フォレスティア森聖国1
「ユーリオン様、あれがフォレスティアです」
「おぉ、本当に森って感じだね」
フォレスティア森聖国と思われる森が見えてきた。
そろそろ見えてくると言われていたので、僕も御者台に座らせてもらっていた。
「馬車のまま森に入れるの?」
「普通は入れませんね。木が邪魔して、馬車での移動は厳しいです」
「何か秘密があるんだね」
「すぐに分かりますよ」
真面目なピエリスにしては珍しく、悪戯を思いついた子供のような顔をする。
ピエリスも数年ぶりの帰省で浮かれているのかな。
ピエリスやアイリスにとっても、良い帰省になればいいな。
それから少しして、森の前まで来た。
馬車でも無理に通れなくは無いが、道になっていないので、危ない。
ピエリスが御者台から降りて木に近づく。
懐から木製の何かを取り出し、それを掲げながら木に話しかける。
「我々はフォレスティアの関係者だ。通してもらいたい」
すると、まるで木が道を作るように左右に離れていく。
その不思議な光景に圧倒される。
エルフの秘術だろうか?
ピエリスが御者台に戻ってくる。
答えを教えてもらおうと口を開く前に、ピエリスが教えてくれた。
「あれは普通の木ではなく、トレントなんです」
「え、モンスターなの!?」
「はい、フォレスティア森聖国に住むのは、エルフだけではありません。
精霊や植物系のモンスターなんかとも共生しているんです」
なるほど。
普段はトレント達が道を隠しているのか。
道が開かれると、馬車で通って行く。
木製だったし、あれが鍵で大丈夫なんだろうか?
「さっきの通行証みたいなのを真似されたり、奪われたりしたら危険なんじゃ?」
「アレは特殊な素材で出来ているので、そう簡単には複製できません。
仮に奪われたとしても、エルフ以外が見せても効果はありません」
木製だし、簡単に複製できるようでは鍵にはならないか。
「ちなみに何らかの方法で、エルフに使わせれば、通る事はできます。
ですが、その場合、次は精霊たちが迷わせる仕組みになっています」
トレント達が道を隠し、そこを通れたとしても、今度は精霊が迷わす。
これなら簡単には突破できないだろう。
先程、薄い霧の中を通る事があったが、あそこで精霊が迷わすのかな。
僕達は精霊に迷わせられる事も無く、通してもらえた。
目的の場所へ辿り着いたようで、入る前に一度馬車が停まる。
そこには想像していた光景は無く、少しだけ残念だ。
木の上や中に家は無く、普通のちょっとした街に見える。
ピエリスは僕の表情から察したようだ。
「もしかして、エルフは木に住んでるとか思ってました?」
「…………少しだけ」
「基本的に人を通さないので、そう勘違いする人は多いんです。
火や水を使わなきゃ生活できないのに、流石に木では生活できませんよ」
言われてみれば、納得できる理由だ。
いくらファンタジー世界でも、そこには実際に人が暮らしているのだ。
何百年と生きるのに、わざわざ不便な生活をする理由は無い。
「ユーリオン様、混乱を避けたいので、中へ戻ってもらっても良いですか?」
「うん」
僕が中へ入ると、交代するようにアイリスが出てくる。
ピエリスとアイリスの2人が御者台に居れば、警戒させずに済むだろう。
ここは故郷なんだし、2人を知るものも多いはずだ。
馬車の中から外の様子を窺っていると、時々2人は声をかけられる。
停まって話をする事は無いが、片手をあげたり、軽く挨拶は返しているようだ。
そして王族である母様に対してだろうが、皆が馬車に向かい深々と頭を下げる。
髪の色は緑や金が多く、母様のような白銀は見当たらない。
ゆっくりと移動していた馬車が停まる。
フォレスティア森聖国の宮廷に辿り着いたようだ。
グランファーレル王国の王城に比べると、だいぶ小さな城だった。
エルフはヒューマンに比べれば人数が少ない。
だからエルフの城が劣っているという事ではなく、大きな城が不要という事だろう。
どこかの部屋で1度待たされると思っていたのだが、そのまま謁見の間まで案内される。
持ち物検査どころか、武器の回収も行われない。
母様も一緒だし、信用されているのだろうか。
そして謁見の間の扉が開かれた。




