街と町
side:ユーリオン
街を守る為の壁が見えてきた。
王都には当然敵わないが、なかなか大きな街だ。
こんなに大きな街を自分が治めるのかと思うと、プレッシャーを感じてしまう。
色々と学んだ前世でも、流石に領地経営については学んではいない。
しかし、任された以上は責任を果たしたいし、領民が安心して暮らせるように頑張ろう。
今の代官は高齢らしいので、いつまでも任せるという訳には行かない。
最初の目標としては領地を安定させ、領民の心に余裕を持たせなければ。
心に余裕があれば、他者に対して寛容になれる。
寛容になれれば、差別や偏見は減るはずだ。
いずれは、信用できる代官を捜して領主の仕事は任せたい。
そして自分は執事として活躍したり、暗躍したりしたい。
門を通り、領主邸に馬車が向かう。
窓から見える光景は、王都とはまるで正反対だった。
街にはまだ傷跡が残っており、復興作業をしている者を見かける。
そうした作業をしている者には子供も多かった。
それは子供のお手伝いなんて可愛らしいものではなく、大人に混じって真剣に働いている。
スラム街とまではいかないが、争いがあった事は察せられる。
前領主は人望が無く、反乱や騎士の裏切りに遭い討たれた。
だけど、そんな前領主の恩恵を受けていた者も少なからずいる。
そんな者達との戦いの跡なのだろうか。
領主邸に着くと、既に使用人が待ち構えており、代官の元へと案内される。
向かうのは僕と母様、それにアコの3人だけだ。
他の皆は別室で待機となる。
案内された部屋の中には、好々爺とした、少しセバスチャンに似た人物が居た。
彼はジェードという名で、セバスチャンの親戚筋らしい。
顔合わせと挨拶を済ませると、長旅の疲れを癒すよう勧められるが、遠慮する。
気遣いはありがたいが、まずはこの街について、知らねばならない。
そうしてジェードから話を聞くのであった。
side:????
この町への滞在を決めたので、まずは泊まる宿を探さなければ。
見つけるのに苦労するかと思ったが、拍子抜けするほどあっさりと見つかった。
魔族でも泊まれるし、料金設定も悪くない。
とりあえず5日にしようと思ったら、7日だと安くなり、更に食事におまけが付くと言われる。
「……この商売上手め」
「まいどあり~♪」
割引やおまけに弱いのは日本人の性だろうか。
まぁいい、具体的な予定が決まっている訳では無い。
先払いなので、料金を支払う。
こちらで使える金の半分が無くなってしまった。
ついでだからと、稼げそうな良い仕事が無いか聞いてみる。
冒険者ギルドに行くのも良いが、こういうのは住人に聞く方が金になる。
評価には繋がらないが、金だけが目的なら間を挟まない分稼ぎやすい。
勧められた仕事は、荷物の運搬作業だった。
船長の所でもやっていたので、問題は無い。
夕方になるまで働き、日給を受け取る。
話に聞いていたより多かったので、確認する。
「お前は他の奴より運んでいたからな、少しだが色を付けておいた」
「……助かる」
「おう! 気が向いたら明日も来てくれ。お前がいると仕事が捗る」
「ああ」
俺は身体が大きく力もあるので、確かに他の者より運んでいた気がする。
種族の差だと思っていたが、頑張りが認められたようだ。
「この辺で異世界人の話を聞いた事はあるか?」
「俺は知らねえなぁ……たまに船乗りが話しているのを聞くが、ヤマトの話くらいだ」
「そうか」
他の者にも聞いてみるが、ヤマトの話しか上がらない。
まぁ、そう簡単には見つからないか。
宿に戻って夕食を食う。
脂ののった焼き魚は美味かったが、米と醤油それに味噌汁が欲しくなる。
港町であるここの住人なら、何か知っているかもと思ったんだが。
まぁ、まだ1日目だしな。
別料金で熱湯の入った桶を買い、濡らした布で身体を拭いてから寝るのだった。




