フォレスティア森聖国4
「先ほどは、お見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ございません」
アコニートゥムさんが鼻血を拭きながら、頭を丁寧に下げて謝罪する。
……頭を下げたせいか、また鼻血が垂れてきている。
「いえ、気にしていないので、頭を上げてください」
「あぁ、お優しい所も、お嬢様に似ていらっしゃる」
「アコニートゥムさんは、母様と親しいんですね」
「ユーリオン様、私に敬称は不要です。宜しければ、アコとお呼びください」
「……アコ」
やや気後れしつつも、そう呼ぶと、満面の笑みを浮かべながら、また鼻血を出している。
精神的にも、肉体的にも大丈夫だろうか?
「お嬢様が子を生んだと聞いた時には、絶対に一族郎党全て皆殺しにすると誓っていましたが、
まさか、こんなにも愛らしい子供だったとは。今は、己の浅慮を恥じるばかりです」
この人、時々発言が怖すぎる。
悪い人では無いだろうが、ヤバい人かもしれない。
「………今は、考えが変わっているんですよね」
「はい、もちろんです。ユーリオン様以外の一族郎党を皆殺しにします」
「…………」
瞳をキラキラさせて元気に言うが、ほとんど何も変わっていない。
母様と親しく、母様を大好きなのに、何故一緒に来なかったのか予想できた。
危険すぎて、連れて来れなかったのだろう。
もし、彼女をグランファーレル王国に連れて来ていたとしよう。
父ユリウスや特にアリアノールを殺しに向かう可能性が高すぎる。
平和の為の結婚なのに、それでは即開戦だ。
「あの男最大の罪は、己の身の程を弁えず、お嬢様を妻に迎えた事ですが、
最大の功績は、己の特徴をユーリオン様に残さなかった事ですね」
父よ、散々な言われようだぞ。
「……あの人に似ている所もあるのよ」
「切り落としましょう」
「なんて!?」
よほど父の存在が許せないようだ。
恋愛結婚ならまだしも、政略結婚で大好きな母様を連れてかれたのだ。
彼女の中では、父は不俱戴天の敵なのだろう。
「傷つけたら許さないわよ」
「あぁ、すみませんお嬢様。つい反射的に言ってしまっただけなんです」
「もう……そういえば、アコは採取に行ったって聞いていたのだけれど」
「はい、確かにちょっと遠くの方へ、採取に行かされていました。
でも、なんとなくお嬢様の気配を感じたので、急いで終わらせて戻ってきました」
遠くというのが、どのくらいの距離なのかは不明だ。
それでも、直感で母様の元へ来るのだから、もうそういうスキルなんじゃ?
「アコにお願いがあるのだけれど」
「なんなりと、おっしゃってください」
「一緒にグランファーレル王国へ来て欲しいの」
「今度は私も連れていってもらえるのですか?」
「絶対に問題を起こさないと、誓ってくれるならだけど」
「お任せください。なにかあっても証拠は残しません」
「………そう言う事じゃないの……やっぱり、今回もお留守番かしら」
「そんなお嬢様!? もう離れ離れは嫌です。私も連れて行ってください!!」
確かに優秀な護衛は多い方が良いけど、その護衛が問題を起こすのでは意味が無い。
この様子だと、グランファーレル王国に連れて行ったら、問題を起こしそうだなぁ。
お爺様とお婆様が静かだなと思ったら、2人はポーカーで遊んでいた。
……やはり、国王ともなると、大物なんだなと思いました。




