ユーリオン、風邪をひく4
ベッドで眠るユーリオンが目を覚ます。
現在の時刻は12時頃なので、だいたい4時間くらいは寝ていた。
「体調はどう?」
「……母様?」
ユーリオンが起きようとするので、額に乗せた濡らした布を回収する。
寝起きと熱でボーっとする中、アメリアが側にいてくれて、更に看病してくれた事に気づく。
「まだ少し熱があるようですが、それくらいなので大丈夫ですよ」
「食欲は?」
「少しお腹が空きました。それに喉も渇きました」
「なら用意してもらうわ」
アメリアがベルを鳴らし、食事の用意を頼む。
その間に汗を拭き、着替えをする。
いつも通り、ユーリオンは自分1人でやるつもりだった。
しかし、アメリアに諭され、今回は手伝ってもらう事になった。
一般的な貴族ならば、普段から自分で着替えたりはしないし、身体を拭いたりもしない。
また自分の子供が風邪をひいたとしても、その看病を親がする事も一般的ではない。
そんな一般的では無い2人だが、どこよりも、誰よりも、普通の親子らしく見える。
ユーリオンの着替えが済む。
顔が赤いのは熱のせいなのか、はたまた羞恥心によるものなのか。
ちょうど良いタイミングで、エレナとアイリスが食事を運んできた。
なのでベッドには戻らず、テーブルがある方に移動する。
メニューは温かいスープと柔らかいパン、それに果実水だった。
特に喉が渇いていたので、ユーリオンはコップに入った果実水を一気に飲む。
よく冷えており、柑橘系の爽やかさも後押しして喉を通り、とても美味しい。
スープに入ったニンジンやジャガイモは小さく、スプーンで軽く押しただけで崩れる。
栄養面だけでなく、消化に良いようにと、良く煮込まれていた。
パンはスープに浸し、喉を通りやすいようにしてから食べる。
幸いにも食欲はちゃんとあるので、ゆっくりと休めばすぐに良くなるだろう。
現にアメリアよりも、ユーリオンの方が先に食べ終わっている。
「ごちそうさまでした」
食事の間に、ベッドのシーツや枕等も清潔な物に替えられている。
ユーリオンがベッドに戻るのにエレナが付きそう。
横になったユーリオンに、エレナがそっと布団をかける。
風邪とはいえ、馬鹿にはできず、実際に死ぬ事だって珍しくは無い。
それを知っているエレナは、心配で、不安で、怖くて仕方なかった。
「僕は大丈夫だよ」
「……ユーリオン様」
ユーリオンは優しく笑って、頭を撫でる為に伸ばした手を途中で止める。
病気の自分が直接触れる事をためらったからだ。
そんなユーリオンの気持ちを、知ってか知らずか、エレナは自らその手に頭を触れさせる。
自分から髪を触れさせに行くなど、昔のエレナからは考えられない行動だ。
例え、今は魔道具で色を変えているとはいえである。
「あんまり近づくと、風邪移っちゃうよ?」
「移ってユーリオン様が良くなるなら、全く構いません」
「……困ったなぁ」
「困りません」
エレナは氷水で冷やした布を絞り、ユーリオンの額に乗せる。
「ゆっくり休んでくださいね」
「ありがとう」
そんな2人の様子をアメリアとアイリスは見ていた。
「アメリア様、世話役取られちゃいましたね」
「……少しくらい構わないわ」
「嫉妬しないでくださいね」
「そんなに子供じゃないわ」
アメリアは2人の様子を優しく見守るのであった。




