ユーリオン、風邪をひく
ユーリオンとニクスが領主邸に戻ったのは7時を過ぎた頃だった。
海水に濡れた服を乾かしただけなので、髪や肌がべたつく。
ユーリオンは身体を奇麗にし、お風呂で温まる。
「はぁぁ~、魔法が使えて良かったぁぁ」
こんな時間に当然だが湯は張っていなかった。
なので、自分で温めた水を用意し、丁度良い湯加減にした。
ユーリオンの冷えた身体が温まっていく。
しばらく浸かっていると、頭がボーっとしてくる。
長湯しすぎたかと、湯から上がり身体を拭いて着替える。
戻ってきた報告の為、アメリアの部屋に向かうと、開ける前に扉が開く。
ちょうどアメリアが部屋から出ようとしていたようだ。
「ただいま、かえりました」
「……あなた、顔が赤いわよ?」
アメリアは屈み、ユーリオンのおでこに手の平を優しくあてる。
「熱い、熱があるわね」
「これくらい、大丈夫ですよ」
「駄目よ、ベッドで休みなさい」
アメリアはユーリオンの手を引き、ユーリオンの部屋のベッドへ連れて行く。
ユーリオンは先ほど着替えたばかりだが、パジャマに着替えさせられ、ベッドに寝かされる。
「食欲はある?」
「……あんまり」
「少しは食べないと……消化に良い物を用意させるわ」
はたしてユーリオンの食欲が無いのは、風邪のせいなのか、食べてきたからなのか。
アメリアが使用人を呼ぶ為のベルを鳴らすと、すぐにアコが来る。
「ユーリオンが風邪をひいたみたいなの」
「おいたわしい……では着替えを」
「それは済ませたわ」
「そうですか……そうですか」
「消化に良い食事をお願い」
「かしこまりました」
食事の用意をする為、アコが部屋を出て行こうとすると、ユーリオンが呼び止める。
「アコ、これお土産だから、みんなで食べて」
「ありがとうございます」
それなりの量を買ってきたので、アコ1人では運べない。
アメリアがもう一度ベルを鳴らすと、今度はアイリスとピエリスが来る。
事情を聞いた2人は心配そうな顔を見せるが、部屋にぞろぞろいても落ち着かないだろうと、
感謝の言葉を伝え、お土産を持って3人で部屋から出て行く。
「……食べてきたの?」
「ごめんなさい」
アメリアの問いに、ユーリオンは素直に謝る。
怒ってはいないようだが、少し呆れている。
「今日はゆっくり寝ているのよ」
「でも、やりたい事が」
「…………」
「わかりました」
アメリアの無言のプレッシャーに負けたユーリオンは、大人しく休む事にした。
ユーリオンの分の食事は不要と伝える為、アメリアも部屋を出て行く。
「主様、大丈夫? 痛い? 苦しい?」
「少し熱っぽいだけだから、大丈夫だよ」
心配で枕元に寄ってきたハクアを撫でて落ち着かせる。
「ハクアになにかできる?」
「ハクア駄目よ、それじゃユーリオンが休めないでしょ!」
「ううぅぅぅ」
「双方落ち着いてください」
大好きなユーリオンの為に何かしたいハクアにニクスが言い聞かせる。
ジャックはユーリオンが休めるよう、ニクスとハクアを落ち着かせる。
「それじゃ、少し眠るね」
目を瞑ったユーリオンから、ハクア達は邪魔しないように離れた。
寝不足か疲労か、ユーリオンはすぐに眠った。




