表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第6章 2度目の炎のダンジョン
58/216

2度目の炎のダンジョン6

 


 21階層に転移すると、ここからは依頼達成の為、「フレイムスパイダー」を捜す必要がある。

 別れて捜す方が効率は良いが、安全性が下がるのは好ましくない。


 2人を休ませている間にニクスは空から、僕は高所から遠視の魔眼で捜す。

 なかなかターゲットが見つからない中、モンスターの戦いが目に止まる。


 2mはありそうな赤黒いムカデと、大きな斧を振るう騎士が戦っていた。

 騎士の方は20階層のフロアボスと同じ、リビングアーマー系の魔物かな。


 ムカデは巻き付いたり、酸で鎧の一部を溶かしたりと奮闘するが、騎士には勝てなかった。

 見ごたえのある戦いだったが、あまり、のんびりともしていられない。

 

 移動し、別の所を捜そうと思ったのだが、騎士の動きが気になる。

 何故か騎士が、こちらに向けて両手を振っている。

 

「……え、気づかれた?」


 離れた位置から見ていただけなのに、どうして気づかれたのだろう。

 いや、それよりも、何故フレンドリーに手を振っているのか。


 ……僕の方からは見えないが、実は僕ではない誰かに手を振っているのではないか?

 試しに両手を振り返してみると、今度は招くような動きに変わる。


 意味は分からないが、敵意は感じない。

 了承の意として両手で〇を作ると、騎士の方へ行く事にする。


 念話のスキルでニクスを呼び戻し、慎重に近づく。

 敵意は感じなかったが、罠の可能性だって当然ある。

 だが、こちらの警戒を解くかのように、騎士は武器である斧とは距離を取っていた。


 少なくとも争う気は無さそうなので、とりあえず話してみよう。

 スキルをONに切り替え、目の前の騎士と話せるようにする。


「あのー、どういったご用件でしょうか?」

「お久しぶりです。あの後、無事に帰還できたようですね」

「久しぶり?」


 以前にどこかで会った事があるという事だろうか?

 だが、前回のダンジョンでリビングアーマー系と会った記憶が無い。


「……すみません、僕の事を知っているようですが、リビングアーマーに系に覚えがなくて」

「あぁ、前回は別の魔物だったので」

「別の魔物?」

「はい、私は以前貴方に倒された魔物です」

「…………」


 ちょっとしたホラーだった。

 前に倒した魔物が、別の魔物になって目の前に現れた。


「あ、誤解はしないでくださいね。別に怨みがあるとかじゃないんで」

「あなたは……」

「ヒントはそうですねぇ……鎌なんてどうでしょうか」

「ジャック・オー・ランタン!?」

「正解です。ヒントが簡単すぎましたね」


 まさかの40階層のフロアボスとして戦った「ジャック・オー・ランタン」だった。

 

「どうしてここに?」

「あの後、Lv.1のレイスになったので、1階層から自身を鍛えながら、ここまで来たのです」

「レイス? リビングアーマー系じゃ無かったのか」

「はい、この鎧は憑依のスキルで操っているだけです」


 レイスは確か死霊系の魔物だったはずだ。

 実体が無いから、鎧を利用しているのか。


「次は私から質問しても良いですか?」

「はい、どうぞ」

「なぜ、再びダンジョンへ?」

「仲間のレベル上げや素材収集、ついでに依頼も受けています」

「普通ならトラウマになっても、おかしくないのに、肝が据わっていらっしゃる」


 確かに普通なら、自分が殺されかけた場所になど、来たがらないものだろう。

 でも、悪いのはダンジョンではなく、そのシステムを悪用する人間だ。

 だから、ダンジョンに対して悪い印象は特に無い。


「まだ、最初の質問に答えてませんでしたね。実は1つお願いがあるのです」

「お願いですか?」

「私を仲間に加えては頂けないでしょうか?」

「仲間に?……理由を聞いても良いですか?」

「はい、貴方の事は出会った時から気に入っており、今後にも興味があります。

 なので、仲間として側に仕える事で、貴方を助けつつ見守りたいのです」


 彼とは1度戦っただけだし、お互いに人となりを知るほど、長い時間も共有していない。

 でも、短い会話の中でも彼の誠実さは伝わって来ていたし、借りもある。


「分かりました。仲間がいるので、紹介します」

「驚くほど簡単に了承してくれるのですね」

「ええ、まあ」

「以前にも言いましたが、会話できるからといって、簡単に信用するのは危険ですよ」

「僕も言ったはずですよ。貴方は良い人だと」

「フハハハ! やはり、貴方は面白い! 以前より弱くなりましたが、必ずお役に立ちましょう!」


 仲間になったならば、呼ぶ為の名前が必要だ。

 彼は流暢に喋れるし、もしかしたら名前もあるのかな。


「貴方の事を何と呼べば?」

「魔物に個体名はあっても、固有名はありませんよ」

「……なら、ジャックって呼んでも良いかな?」

「はい、今この瞬間から私は『ジャック』と名乗らせて頂きます」

「うん、よろしくねジャック」


 この時、ジャックが気に入っているようなので、ニクスは何も言わなかった。

 だが内心では、悪くは無いが、安直だなぁと思っていた。


「ジャックって、ダンジョンから出られるの?」


 ダンジョンのモンスターは、下りる事はできても、上がる事ができない。

 それができるなら、常にダンジョンから地上へモンスターが溢れてきてしまう。


 ダンジョンからモンスターが溢れる事も、あるにはある。

 だが、それは特定の条件を満たした場合のみなので、普通は出られない。


「モンスターとは、お互いの合意があれば、主従契約を結べるのよ」

「はい、その通りです。契約したモンスターならば、主と一緒に行動できます」

「なるほど、それなら大丈夫そうだね」


 ニクスが教えてくれて、ジャックが補足してくれる。

 やり方を聞くと、さっそく契約を済ませる事にする。 


 ジャックが鎧から出てくると、半透明で黒っぽい姿となる。

 僕は指先をナイフで切り、自らの血をジャックに与える。

 

 複雑な儀式や呪文も不要だった。

 自らの意思で血を与え、自らの意思で血を貰うだけで契約は完了する。


 契約は無事に完了したので、エレナ達の元へ戻る。

 移動しながら、「フレイムスパイダー」の居場所について聞いてみる。


「フレイムスパイダーなら、心当たりがありますね」

「良かった。なかなか見つけられなくて」

「早速お役に立てそうで、私も嬉しいですよ」


 エレナ達に合流すると、まずはジャックを紹介する。

 と言っても、普通はモンスターと会話できない。

 なので、僕が説明し、ジャックが鎧姿でお辞儀をしたりし、コミュニケーションを取る。


「ユーリオン様は色々拾ってきますが……今度はレイスですか」

「ジャックは魔物だけど、信用できるから大丈夫」

「まぁ、契約済みでユーリオン様が言うなら、信じますよ」


 ピエリスもエレナも休めたようなので、ジャックに案内をしてもらう。

 案内された先には、大岩が多数存在するだけで、フレイムスパイダーは見当たらない。


 スキルのおかげで、付近にモンスターの反応がある事は分かる。

 まさか、フレイムスパイダーは地中にいるのだろうか。


 ジャックが大岩に向かって火の魔法を放つと、大岩から何かが飛び出してきた。

 鑑定すると、それは捜していたフレイムスパイダーだった。



【種:フレイムスパイダー】【レベル:19】

【魔法適正】『光/0』『闇/0』『火/30』『水/0』『土/0』『風/0』『無/20』

【スキル】『火術Lv.4』『熱牙Lv.4』『毒牙Lv.3』『麻痺牙Lv.3』『粘糸Lv.5』『擬態Lv.4』



「なるほど、捜しても見つからなかったのは、擬態していたからか」

「はい、擬態のスキルで自らを隠し、近づいた者を襲うのです」


 スキルには3つの反応があったので、周囲に水の魔法を放つと、追加で2匹出てきた。 

 依頼の内容は、傷が少なく状態の良いものを1つだったので、僕が担当しよう。


「エレナ、ハクア、ニクスで1匹。ピエリス、ジャックで1匹。

 僕が依頼用の物を1匹倒すから、皆は依頼の事は気にせず戦って」 


 指示を出すと、返事と共にそれぞれで戦闘が始まる。

 

 フレイムスパイダーから放たれた火の玉を避けながら、どうやって倒すか考える。

 外傷を減らすなら、水魔法で溺死させるのが1番だろう。

 しかし、動き回る相手を水魔法で捕らえられるほど、僕は水魔法を使えない。

 

 発想を変えよう。

 動き回る相手を追うのではなく、相手を動けなくしてから溺死させればいい。


 魔糸で捕らえるが、やはり燃やされるか、切断されるかで逃げられてしまう。

 鍛錬は続けているが、いまだ熱耐性と硬度の2つを魔糸に付与できていない。


 残念ながら魔糸は駄目だったので、第2プランに移る。

 僕はソウルイーターを振り翳し、フレイムスパイダーを追い詰める。

 

 そして、フレイムスパイダーが避けた先に結界を用意し、閉じ込める。

 結界の物理強度は高くないので、急いで結界の中を水で満たす。

 フレイムスパイダーは暴れるが、水中の中では結界を壊すほどの力は出ない。


 数分後、動かなくなったので、鑑定し、死亡を確認する。


「これなら文句無しでしょうね」

「ふむ、主殿は、こういう戦い方もできるのですね」


 無事に終わったようで、ピエリスとジャックが合流する。

 後は、エレナ達か。

 

「ゆ、ユーリオン様ぁ、ハクアが」 

「ハクアがどうしたの!?」


 まさか、ハクアが重傷を負ってしまったのかと不安になる。


「は、ハクアが繭になっちゃいました!」

「……は?」


 意味が分からなかったので、まずは冷静になって詳細を聞く。

 戦闘は被害も無く無事に終わったが、その魔石をハクアが食べたら変化が起きたらしい。

 ハクアは手の平に乗るくらいのサイズだったが、今はダチョウの卵サイズの繭になっている。


 ニクスに聞くと、ハクアの進化が始まったらしい。

 繭に包まれるのは、無防備になる自らの身を護る為だそうだ。

 ハクアが無事なようで安心する。


 とりあえず、依頼やレベル上げなど、目的は達成できた。

 予定には無かったが、ジャックという頼りになる仲間も増えた。

 区切りも良いので、ダンジョンから帰還する事にしよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ