フォレスティア森聖国17
魔法で外に音が漏れないようにされた部屋の中で、2人の人物が話をしていた。
1人は国王であるメトシェラ、もう1人はアメリアだった。
「アメリア、お前の言う通りだったよ」
「……そういう子だもの」
「そうだろうと分かっていても、多分で動けないのが『王』なんだよ」
ユーリオンを第2宝物庫に連れて行った際、メトシェラは1つ試していた。
ユーリオンは選ばなかったが、中には危険な物もあったのだ。
条件はあるが、対象を呪って衰弱させ、殺す魔道具。
高ランクの鑑定でなければ分からず、無色無味無臭な毒物。
あえて危険な物を遠ざけず、選ぶ事が可能な状況を用意していた。
結果としては最上のもので、手に取るどころか、興味も示さなかった。
「それで、あの子は合格?」
「ああ、もちろん。あの子がブロブレム……今はフェニックス領だったか?を治めるなら、
こちらとしても、良き隣人として可能な限りの協力をしていこう」
メトシェラはユーリオンに対し、どこまで関係を深めるか決めた。
幼くはあるが、頼りないという事は無く、今後にも期待できると判断した。
「あの子に『神聖樹』の事は話しているのかい?」
「……いいえ、話していないわ」
「この国で暮らすなら、いずれ教えても良いが、外で暮らすなら知らなくてもいいか」
「ええ」
「最後に1つ聞いても良いかい?」
「なに?」
メトシェラは、あえて答えが分かっている質問をする事にした。
もちろん意地悪で言うのではなく、愛する娘の口から聞きたかったからだ。
「私が国益の為、ユーリオンを利用したいと言ったらどうする?」
「私は、グランファーレルでも、フォレスティアでもなく、あの子の味方をするわ」
「……ああ、そうしてあげなさい」
「今のは本気じゃ無かったから良いけど、本気なら怒るわよ」
「少なくとも、一方的に搾取するような真似はしないさ。
アメリアだけでなく、ユーリオンにも嫌われたくは無いからね」
王として国を最優先に考えるメトシェラではあったが、家族としての情は当然ある。
アメリアが愛する子を得たと言うなら、少しはアメリアに対する罪悪感も薄れる。
許されたいとは思っていないし、許されるべきでもない。
しかし父としては、愛する者と結ばれてほしかったという気持ちがあるのだ。
アメリアが怒っても怨んでもいないと分かってはいるが、それでも罪悪感は消えない。
「……私は、今幸せよ」
「………ありがとう……ありがとう……」
メトシェラの雰囲気から、何かを察したアメリアが、正直な気持ちを伝える。
明日、アメリアやユーリオン達はフォレスティアを発つ。
エルフにとっては短い時間と言えるかもしれないが、それでもまたしばらく会えないのだ。
父と娘、2人は親子の時間を過ごした。




