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異世界へ  作者: 馬子友也
第1章 鳥籠の世界 カフィッグ
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火の魔法

 二人は、ギリーの指先に宿る小さな火を頼りに、暗闇の道を進んでいた。


 「転生って、一体何なんだろうな」


 聞こえるのは若々しい青年の声ではなく、穏やかな壮年の声。ギリーだとわかっていても、なかなかに慣れない。生き残っているという事実に対し、彼の表情は晴れない。


 「こうして、突然他人の体になって動く。だが、そうして動いている体の主には家族がいるわけだ。オレは…この体で彼らと顔を合わせることは出来そうもない」


 少し間をおいて、ルーチャが口を開いた


「でも、ギリーがその体に移ったからこそ、ベイトルは最期の言葉を伝えられたんじゃないのかな」

「そう、かな」


ギリーの声は小さい。

 

「きっとそうだよ。もしギリーがそうして転生しなければ、彼は思いを伝えることが出来なかったかもしれない」


 少女は続ける。


 「今は…そう信じて進もう」


 先の見えない深い闇を、二人は進んでいく。




 生命の気配が感じられない。無機質な世界に二人の足音だけが響き渡る。

 ずっと静かにしていると、いつか暗闇の中に引きずり込まれるような、そんな恐ろしささえ感じる。ルーチャは耐えかねて口を開いた。


 「ギリー、魔法が使えるようになったんだね」

 「ん?ああ、体が魔法の出し方を覚えていたんだろうな」

 「それで、どうやってるのかって説明できそう?」

 「そうだな。ちょっと待ってくれ…」


 二人は立ち止まった。ギリーがその場で数度火を作り出したり、目を瞑ったりを繰り返した。ふうと息を吐き、言った。


 「よし、分かったぞ」

 「ほうほう、それで?」

 「空気中の魔素を集めることに加えて、自身の体にも意識を回してるな。」


 ギリーは続ける。


 「自身の体について意識することは2つ。体全体の力を指先に流すこととへそのあたりから指先へ大きな力を流すこと。これを同時に行っている。」


 「うーん、てことはそれを同時にやれば魔法が使えるってわけだね?!」


 ルーチャの目は再び輝きだす。


 「そうだな。少しやってみるか?」

 「うん!」


 ルーチャが魔法を使ってみようと躍起になる。念のためとギリーがいまだ進んでいない暗闇を見張る。数分経過したその時


 「えいっ」


 ルーチャの指先から小さな火が現れる。


 「出来た!出来たよ!ねえみてた!?」


 少女が満面の笑みでギリーの方へ向き、言った。


 「ああ、すごいな!こんな短時間で出来るものなのか?」

 「えへへ」


 ルーチャが照れる。小さなその姿は親に褒められ、照れる子供のそれと相違ない。

 「よし、魔法使いっぽく…」

 少女が目を瞑り、かっと見開く。

 「ファム!」

 ぼっと少女の目の前に小さな火の玉が出現する。

 だが、少女の小さな炎では足元が見えるほどは照らされない。

ギリーが炎を生み出すと、辺りが見渡せる程度に明るくなる。

 暗闇の道は、二つの火によって明るく照らされていく…



 

 変わらない景色を歩いていると、少しの時間でも永遠のように感じる。なにか、景色に変化が起こったりしないだろうか。そう思いながら歩き続け、初めて見た変化というのは、出口から差す光でも、新たな生物でもなかった。


 「ヒッ」


 ルーチャが小さな悲鳴を上げる。声を抑えてはいるが、このトンネルではその声すらよく響く。

 二人の目の前にあったのはボロボロになった骸骨だった。こちらに向かって倒れるような形で伏せている。だが五体満足のものではない。


 「足の骨の部分が見当たらないな」


 ギリーは静かに分析する。内心は動揺しているが、ルーチャには悟られまいと取り繕っている。

骸骨の後ろには豪華に装飾されていたように見られる、ボロボロの椅子の残骸が見られる。なぜ、椅子がここに?

 無骨な鋼鉄の壁に対し、装飾の施されるような椅子の破片。想像の付かない2つのコントラストは異様というほかない。


 「持ってきた、と考えるのが妥当か」


 だが、持ってきたにしてもどのような目的で?そもそもなぜここに1体分の骸骨があるのか。謎は深まるばかりで、一向に答えは見つからない。


 「ともかく、進むしかないね」


 ルーチャが言った。ギリーも頷き、敵に備え、スタンガンを手に持ち直す。


「行こう」




二人は慎重に歩いて行った。だが、敵は出てこない。永遠にも感じる時間が流れたその先にあったのは、壁だった。天井にハッチを見つける。先を歩いていたギリーがハッチの取っ手部に手をかけ、ルーチャに言う。


「用意はいいか」

「うん…」


天井部は頭のすぐ上にあるため、そのままの状態でハッチを押せる。蓋に向けて力を籠める。なかなかに重い。力を振り絞り、鉄のふたを押しのけた。


梯子に手をかけ、上っていく。ギリーは立ち、再び手のひらに火を灯して辺りを見渡す。どうやら小部屋のようだ。高さはギリーの立っている頭一つ分ほどの余裕、縦にも横にも人が手を広げて2人分といったぐらいか。壁を見ても、コンクリートの無機質な配色しか目に入らない。同じようなハッチが自身の出てきたところに加え、6つ確認できる。


生き物の気配は感じられず、何かが出てくるといった様子もない。ルーチャに伝え、彼女もあがってくる。二人は暗く小さな小部屋にたどり着いたのだった。


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