2度目の炎のダンジョン4
張り巡らせておいた糸に、何かが引っかかった気配を感じて目覚める。
隣にピエリスが寝ているという事は、3時間以上は眠れたのだろう。
一瞬ピエリスも起こすべきか悩むが、敵を確認してからでも遅くは無い筈。
テントから出ると、エレナに驚かれる。
「ユーリオン様? まだ、寝てらして大丈夫ですよ」
「ちょっと、トイレに行ってくるよ」
「私も護衛に付いて行きます」
「大丈夫だから、寝てるピエリスの側にいてあげて」
「何かあったら、すぐ呼んでくださいね」
「うん」
ダンジョンで危険なのは、寝てる時と用を足している時だ。
なので、近くに誰かいる方が安全を確保できる。
今回は本当に用を足しに行くわけでは無いので、1人で問題ない。
近づかれたら分かるように糸を仕掛けておいたが、失敗だったなと今更気づく。
感知用に糸を仕掛けるくらいなら、接近者を切断する糸を仕掛けておいた方が有意義だ。
後は、落とし穴とかも良いかもしれない。
空中から来るモンスターはどうしようかな。
結界があるので、弱い魔法なら防げるが、物理的強度は高くない。
見張りがいるとはいえ、夜型のモンスターを仲間にできれば、安全性が高まりそうだな。
改善点を考えながら移動していると、こちらに向かっていたモンスターと遭遇する。
出会ったのは、土佐犬くらいの大きさがある、赤茶色のアルマジロだった。
威嚇しているのか、立ち上がると、中々迫力がある。
周囲を確認するが、他にモンスターは居なそうだ。
ストレージからレッドアントの死体を出し、少し下がる。
レッドアントに興味はありそうだが、こちらを警戒し、近づいてこない。
もう少し下がると、二足で立つのを止め、レッドアントを食べ始める。
地球のアルマジロもアリを食べていたので、もしかしたらと思ったのだ。
魔石は回収するが、素材としては不要だった。
なので、後からまとめて焼却しようと残していた。
大食いなのか、1匹食べても満足していないようだ。
近づくと立ち上がるが、攻撃はしてこない。
もう1匹ストレージから出し、また少し下がると、食べ始める。
2匹目だからか、ゆっくり食べているので、その間に鑑定しておく。
【種:ヒートアルマジロ】【レベル:12】
【魔法適正】『光/0』『闇/0』『火/15』『水/0』『土/18』『風/0』『無/20』
【スキル】『火術Lv.2』『土術Lv.3』『硬化Lv.4』
18階層のモンスターにしてはレベルが低く、少し弱い。
防御寄りだから生き残れるけど、攻撃がパッとしないから、餌が取れないのかな。
愛着が湧いてきたし、このまま連れて帰っちゃ駄目かな?
連れて帰るなら、名前を考えないと。
アルマジロ……アル、ジロー……ジローにしようかな。
2匹目は、ほととんど食べないまま鳴き声をあげる。
おかわりを要求しているのでは、なさそうだが、どうしたのだろうか。
何かが近づいてくるのを『気配察知』のスキルが教えてくれる。
どうやら、さっきの鳴き声は、家族か仲間を呼ぶ為のものだったらしい。
ジローが、新たに増えたアルマジロ3匹にレッドアントを食べさせる。
3匹で食べると、あっという間に無くなる。
ストレージから魔石を回収してあるレッドアントを出して与える。
アルマジロ達が食べている間に、残りのレッドアントをストレージから取り出す。
こちらは魔石を回収していないので、急いで魔石を回収する。
レッドアントを残して僕は立ち去ろうとすると、アルマジロ達が鳴き声をあげる。
また、仲間を呼ぶのかなと、振り向くと違っていた。
4匹は立ち上がり、僕に向かって鳴きながら、両方の前足を振っていたのだ。
最初はあれだけ警戒していたのに。
言語理解のスキルを使わなくたって理解できる。
きっと、食事のお礼を言っているのだろう。
僕はアルマジロ達に向かって、同じように両手を振ると、その場を離れた。
「……さよなら、ジロー……元気でね……」
僕は涙を堪えながらテントまで戻る。
「ユーリオン様、遅いから心配しまし……え、泣いているのですか!?」
「……エレナ、ジローと、お別れしてきたんだ……」
「え、ジローって誰ですか?」
「ジローはヒートアルマジロで、家族想いの良い子だったんだ」
「い、意味が分かりません……この短時間でいったい何があったんですか!?」
2度寝する気にはなれなかったので、このままエレナと話す事にする。
ピエリスを起こす時間まで、2人の時間は続いた。
余談だが、急いでいたユーリオンは、レッドアントの魔石を全て回収できてなかった。
レッドアントと、その魔石を食べた事でヒートアルマジロは『酸液』のスキルを覚えた。
18階層において、ヒートアルマジロは弱い部類だった。
硬さはあるが、攻撃手段が乏しい。
動きも遅いので、出会っても面倒なら戦わず、逃げれば良い。
『酸液』という予想外の武器を入手した事で、ヒートアルマジロの評価は変わる。
素早さは変わらないが、冒険者達から恐れられるようになった。
低レベルの酸液では、軽い火傷や装備が汚れる程度だったが、中レベルだと違う。
肌に当たれば軽い火傷では済まないし、せっかくの装備も破損する事だってある。
装備が破損すれば、修復するのにもお金がかかるので、下手をすると赤字になる。
防具の素材として、ヒートアルマジロは偶に狩られていた。
だが、これ以降、報酬が割に合わないと狙われなくなった。




