フォレスティアへの道中2
「フォレスティアまで、後どれくらいかかりそう?」
「このペースなら、明日の昼には着くと思います」
御者台に座るアイリスが答えてくれる。
そっか、明日には着くのか。
エルフのイメージだと、やはり木の上や中に住んでいたりするのだろうか。
お爺様やお婆様にも初顔合わせとなるので、少しだけ緊張もする。
「そろそろ休憩にしましょうか」
「そうだね」
見晴らしの良い場所まで行くと、馬車を止める。
シートを広げて座る場所を確保し、お茶の用意をする。
まったりしていると、茂みの方でガサガサと音がし、何かが寄ってくる。
それは立ち上がると身長60~70㎝くらいで、黒の猫っぽいモンスターだった。
僕は警戒するが、ピエリスもアイリスも全く動かない。
「ユーリオン様、あれは魔獣ですけど、人を襲わないので大丈夫ですよ」
「『シコニャン』は警戒心が強く、滅多に人に近づかないのに珍しいわね」
「わぁ、可愛いですね」
ピエリスとアイリスが大丈夫と言うなら安心かな。
こちらの様子を窺っているが、それ以上は近づいてこない。
いつでも逃げ出せる距離はキープしているので、匂いに釣られて来たのかな。
しかし、エレナは可愛いと言ったが、可愛いだろうか?
可愛いと言われれば可愛い気もしなくは無いが……微妙だ。
いわゆるブサ可愛いというやつだろうか。
僕はクッキーを1枚、シコニャンの近くに投げてみる。
最初はビクッとして茂みに隠れるが、攻撃ではない事に気づくと、茂みから顔だけ出す。
また立ち上がると、二足歩行のまま恐る恐るクッキーに近づく。
口で拾うのかと思ったら、器用に両方の前足を使って拾い、匂いを確かめる。
毒が無いと判断したのか、少しずつ食べ始める。
こうして餌をあげてみると、可愛い気がしてきた。
クッキーを食べ終えると、こちらを見ながら鳴き声をあげる。
1枚では満足できず、おかわりを要求しているのかな。
エレナがソワソワしているので、あげても良いよと許可すると、嬉しそうにする。
クッキーを持ったエレナが近づくと、近づいた分だけ離れられる。
クッキーは欲しいが、近寄るのは駄目らしい。
エレナは仕方なく、クッキーをシコニャンの方に投げる。
シコニャンはクッキーを拾って咥えると、そのまま逃げてしまった。
エレナは撫でたかったのか、少し残念そうな表情だ。
その後は他に何かが寄って来る事も無く、のんびりと休む。
僕はあまり離れすぎない事を条件に、ニクスと一緒に皆から離れる。
さっきのシコニャンと交渉し、少しだけでも撫でさせてもらう為だ。
ニクスに空から捜してもらうと、すぐに見つけてくれた。
交渉する為、言語理解のスキルをONにする。
驚かさないように、気配を消しながら移動する。
見える距離まで近づくと、シコニャンは2匹いた。
2匹は重なっていて、交尾していたようだ。
タイミングが良かったのか、悪かったのか、ちょうど終わったようだ。
声をかけようとしたタイミングで、2匹の会話が聞こえてくる。
「ねぇ、したわけだし、家族に紹介しても良い?」
「………」
「家族は早いかな。なら、友達に紹介するくらいは良いよね」
「…………」
「ねぇってば!」
「うるせぇなぁ、1回交尾したくらいで彼女面すんな!!」
「……うぅ……酷い……」
……シコニャンがジゴニャンになっていた……。
僕は気配を消したまま、声をかけず、その場を離れる。
「あれ、シコニャンは良いの?」
「ごめんねニクス、せっかく捜してもらったのに」
「それは良いんだけど、どうしたの?」
「……アレは、エレナに触れさせたくないや」
皆の所にニクスと一緒に戻る。
旅は楽しいものだと思っていたけど、今の所、碌な出会いが無いな。
旅は良くも悪くも、人生経験を豊かにするものだ。
ユーリオンは、また一つ大人になっていくのであった。




