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異世界へ  作者: 馬子友也
第1章 鳥籠の世界 カフィッグ
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新たな地

ギリーはルーチャに言った。


「なあ、ここはどこだ?!島はどうなった?!」

「どこかはボクも分からない。島は救われたさ。兵士から解放されて、でもキミだけがいなかった」


 戸惑いながらも聞くギリーに対して、ルーチャは冷静に答えた。


「帰ることは出来ないのか?」

「それが、どうやってやるのかも分からないんだ…ともかく、ここを見て回るしかなさそうだね」


 そう言われて、ギリーは改めて周囲を見る。大きさは町程はなく、屋敷を10ほど詰め込めば埋まってしまいそうな半円形。芝生が生い茂っており、地面は緑の絨毯が敷かれているようだ。見える建物は2つ。人の住めそうな一軒家と籠の側面に接して建てられている四角い施設。あそこが出口だろうか。

ドーナツ状に花壇や植木がなされており、中央には豪華な装飾の施された噴水がある。植物たちは人の手が入っているのがはっきりとわかるほど整えられており、とても見栄えがいい。家と庭との間は薄オレンジのレンガでつながれており、道といえる道はそこにしか見当たらなかった。

 さらに歩き「端」に当たるところを見てみると分厚く透明な壁があった。

 

「ガラスだね。鳥かごの形になっているこれは鉄筋かな」


銃の入った黒い鞄を肩に背負ってきたルーチャが、聞きなれない言葉を呟く。

天井を見上げるがガラスとやらの外は、全て味気のない灰色が満たしている。


「鉄でおおわれてる…?まるで人間用の鳥かごみたい」


ルーチャがそう呟いくのを聞いていると、ギリーはふと言った。


「オレ、元の体に戻ってるな。」



頼りない長身、豊かな顎髭といった元兵士長の体ではなくなり、10年間奴隷生活に耐え続けた強靭な体が目の前にある。掌にあるいくつものマメの跡がはっきり見え、身長も幾何か高くなったように感じる。服装は茶のボロ着のままで、ここいらの豪華な庭や芝生、噴水とは相容れなさそうだ。高い鼻立ちに切れ長の目。ただ一つ、元と違うのは―――


「髪だけ赤色になってるね」


不思議そうにルーチャが言う。


「ああ、だがルーチャは変わってないな。不思議だ」


彼女には何一つ変化は見られない。華奢な体はギリーよりも一回り小さく、くりっとした大きな琥珀色の目はどこか幼さを感じさせる。黒のマントを羽織っておらず、隠れて見えなかった服装が露わになっているが、島民と同じボロ着を着ているので新鮮味はない。髪は今、何にも染められていない美しい桜色で揺れている。


ギリーは口を開く。


「しかし、鳥かごの中ってのは捕らわれてるようであまりいい気分じゃないな」

 「そう?ボクはちょっと安心するかな。生まれたところもこんな感じだったし」

「生まれたところ?」

「うん。ボクが生まれたのは…」

 「おや、あなた方は…?」

 

20歳ほどの青年がこちらを見つけ、歩いてきた。


 紫の髪は背中で結っており、随分と整った顔立ちをしている。身長はギリーより少し低く、ルーチャよりは高い。すらっとした体には白のシャツと緑のベストがキッチリと馴染み、黒のズボンまで合わせて1つの絵のような完成度を誇っている。


ルーチャが答える。

 「気づいたら私たち、ここにいたんです…」

 「それは随分と不思議な…」

 「ここってどういうところなんですか?」

 「僕らの住処なんです。差し支えなければあちらでお話ししませんか?」


 好青年は一軒家を指さす。あの家の住民とみてよさそうだ。

 厚意に甘え、二人はついていく。


 家に入ると、若い女性が出迎えた。

青の長い髪は肩まで下りており、青年と同じタイプの白のシャツに紫のベスト、やはり細い体をしており、芸術品のようだ。

 

「あら!バーディ、この人たちは?」

 「さっきそこで出会ったんだ。気づいたらここにいたんだって」

 「ルーチャ・クロウって言います!」

 「ギリー・ティグケットだ」

 「マドリー・エイガムよ。お客さんなんていつぶりかしら。ともかく上がってらっしゃい」


 招き入れられながら、ルーチャはバーディに聞く。


 「お姉さん?」

 「いいえ、母ですよ」

 「あら、嬉しいわ~」


 ルーチャが目を見開く。気持ちはわかる。随分と若くみえる。ルーチャの幼くみえるものとは違い、マドリーは上品さを感じる。


 家に入るとさらにドアが二つと脇に階段。階段に近いほうが木、もう一方は鉄製でできている。

 

「あの、こっちの扉って?」

 「普段は開けないの。それも含めてお話ししましょう」


マドリーは木の扉を開けた。

 木の扉を開くとテーブル1つ、椅子が4つあり、奥には厨房が見えた。

 3人が腰を下ろしたあと、マドリーが透明な水の入ったコップを用意した。

 そこには小さな木の実のようなものが見える。少し飲んでみる。とても甘く、美味しい。一瞬で飲み干してしまう。

 

「ギ、ギリー?」


 ルーチャが困惑している。


 「いや、その、おいしくてつい…」

 「あら。気に入ってもらえたようで嬉しいわ!いくらでも言って頂戴」


 上品なポットからコップに再び水が注がれた。



全員が席につき、話の場が整う。


「さて、まずお二人がここに来た経緯を話していただけますか?」

「ああ、そうだな」


ギリーとルーチャが説明していく。

ギリーのいた平和な島に兵士がやってきて、支配されたこと。用済みと始末されかけたところでルーチャが現れ、助けられたこと。そこから島を取り返したが、ギリーは亡くなったこと。そして―――


「ギリーとボクは気づいたらここにいたんだ」


バーディとマドリーは静かに聞いていた。特に驚くような素振りは見られない。


「なるほど、それは大変でしたね」


ルーチャが聞いた。


「二人とも、信じてくれるの?私が言うのもなんだけど、結構変な話をしてる気がするんだけど…」

「ええ、まあ長く生きてますから」


バーディがにっこりと笑う。

「長くって?」

「200年ほどかな」

「200年?!」

「そう。母さんなんて…」

「あら、バーディ?」


さえぎるようにマドリーが言う。花のような笑顔を浮かべてはいるが、恐ろしいものを感じる。


「失礼、聞かなかったことにしてくれ」


バーディもとてつもないものを感じ取ったのか、話を変える。


「僕たちは人間のことばでいえばそう、『魔女』なんだ」


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