フェニックス領への道中3
一晩経って朝食も食べ終え、後片付けをしていると、村長が尋ねてきた。
外に出ると、想像していたよりも多くの大豆が用意されていた。
村の共通資産だけでなく、少しでも多くと、村人全員からも集めてくれたそうだ。
料金を支払うと、安心した顔を見せ、その後慌てて表情を取り繕う。
やはり実際にお金を受け取るまでは、不安だったのだろう。
これまでの事を考えれば仕方ない事なので、無礼だとは思わない。
そんな事よりも、大豆の方が大事だ。
これだけあれば、色々と作れそうでワクワクする。
母様達にもまだ、大豆を何に使うのか、何ができるのか教えていない。
結果だけを先に伝えて期待させると、駄目だった時にガッカリさせてしまう。
製法と材料が揃っていても、再現できるかは、やってみないと分からないしね。
昨日の賊達は、先に出発させている。
2、3日は働かせるつもりだったが、僕達がいなくなった後、村人は不安になると思ったからだ。
今後も大豆は育てるようにお願いし、僕達は街に向かって出発した。
side:????
1人のオークが船に乗り、海を渡って魔大陸からこちらの大陸へと来ていた。
オークは群れで行動するので、1人で、それも別の大陸に来るのは珍しい。
魔族であるそのオークは、乗せてくれた船長に礼を言い、船から降りる。
「やっぱり行くのか? お前は力もあるし、船酔いもしない。このまま俺達と」
「悪いな、目的があるんだ」
「……ふぅ、残念だ。この町は俺ら魔族とも交易している。
船乗りは気性は荒くても、気の良い奴が多い。しばらく拠点にすると良い」
「あぁ、色々と世話になった」
「おう」
オークは振り返らず、片手を上げる事を最後の挨拶とし、船から離れていく。
「船乗り…か……それも悪くは無かったかもな……」
あの船長には本当に世話になった。
見た目は極悪人で海賊のようだが、その見た目とは裏腹に面倒見が良く、とても慕われていた。
困らないようにと、こちら側のお金も稼がせてくれた。
俺は自分が自分勝手なクズだと自覚しているが、あの船長には素直に感謝できる。
もしかしたら、こっちに来て直ぐにあの船長に出会えていたら、違った道もあったのかもしれない。
この世界にも良い奴がいる事は分かっているが、俺はこの世界が嫌いだ。
俺をオークなんかに転生させやがった、あの黒い光も絶対に許さない。
この町では魔族だからと嫌悪される事は無く、力があるので仕事には困らない。
転生者は、船長の言う通り、しばらくこの町に滞在する事にした。




