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異世界へ  作者: 馬子友也
第1章 鳥籠の世界 カフィッグ
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唯一の出口

バーディは気を取り直すように続けた。


「ちなみに炎の魔法が得意か、水の魔法が得意かは見た目ですぐにわかるんです」

「髪の色?」

「そう、赤髪ならば炎、青髪ならば水が得意とされています」

「バーディは紫色だね」

「そうなんです。この髪色はどちらもそれなりという感じですね」

「どっちも得意!とかじゃないんだ」

「そういう人もごくまれにいます。どちらも得意だったり、その逆でどちらもいまいちだったり。赤髪なのに水の魔法が得意という人もいたりするので、あくまで目安にといった感じですね」

「もしそれがギリーにも当てはまるなら…」


少女のことばをギリーがつなぐ。


「炎の魔法が得意、ということになるな」


だがな、と続ける。


「感覚がつかめないんじゃ、どうしようもないな」


赤髪の青年はやれやれといったふうに言い放った。




「さて、これからについてなんだが」


 集まった4人に向け、言う。


 「外に出てみれるか、試してみようと思う」

 「うん、そうだね」


 ルーチャも賛同する。


 「そうですか。なにか案があるなら、是非やってみてほしいです」


 こうして脱出を試みることになった。




 ふらふらと歩いていた昨日とは違い、まっすぐに出入り口のある施設へと向かっていく。

ルーチャはワンピースをマドリーに渡し、白のシャツに赤のベストへと着替えている。


 「二人は出ようとしたことあるの?」

 「いいえ」


 バーディが答えた。


 「ここに入った時、人間が言ったんです。ここはネズミ一匹通れない。出ようとすればどうなるか、試してみればいい。と」


 バーディが扉の前にたどり着き、すんなりとドアを開ける。木製のドアは音もたたずにすっと開く。内から鉄のにおいが鼻につく。


 「いくつか植物を投げ入れたりしてみたんです。こちら側には生物は植物しかいませんから」


 中を見渡すと辺り一面銀、銀、銀。継ぎ目のあるだけの鉄板がいくつも張り付けられている。そんな殺風景な中身の気休めでもあるかのように、もう一つのドアが鎮座している。こちらも鋼鉄製。隣にはロック解除用の装置があった。バーディはそこを指さしながら言う。


「ここがそうです。少しやってみましょうか」


 青年は持っていた木の葉を複数枚投げ込んだ。突如、静かに扉が閉まる。数秒後、空いた扉の中には、何もなかった。


「こうして跡形もなく消し去るということです」

「他に抜け道らしきものは?」

「ないですね。ここから出るためにはこのゲートをどうにかするしかありません」




「なるほどね」


そう言ってルーチャは黒い鞄をごそごそと探った。

まもなく彼女の手には小さな黒い機器が握られている。


「それは…スタンガン?」


バーディが聞く。ネロが機械を作っていた分、彼らも知っているのだろうか。


「そうだよ。ほんとはドライバーみたいな工具があったらいいんだけど」


母子は察したような素振りを見せる。


「それで…どうするんだ?」

「壊してみよう」


ルーチャがスタンガンを扉のロック機械に向かって撃った。

ほとばしる青白い閃光。バチバチという自然では決して聞かない音が立ち、機械は黒煙を上げ、焦げ臭いにおいがあたりに漂う。


「よし、バーディ。やってみて」


バーディは頷き、再び葉を数枚放り込む。




何も起こらない。葉は消し去られることなく、そこにある。


「よし、行ってみよう」


ルーチャが先頭になり、歩いていく。

ゲートは何も言わない。

が、ルーチャの後に続いていたギリーが踏み出した瞬間


ビーッビーッビーッ


けたたましい警報音が鳴り響きドアが閉まる。前後にいたルーチャとバーディは間一髪でよけたが、ギリーは閉じ込められた。頭の上にいくつもの赤い線で作られた一枚天井が出来上がる。そうして


「う…」

声を上げる間もなく、熱線の壁が降ろされたのだった。




「…はっ!」

目を覚ます。木製の天井。体は布団に入っている。辺りを見渡す。小部屋にいる。窓からは鳥かごの骨組みと灰色の天井。部屋の中はいくつもの本に囲まれた壁。立派な机と椅子、その上にペンが見える。

死んだと思った瞬間、さっきいたところとはまるで違う景色が見える。夢ではない。はっきりとした意識があり、体は空気を求め、生命活動を続けている。前に同じような体験をした。これは…


「転生、か」


つぶやくと、口は少ししわがれた、穏やかな声を放った。いつもの少し高めの良く通る青年の声ではない。着ているのは寝巻だろうか。灰色のローブを体にまとっている。

身を起こし、ゆっくりと立ち上がる。慣れない体でよろよろと歩いていき、ドアを開ける。やはりそうだ。この景色は知っている。鳥かごの中にあるたった一つの家。その2階だ。

隣のドアはさっき服を着替えた部屋だ。見知った廊下を歩き、階段を下りる。1階の木製のドアを開け、さらに右手に見えるもう一つのドアを開ける。ここには洗面台がある。ギリーは鏡を見て、自分の姿を確認した。目元は少しやつれているが、バーディにそのまま齢を取らせたような大きな目、そこに覆いかぶさる二重、高い鼻に薄い唇を備えている。

 


 ともかく、彼らの元に行こう。これをあの3人に伝えねば。



 動くこと自体が久しぶりな体は走ることを拒む。ギリーははやる気持ちとは裏腹に、ゆっくり、ゆっくりと3人のいる場へ歩いていくのだった。


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