オークに転生した者との交差2
「………なんて?」
ユーリオンはオークの言葉は聞き取れたが、意味が分からなかった。
内容がごちゃごちゃしていた為、混乱する。
「お前も〝転生者〟なんだろ?」
「はい……貴方も何ですよね?」
「ああ、お前と同じ元日本人だ」
ユーリオンは先ほどの長文の事は一旦忘れ、同郷者との出会いに嬉しそうな顔をする。
だが対照的に、オークの方は自分と相手との境遇の差に憎々し気な表情を浮かべる。
「どうしてお前はエルフで、俺はオークなんだ?」
この質問にユーリオンが正しく答えるのは不可能だろう。
元は同じ世界出身で、転生した世界も同じだが、魂を拾って転生させた神が違う。
彼がオークなど望んでいなかったように、ユーリオンもまた自らハーフエルフを選んだのではない。
ユーリオンは、オークから漂うただならぬ気配に、作業に使っていた物をストレージにしまう。
「……僕は創造神様に転生させてもらいました」
「黒い光か?」
「いえ、創造神様は白い光でした」
「なんだよそれっ! 始まる前から違ってんのかよ!?」
(黒い光で魔族……彼を転生させたのは魔神様だろうか)
「……なんで俺だけ……なんでお前だけ……」
オークの言葉にユーリオンは答えられない。
仮に何か言ったところで、彼は納得しないだろう。
「……構えろ」
「え?」
「お前を殺す」
「なんで!?」
「正当な理由なんか無い。理不尽で最低なただの八つ当たりだ」
「そんな無茶苦茶な……」
彼は実際にぶっ飛ばすつもりでも、殺すつもりは無かった。
一方的で理不尽な理由による怒りと憎しみだが、本当に最低限の理性は残っていた。
実年齢は知らずとも、見た目が子供なので、やりづらさも感じていたからだ。
「死ねっ!!」
「うわっ」
オークが勢いよく殴ってきたのをユーリオンはギリギリ飛んで躱す。
しかしその結果、海水でずぶ濡れになってしまった。
まだまだ早朝なので、濡れた服に朝の風はかなり寒そうだ。
ユーリオンはこれ以上濡れないようにと、急いで砂浜に戻り距離を取る。
オークは砂浜で勢いが殺されるはずなのに、かなりのスピードでショルダータックルを仕掛ける。
ユーリオンは土壁を作るが、砂の壁は脆すぎて壁の役割を果たせず粉砕されていく。
砂壁や舞い上がる砂を目隠しに、横に逃げようとするが、それは叶わなかった。
猪が目は悪くても鼻が効くように、オークもまた視力より嗅覚が優れていた。
多少は勢いが殺されていたとしても、大人と子供の体格差だ。
ユーリオンが吹っ飛ばされて砂浜に受け止められる。
もしここが柔らかい砂でなければ、更に大ダメージだったかもしれない。
ユーリオンは痛みを堪えつつ、今のうちにと鑑定を使用する。
【名:ヴィルトシュヴァイン】【魔族:オーク】【性:男】【年:14】【レベル:31】
【魔法適正】『光/0』『闇/0』『火/0』『水/0』『土/28』『風/0』『無/35』
【スキル】『身体強化Lv6』『腕力強化Lv.6』『脚力強化Lv.5』『身体硬化Lv.4』
『格闘術Lv4』『剣術Lv.2』『斧術Lv.4』『槌術Lv.4』『土術Lv3』
『毒耐性Lv.6』『麻痺耐性Lv.4』『痛覚耐性Lv.3』『自己再生(中)Lv.3』『算術Lv.5』
【EXスキル】
『記憶継承』『言語理解』『魅了(同種)』『スマートフォン』『憤怒』『嫉妬』
のんびり確認する時間は無いので、ざっとスキルを確認する。
『魅了』は同種となっているので、おそらく大丈夫なはずだ。
謎の『スマートフォン』と『憤怒』を確認したかったが、そんな時間はもらえなかった。
ヴィルトシュヴァインが近づいてきたからだ。
ユーリオンは立ち上がろうとするが、膝が震えて上手く立ち上がれない。
先程の衝撃は、特に足にダメージがいったようだ。
同郷者とはいえ、このまま一方的にやられるわけにもいかない。
ユーリオンは戦う覚悟を決めた。




