懐かしき邂逅
side:ユーリオン
……ここは……どこだろうか?
周囲を見渡すと、まるで雲の上に立っているような不思議な光景が広がっている。
頭がボーっとするし、身体の感覚も曖昧だ。
「オー勇者よ、死んでしまうとは情けない」
「え」
……勇者?
……死んだ?
……誰が……僕が!?
「ち、ちょっと、待ってください!」
必死に直前の記憶を思い出す。
エレナにプレゼントを渡して……母様達にお酒を飲ませて……。
……それで……酔っぱらった母様にキスされたんだ……。
思い出してしまうと、顔が熱くなる。
男女の意味合いではなく、母から子へのスキンシップだとしても、さすがに照れる。
って、照れてる場合じゃない!
……え……死因は急性アルコール中毒?
……まさか、こんなに早く死んでしまうなんて……。
ボーっとしていた頭が、段々と冷静になってくる。
よくよく思い出すと、最初の声には聞き覚えがあった。
「……僕を転生させてくれた神様ですか?」
「そうよ。久しぶりね」
「お久しぶりです」
僕は、いつの間にか近くで浮かんでいる光の玉に頭を下げる。
また会って、お礼と感謝の言葉を告げたいとは思っていたが、こんな形の再会となるなんて。
「……また死んでしまったんですね」
「え、死んで無いわよ?」
「……え」
「最初のあれは、ゴッドジョークよ」
「…………」
これほどまでに笑えないジョークは聞いた事が無い。
なんかもう、お礼も感謝も言う気が失せてきた。
後、女神なので、ゴッデスではと思うが、ツッコむ気力も出ない。
「……さすがに、そのジョークは笑えないですよ」
「ごめんね、久しぶりだし、神っぽい事が言いたくて」
「あのセリフを言うのは、神じゃなくて王様ですよ」
「そうなんだ、忘れなかったら覚えておくね」
……久しぶりすぎて、こんな人だったかなと疑問に思う。
何かあれば、夢の中で連絡すると言っていた事を思い出す。
「何かあったんですか?」
「そうなのよ、貴方トランプ作ったでしょ」
え、トランプ?
確かに作ったが、連絡してくるほど駄目だったのだろうか。
「はい、作りましたけど」
「それが欲しいのよ!」
「え?」
「祭壇を作って、トランプをお供えしてちょうだい!」
まさか、トランプが欲しくて連絡してくるなんて、誰が予想できただろうか。
というか、神様なら自分で用意できるのでは?
「はい、それは構わないのですが、神様なら、ご自分で作れるのでは?」
「どんな影響が出るか分からないから、もう自分たちで何かを創る事は禁じたの」
「玩具を創るくらいでも、駄目なんですか?」
「神が神に定めたルールだからね。自分達でも簡単には破れないわ。
でもね、玩具とかの例外は作るべきだったと、後悔しているのよ」
なるほど、ルールがあるから、欲しい物でも自分達では用意できないのか。
玩具を欲しがるという事は、神様って遊ぶのか。
「あ、神のくせに遊んでるとか思ってる?」
「いえ、そこまでは」
「神といっても、常にやる事があるわけじゃないのよ?
けっこう神同士で集まって話したり、飲み食いしたり、遊ぶのよ。
それでもう、この世界にある玩具は飽き飽きしているわけ」
神様達の裏事情を知ってしまった。
この事を僕が話しても、信じてもらえないだろうし、下手したら神を愚弄したと責められるかも。
「わかりました。祭壇はどうすれば良いのですか?」
「テキトーに自分で祭壇と認識できる物を用意して、そこに供えて、祈ってくれれば大丈夫」
「テキトーって」
「形なんて何でも良いのよ。比喩でも何でもなくて、大事なのは気持ちだから」
神様にテキトーで良いと言われても、本当にテキトーで良いのだろうか。
「例えば、凄く豪華な祭壇で、身なりも奇麗な詐欺師が祈るのと、
ボロボロの祭壇で、身なりも汚れていても、信心深い神父が祈るのとで、どっちが良い?」
そう言われると、確かに大切なのは気持ちなのだと、納得できる。
見た目や形にこだわってしまうのは、僕達人間だけという事か。
「納得できました。何か祭壇のような物を用意します」
「お願いね♪」
「予備にもう1セット備えた方が良いですか?」
「1度でも供えられた物なら、供えられた神は何度でも複製できるから大丈夫よ」
「凄く便利な力ですね」
「そうでないと、減っちゃう飲み食いはできないじゃない」
「なるほど」
確かに供えられた時にしか飲食できないのでは、神様達だって不満だろう。
まさか、こんな形になるとは思っていなかったが、少しでも恩返しができるなら僕も嬉しい。
「催促するようで悪いんだけど、麻雀も作れたら、お供えしてほしいわ」
「……わかりました。少し長旅に出るので、帰ってきたら取り掛かります」
「しばらくはトランプで遊んでるから大丈夫よ。
これ1つで色んな遊びができるなんて、人の発想力は神ね!」
言いたい事は分かるが、神は貴女でしょうと返したい。
帰ってきたら、麻雀を忘れずに作らなければ。
「いつお供えしても、受け取れるものなのですか?」
「う~ん、貴方に分かるように例えると、電話が近いかしら。
祭壇が電話機で、祈るという行為が神に電話をかけているイメージ。
で、神側が祈りに耳を貸せば、繋がるといった感じかしら?」
ちゃんと話していると、例え話が分かりやすく上手い事が分かる。
これなら、転生の時、ラノベに例えて簡略しなくてもと思う。
いや、ラノベに例えてくれたから、イメージしやすかったのか?
「常に見ているわけではないから、安心してね」
「それは安心しました」
後ろめたい事はしていないが、見られているのは気恥しい。
「それじゃ、頼んだわね」
「え、もう行ってしまうのですか」
「あんまり長居すると、貴方に負担がかかるからね」
神様に聞きたい事が沢山あったはずなのに、急すぎて何を聞きたいのか思い出せない。
「あ、あの、創造神様ですか?」
「……どうして、そう思うの?」
「色々調べた結果と、僕のEXスキルの多さ、実際に会話した雰囲気から考察し、
創造神様か、魔神様のどちらかまで絞り、もし魔神様なら、魔族に転生させるかなと」
本当は月神様も一応候補に入っていたのだが、癒しのイメージが合わないとは言えない。
「ファイナルアンサー?」
ふ、古い……
「ふぁ、ファイナルアンサー」
「正解よ」
「あ、そこは溜めないんですね」
「特に隠す事でもないし、さっきも言ったけど、時間かけると負担になるし」
なら、今のくだりは不要だったのでは。
でも、これでハッキリした。
加護の『???』も表示されているはずだ。
「これで祭壇で祈る時、祈る神を意識できます」
「じゃ、今度こそホントにまたねー」
創造神様である光の玉は、上昇していくと消えた。
ここが夢の中だとして、どうすれば起きられるのだろうか。
……考えても分からないし、寝てみよう。




