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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第5章 旅への準備
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ファーストキス


 夕飯を食べ終えたタイミングでエレナに声をかける。

 皆の前では少し気恥しいので、2人きりになってから渡したい。


「エレナ、後で僕の部屋に来てくれる?」

「? はい、わかりました」

「エレナ、ついにこの日が来たわね。部屋に行く前にもう一度、お風呂で身体を奇麗にしとくのよ」

「? はい、わかりました」


 アイリスが何を勘違いしたのか、余計な茶々を入れてくる。

 エレナは不思議そうな表情を浮かべながらも了承するが、僕もエレナも5歳だ。

 そんな2人が身体を清めて、何をするっていうんだ。


 ピエリスがアイリスの頭を小突いてくれる。

 ふざけているだけだろうが、妙な勘違いはされたくない。

 もう、この場で渡す事にする。


「エレナ、今日はよく頑張ったね。はい、プレゼントだよ」

「……え、私にですか?」

「うん、エレナに」

「開けてみて良いですか?」

「もちろん」


 包装紙までは用意できなかったので、木箱に入れて、それをリボンで結んで渡した。

 エレナはリボンを解き、箱の蓋を開ける。


「……奇麗……これは髪飾りですか?」

「うん、どうかな?」

「……私なんかには……もったいないです……」

「そんな事無い。それはエレナの為に作った物だから、エレナ以外に相応しい者なんていないよ」

「……ユーリオン様が作ったのですか!?」

「そうだよ。だから、エレナ以外には使ってほしくないな」

「……つけてくれますか?」

「うん」


 エレナの髪を櫛で梳かし、左の手に1本にまとめる。

 それを頭の方に上げ、バレッタで止めると、奇麗なうなじが見える。


「良く似合っているよ」

「可愛いわね」

「あらあら、素敵ね♪」

「…………」


 みんなでエレナを褒める。

 ピエリスも褒めようとしたのだが、照れくさいのか何も言わなかった。


 女はとりあえず褒めるチャラ男もどうかと思うが、ピエリスは照れ過ぎだ。

 エレナ相手で照れるようでは、同年代の女性も褒めれないのではないか?。


 顔を赤くしたエレナは、正面から僕をギュッと抱きしめる。

 屋敷に来た当初は、手を握ったりとスキンシップが多かった。

 でも、アイリスから教育を受ける内に、そういった行動を控えるようになった。

 

 後頭部にはバレッタがあるので、代わりに背中を撫でようとすると、その前にエレナが離れる。


「へ、部屋の鏡で見てきます!」

「あ……」

 

 エレナが慌てたように部屋から出ていく。

 あの様子では、落ち着くまで戻ってこなそうだ。


 丁度良いかと、大人3人には蒸留酒の試飲を頼みたい。


「母様、エルフは酒に強いですか?」

「……そうね、種族的には強くも弱くも無く、人に依るんじゃないかしら」

「ユーリオン様も、お酒に興味を持つ年頃ですか?」

「いえ、蒸留酒を作ったので、味の調整と試飲を頼みたくて」

「……そう簡単に作れる代物じゃないのでは……」

「3人とも、お酒は大丈夫?」

「俺達は飲めますけど……蒸留酒ですか」


 ピエリスは、お酒が好きなのか、蒸留酒と聞いて興味津々だ。

 3人分の氷を入れたグラスと、冷水を用意してもらう。

 僕の方でも蒸留酒と、調整用の果実の汁などを用意する。


「かなりアルコールが強いので、絶対に無理しないように」

「自分で美味しいと感じるように調整し、混ぜたものをメモれば良いんですね」

「はい、最初は飲むというより、舐めるくらいで良いです」

 

 3人がそれぞれ自分の好みに合わせ、調整していく。

 母様とアイリスは果実で甘めにするが、ピエリスは簡単な調整をするだけだった。


 ニクスのようにゴクゴクと飲んだりせず、メモを取り、確かめながら飲む。

 これなら大丈夫そうなので、一旦この場を離れ、ニクスの様子を見てこよう。


 自室に戻ると、ニクスはまだ寝ていた。

 ハクアも約束した通り、ニクスの様子を見ていてくれたようだ。


「ニクスはあれから寝たまま?」 

「ニクス 寝てる ハクア 見てた」


 ハクアを撫でであげると、嬉しそうに身体を擦りつけてくる。

 おやつにと、皮を剥いた果物を渡して母様達の元へ戻る。


 少し離れただけなのに、3人の様子が変わり果てていた。

 ベストな飲み方を見つけてしまったのか、テーブルのお酒がかなり減っている。


「ユーリオンどこ行ってたのぉ? さみしかったぁ」


 母様に抱きつかれる。

 普段は物静かな母様が顔を赤くし、甘えてくる。

 母様は酔うと、甘え上戸になるようだ。


「……うぅ、俺はなんて不甲斐ないんだ……ユーリオン様に比べ……うぅ……うぅ……」

「あははは、兄さんウケる アハハ! 兄さんへこみ過ぎアハハ!」


 2人は対照的で、ピエリスは泣き上戸、アイリスは笑い上戸のようだ。

 酔っ払い特有の会話しているようで、していない空間ができている。 


 とりあえず3人に水を飲ませようと思うのだが、母様が離してくれない。


「母様、手を離してくれませんか?」

「駄目よ。ちょっと目を離すと、すぐどこかに行っちゃうんですもの……嫌なの?」

「い、嫌ではないです!」


 母様が瞳を潤ませるので、慌てて否定すると、笑顔になる。

 普段はあまり表情が変わらない母様だが、酔うと感情表現豊かになるようだ。


 母様と密着しているので、お酒の甘い香りとは別の、良い匂いがしてドキッとする。

 普段は見られない表情も見せられ、少し落ち着かない。


 今でこそ見た目は子供だが、元々は年頃の大学生だったのだ。

 母様の見た目は10代後半であり、少女の可愛らしさと女性の美しさを兼ね揃えている。

 この世界での実の母親とはいえ、そんな女性に抱きつかれているのだ。

 劣情こそ催さないが、ドキドキするくらいは、どうか許してほしい。


 さて、誰に対する言い訳か分からない事を考えるよりも、現状をどうにかせねば。

 エレナが戻ってきてくれれば、水を飲ませられるのだが、まだ戻ってこない。

 とりあえず早く戻ってくるように祈る。


 先程までは騒がしかったのに、考え事をしている間に静かになっていた。

 疲れたのか、泣いていたピエリスと、笑っていたアイリスが机に突っ伏して寝ている。

 2人が寝てしまったので、後は母様を何とかすればミッションクリアだ。


 母様が僕を持ち上げて椅子に座らせると、追加のお酒を口にする。  

 ようやく離してくれたので、これ以上飲ませないようにしなければ。

 僕が注意しようと口を開くと、母様が顔を近づけてくる。


「……ユーリオン、大好きよ」

「んーーーーーー」


 ……酔っぱらった母様にキスされてしまった。 

 それは一瞬の出来事だったのか、はたまた数秒にも及ぶ出来事だったのか分からない。

 頭がボーっとしてきたのだ。


 母様経由で僕の身体にもアルコールが入ってきてしまったようだ。

 やはり5歳の身体にアルコール、それも度数の高い蒸留酒は耐えられなかった。

 

 身体が熱くなり、意識が遠のいていく。

 5歳の身体ではあるが、蒸留酒とはいえ、キスしたくらいで酔うものだろうか?

 あ~~だめだぁ、うまく考えがまとまらない。


 今分かるのは、ファーストキスはブランデーの味でした。




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