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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第7章 フォレスティア森聖国編
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フォレスティア森聖国6



 リリーが泣きながら、部屋を出て行ってしまった。

 何もしていない僕が、ぶっ飛ばされた事は腑に落ちないが、心配である。


「アコ、追わなくていいの?」 

「お腹が空いたら、おやつか夕飯の時間までには帰ってきますよ」

「………」


 そんなペット感覚で良いのだろうか………。

 

「王女なんだし、1人にしては危険では?」

「森の中心部にいる限りは、モンスターも滅多に来ないですし、境目には常に見張りもいます。

 中心部から外側に行くほど危険ですが、リリー様もそれは分かっているので大丈夫でしょう」


 リリーの父である伯父様も、あまり心配していないのは、そういうことか。

 だとしても、幼い女の子が泣いていたのだ。

 

 身体的に大丈夫でも、精神的には傷ついている。

 放っておいて良いはずがない。

 

「気になるので、捜してきます」

「ユーリオン……娘の事を気に入ってくれたのか!!」


 ………伯父様が満面の笑みを浮かべて嬉しそうにする。

 いや、気になるって、そういう意味じゃありませんから。


「いやぁ、あの娘の将来が少し不安だったが、君が貰ってくれるなら大歓迎だよ」

「駄目よ、お兄様。あんな暴力的な娘を嫁にして、ユーリオンに変な癖がついたらどうするの」


 普通、父親とは娘に男ができるのを嫌がるものでは無いだろうか?

 いやそれより、母様がズレた心配をしている事が気になる。

 僕は女の子にぶたれて喜ぶ趣味はありません!!


「待ってくれアメリア。嫁に行っては王を継ぐ者がいなくなるから、婿に来て欲しい」


 伯父様も論点がズレてきている。


「ユーリオンも領主となるから、婿には行けないわ」


 話が長くなりそうなので、もう捜しに行く事にする。

 土地勘も無いし、1人で行動中に絡まれると困るので、ピエリスを連れて行こう。


 アコを連れて行くのが1番なのだが、幸せそうに母様を見ているので、難しそうだ。


 皆がいる部屋に来たが、ピエリスがいなかった。


「ピエリスは?」

「兄さんなら、旧友に声をかけられて、ちょっと席を外しています。どうかしましたか?」


 僕が事情を話すと、アイリスが一緒に来てくれる事になった。

 エレナ達には、引き続き留守番を頼む。

 戻ってきた時にピエリスへの説明も必要だしね。


 すれ違う人にリリーを見なかったか、尋ねながら移動する。

 この森でリリーを知らないエルフはいない為、簡単に向かった方向が分かる。


 順調だったリリーの捜索も途中で行き詰った。

 エルフの住む中央と、その外側との境目の辺りで目撃証言が途絶えたのだ。

 見張りのエルフはリリーを見ていないと言う。


 もう戻っている可能性もあるが、念の為、スキルで人の気配を探る。

 誰かまでは不明だが、外側で微かに人の気配を感じる。


 見張りのエルフは、今日はアコしか通っていないと言うので、リリーの可能性は高い。

 許可を貰い、通ろうとした所で、なぜかクッキーを渡される。

 

 お礼を言って森に入るが、おやつだろうか?

 僕が疑問に思っていると、アイリスが教えてくれる。


「精霊は甘い物が大好きなので、もし迷ったら、それを渡して案内してもらうんですよ。

 まあ、時には甘い物目当てで、わざと迷わす精霊もいるので微妙に感謝しづらいのですが」


 迷った時の保険という事か。

 特にお腹も空いていないので、クッキーはストレージに入れておく。


 木が生い茂っているので、時間的には昼間でも、少し薄暗い。

 そんな中、時々蛍の光みたいのがふわふわ飛んでいるのが見える。


「ユーリオン様、アレが精霊ですよ」


 この小さな光が精霊なのか。

 その幻想的な光景には、目的を忘れて魅入ってしまう。

 滞在中に、今は留守番しているエレナ達も連れて、もう一度見に来よう。


 ついボーっとしていると、いくつかの光が寄って来る。


(だれ? だれ? だれ?)

(知らない 知らない 知らない)

(侵入者? あやしい? てき?)

(僕は君たちの敵じゃないよ。女の子を捜しているんだ)

(言葉分かる? 凄い 凄い)


 精霊たちと会話できそうなので、リリーの特徴を教えると、案内してくれる事になった。

 茂みをかき分けながら進むと、木を背にして休んでいるリリーがいた。


 こちらに気づくと、残念そうな表情から睨みつける表情に変わる。


「何しに来たのよ」

「アコじゃなくてごめんね」

「………っ!」

「心配だっから捜しに来たんだ」

「余計なお世話よ! 私は精霊たちと遊んでるの、放っておいてよ……」


 最後の方は淋しそうに、顔を伏せながら言う。

 無事は確認できたが、このまま放置はできない。


(見つけた 見つけた 見つけた)

(良かった 良かった 良かった)

(うん、ありがとう。そうだ、お礼をしないとね)

(お礼 お礼 お礼)

(甘い物 甘い物 甘い物)


 ストレージからクッキーと、少し残っていたアイスクリームを取り出す。

 食べやすいようにクッキーは細かくして、アイスクリームにかける。


 精霊たちは小さな光から、10㎝くらいの蝶の翅が生えた人に姿を変える。

 クッキーにアイスクリームをつけながら食べると、とても喜んでくれた。


(冷たい 甘い 美味しい)

(知らない 分からない 不思議)

(美味 美味 美味)


 興味を惹かれたのか、リリーの側にいた精霊も集まる。

 喧嘩になる事は無く、案内してくれた精霊は、仲間にも分けてあげる。


「あ、精霊まで………」


 そういうつもりでアイスクリームを出した訳では無い。

 でも、結果的にリリーから精霊まで取り上げてしまった。

 つい謝ってしまいそうになるが、直前でそれは違うと踏みとどまる。


 ストレージから最後のアイスクリームとスプーンを取り出し、リリーに渡す。 


「冷たくて、甘くて、美味しいよ」 

「……い、いらないわよ!」


 視線や態度から興味がある事は丸わかりだが、意地を張ってしまっている。

 こういう時の一手は決まっている。


「本当に良いの? これが最後の1つだし、材料的な問題で簡単には作れないよ」

「……うっ……」

「早く食べないと、溶けちゃって美味しく食べられなくなるよ?」

「………………」

「あっちのアイスクリームを食べ終えたら、こっちのも食べられちゃうかもよ」

「分かったわよ! 食べるわ、食べればいいんでしょ!?」


 奪い取るかのように受け取り、アイスクリームを食べ始める。

 

「美味しっ!」


 美味しそうな顔を見られるのが悔しいのか、僕に背を向けてしまう。

 アイリスと顔を見合わせると、言葉にしなくても、お互いの言いたい事が分かってしまう。


 食べ終わると姿勢を戻し、スプーンを乗せた器を差し出してくる。

 

「ん」 

「………」

「んんっ!」 


 お礼の言葉は求めて無かったが、せめて『ごちそうさま』くらいは欲しかったな。

 諦めて器を回収すると、ストレージにしまっておく。


「そろそろ帰りましょう?」

「………うん……」

 

 リリーに右手を差し出すと、今度は素直に手を取り立ち上がる。

 アイスクリームを食べた事で、少しは頭が冷えたのかもしれない。

 だが、ここでアイリスが余計な事言う。


「……これは落ちましたね」

「り、リリーは、そんなに安くてチョロい女じゃないもん!!」


 リリーは、顔を真っ赤にさせてプルプルと震える。

 ……大丈夫だ、右手は繋いでいるので、渾身の右ストレートは来ない!

 

 僕は左頬の痛みを思い出すと、繋いだ右手に力を込めてしまう。

 今震えているのが、リリーなのか僕なのか、僕自身にも分からない。


 バチーンっと大きな音が聞こえてくる。

 右ストレートは飛んでこなかったが、右頬を思いっきり平手打ちされた。


「リリー帰る!!」 


 走り去っていく彼女を追いかける気力は、僕には残っていなかった。

 僕は後世に以下の言葉を残したいと思う。 


【汝、左頬を殴られたなら、右頬をぶたれる覚悟を持ちなさい】



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― 新着の感想 ―
[良い点] 女の子に凄く優しい主人公(遠い目) 刺されないといいなぁwww
[一言] オラからこの言葉を暴力女に! …人を殴っていいのは、殴られる覚悟をもった奴だけだぞ…オメェいつか痛い目に合うぞ!
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