギリーは倒れこみ、ルーチャに聞いた。

「うん、ありがとう。お疲れ様」

そう言って、ルーチャが置いていたタブレットを持ち上げ、ボタンを押した。

「点いた!」

どうやら充電を行っていたらしい。ギリーの働きは報われた。


ルーチャがタブレットを起動した。タブレットには複数のブロックが見える。彼女がそれに触れると、新たな画面に切り替わる。

「これの操作方法、知ってるのか?」

「うん、ボクのいた世界はこれに似たものがあったからね」

随分と不思議なものだ。そう思っているとルーチャが口を開いた。

「この中には緊急用のラジオ、連絡ツールが入ってるから、この施設自体が緊急避難用の場所なんだろうね。他にあるのは簡単なゲームと電子書籍、メモのアプリといったとこかな」

「その『らじお』とか『あぷり』ってのはなんだ?」

「ラジオっていうのは電波をつかって遠くの人に声を伝えるもの。アプリはそういう機能ととらえてもらえば大丈夫かな」

「へえ、そんなものがあるんだな」

ルーチャがメモのアプリを動かしていると何を見つけたのか、手を止めた。

「なにか書いてあったのか?」

「そうだね。今見てるところにはあの鳥籠の開け方が書いてありそうだ」


ルーチャが書いてあることを読み上げていく。

「最後に、万が一私が彼らの元へたどり着くことが出来なかった時のため、ここに開放コードを記しておこう。『112357』だ。どうか、善なるものの手に渡ることを願う。」


 もう少しタブレットの内容を知りたいが、優先すべきはそれではない。

 「これがあれば彼らを解放できるな!」

 「そうだね。あのゲートの端末にこれを入力すれば出られるはずだ」


 そうして二人は下の部屋に戻り、元来た道を引き返す。バーディとマドリーは難なく出ることが出来た。気まずい雰囲気が流れる中、ギリーは二人に向けていった。

「本当にすまない。オレの『転生』というのは…多分、命の消えかかった人に対して起こる現象だ。決して悪意を持ってこの人の体を乗っ取った、というわけじゃない」

 マドリーは俯き、口を開く。

「ええ、分かってるわ。ここから解放しようと、命を懸けてくれたあなたなら、きっとそうなんでしょう。」

少しの沈黙の後、恐る恐る言った。

「一つだけ聞かせて。あの最期の言葉も『あなたの』言葉なの?」

 「いいや『オレの言葉じゃない』」

 安堵したように息をつき、マドリーはにこりと笑う。

 「そう。ならきっと、主人は自分が歩いていく姿をみて、『神様がくれたチャンス』とか思って出てきたんでしょうね。」

 続ける。

「私たち魔女は、人間のように死期が近くなっても見た目に大きな変化があるわけじゃないの。突然、糸が切れたように眠っちゃうから。だから、ああして最後の別れを伝えられたのは、むしろ幸運かもしれないわね」

はかなげな笑顔を浮かべる。後ろにいる青年の表情は見て取ることが出来ない。

ただ、静かな時間が流れていった。



その後、5つのハッチに入って魔女の一族の解放を行った。いずれも同じ構造になっていたため、4人は難なく鳥籠に住まう人々を解放したのであった。


 鳥籠に住んでいた魔女の人数はいずれもばらばらだった。2人のところもあれば、7人家族のところもある。住んでいた人々も老若男女様々。皆、容姿が整っており、髪の色は赤、青、紫のいずれかだった。

 「ありがとう。」

 いくつもの感謝を聞いた。

解放された人々は皆、再会を喜び合ったのだった。





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