異世界転生したらオークだった件
side:ヴィルトシュヴァイン
気が付いたら薄暗い暗闇の中にいた。
ここがどこなのか分からないのに、なぜか不安にはならなかった。
むしろ、自分の部屋にいるかのように落ち着く。
いつの間にか黒い光がそばにいた。
周囲は暗いのに、その黒い光は不思議と良く見えた。
「あなたには異世界に転生してもらうわ」
少女のように甘い声が、眠いのか気怠げに話しかけてきた。
色々と聞かなきゃいけないはずなのに、それを頭の片隅に追いやってしまう。
俺はラノベやアニメが好きなので、ついに俺の時代が来たかと舞い上がる。
「喜んで! チートはもらえるんですよね!?」
「……う~ん、内容に寄るけどぉ、2つくらいならぁ?」
2つか……多いのか少ないのか分からん。
だが、自分で選べるなら良いか。
何が必要だ?
敵を倒す武器か、身を守れる鎧か、いや最も大事な事はモテる事だ。
どれだけ強くてもモテなければ意味が無い。
逆に言えば、モテさえすれば勝てる。
ふと、思い出す。
とあるラノベの主人公が女の子にモテたいと願った結果、
ゴブリンやオーク、ゴリラみたいなものまで、全ての種族に狙われて悲惨な目に遭った事を。
「自分と同じ種族限定でモテたいです!」
「同種限定の魅了ね、わかったわぁ。あとは?」
後必要なものは金を稼ぐ手段か?
よくある異世界ものだと、紙や砂糖なんかを作って稼いでいる。
だが、普通に生活してきて、そんな知識が必要になる事なんか無かった。
知識があれば戦って危険な目に遭わなくても、金を稼いで生きていける。
スマホがあれば困ったらゴーゴル先生や、ヤッホー知恵袋に聞けばいい。
「スマホを持って行く事はできますか?」
「すまほぉ?」
「……駄目……ですか?」
「……………」
無言なので、別のものを考え始めると、黒い光の隣にスマホが現れる。
その浮いているスマホは見慣れた機種で、おそらく俺の物だ。
「データを全部消すなら良いわよぉ」
「…………」
あの中には、俺の好きな絵師が描いた画像が沢山入っている。
そのコレクションが全て消えるだと……。
……しかし、スマホを持って行く為なら泣く泣く耐えよう。
「それで構いません」
「もういい?」
「あ、スマホは充電がきれず、盗難防止に亜空間とかに仕舞えたりはできますか?」
「……んー、なら魔力で充電可能、貴方の意思で亜空間に出し入れ可能にしとくわ」
「ありがとうございます!」
「それじゃ、送るわね」
黒い光は彼の願いを可能な限り叶えた。
ただ、彼は自分が次も人間になると信じて疑っていなかった。
聞かれれば、答えられたかもしれないのに。
むしろ、最初に転生先を確認していれば、魅了なんて望まなかっただろう。




