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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第4章 聖女様との出会い
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家名の仮決定


 屋敷へ戻ると、自分の部屋で借りてきた本を読む事にする。

 部屋の中では、ニクスが寛いでいた。

 今日は出かけていないようだ。

 

「おかえりなさい」

「ただいま」

「また本を借りてきたの? ユーリオンは本当に本が好きね」

「確かに本は好きだけど、今回は資料って感じかな」 

「なんの資料?」

「歴史に名を遺した貴族の本。貴族名鑑があれば、一番良いんだけどね」

「そっちはなかったの?」


 貴族制の国家には、自国に存在する貴族の名を記した『貴族名鑑』という物がある。

 これは国のトップが管理するもので、王の配偶者であろうと、簡単には閲覧すらできない。

 『貴族名鑑』は、それだけ重要な存在なのだ。


 貴族の家に生まれた子供が、全員貴族となるわけではない。

 『貴族名鑑』に名前が記される事で、初めて貴族として、国に認められるのだ。

 だから、『貴族名鑑』に名前が記されるまでは、上位貴族の子であろうと、貴族では無い。


「いや、最重要機密でもあるし、閲覧すら、できないんだ」

「そうなのね。なんでまた、そんな本を?」

「自分の家名を決めなきゃいけないんだ。それで、参考にしようかと」

「人種は面倒くさいわね。名前なんて、区別して、相手を認識する為にあるのに」

「まぁ、面倒くさいという意見には、同意かな」


 僕はニクスと喋りながらも着替えを済ませ、楽な格好になる。

 お茶の用意をするけど、ニクスも飲む?


「私、猫舌だから、ぬるめでお願い♪」

「……いや、猫舌って……」

「やーねぇ、フェニックスジョークよ。面白かった?」

「面白さよりも、疑問の方が強かったよ」


 鳥に猫舌は存在するのか。

 そもそも、フェニックスなんだから、熱さには無敵だろうに。


「うーん、次はもっと、分かりやすいモノにするわ」

「じゃあ、普通に用意してくるよ」

「はーい」


 厨房の方へ向かうと、アイリスがお茶の用意をしていた。

 

「あ、ユーリオン様。どうしました?」

「これから本を読むから、お茶の用意をしようかと」

「もう、そういうのは屋敷の者にやらせてくださいって、いつも言ってるじゃないですか」

「……はい」

「これをアメリア様の元へ持っていったら、すぐに用意しますので、部屋でお待ちください」

「分かったよ。ニクスの分と併せて、2人分お願い」

「かしこまりました」


 お茶の用意くらい自分でできるが、周囲から仕事を奪うのも良くない。

 僕だって執事として働いていたとして、主が何でも自分でやってしまうのでは、居心地が悪い。

 ここは大人しく部屋へと戻ろう。


 アイリスは、ユーリオンの言葉に疑問を挟まず、了承した。

 不思議に思っても表情には出さない、まさに1流の仕事ぶりである。

 だが、内心では『ニクス、お茶飲むんだ?』と、自分の知識には無い行動に、かなり困惑していた。


「あら、お茶は?」

「アイリスが用意してくれるって」

「自分で用意した方が早いのに、人は本当に面倒な生き物ね」


 ニクスの言う通りな部分もあるが、好意に甘えるのも大事な事だ。

 アイリスが直ぐに持ってきてくれたので、あまり待った感じはしない。

 お茶請けに焼き菓子も用意してくれた。


「夕飯が食べられなくなると困りますから、ちょっとだけですよ」

「ありがとう」

「では、失礼いたします。何かあれば、私でなくても、遠慮なく呼んでくださいね」

「分かったよ」


 お茶の入ったカップは当然、人用の物だ。

 ニクスがお茶を飲みづらそうにしているのが気になる。


「ねえ、ニクス。お茶の熱さは大丈夫なんだよね?」

「さっきのはジョークって言ったでしょ。ただ、嘴が濡れるのは、気になるのよねぇ」

「ちょっと待ってて」


 部屋に置いてある鉄を錬金術で加工する。

 何かあった時用にと、鉄類は部屋にストックしてあるのだ。

 

 僕が作ったのは、鉄で出来た短めのストローだ。

 流石にプラスチックは無いので、鉄で代用する。


 普通のティーカップに鉄のストローというビジュアルが気になる。

 それに、鉄ではティーカップを傷つけてしまうか。

 ニクスが飲みやすいようにカップ、というより水筒に近い形で用意する。


「今度、お茶用の物をニクス専用で作るよ。今日はこれで我慢して」

「……その錬金術のスキル本当に便利ね。ありがとう、凄く飲みやすくなったわ」


 普通なら、熱いお茶をストローで飲むなど、危険行為だ。

 だが、ニクスなら問題無さそうだ。


 本を読んでいると、興味を惹かれる話があった。

 昔の貴族が箔を付ける為、家名に幻獣種の名を使った。

 その結果、使われた幻獣種の怒りを買い、大きな被害を生んだそうだ


「幻獣種の名を家名に使うのは駄目なんだね」

「ユーリオンだって、自分の名前を勝手に使われて、好き勝手されたら怒るでしょ?」

「……確かにニクスの言う通りだ」

「気にしない奴もいるだろうし、それぞれでしょ」

「特に思いつかないから、幻獣種の名を借りようと思ったんだけど、危険そうだね」 

「あら、ユーリオンなら、フェニックスの名を使っても良いわよ」 

「いいの? いや、でも、僕だけの話でなく、僕の家族や領地の名にもなるんだよ」

「まぁ、ユーリオンの子や、領民を気に入るかは分からないけど、

 フェニックスの名に恥じない限りは見守ってあげるわ」


 ニクスが名を使う事を許してくれた。

 これから再生する土地なんだし、フェニックスの名は縁起も良い。


「ユーリオン・フェニックスかぁ、良い響きだし、何より、しっくりくる」

「そうね、私たちの絆を感じる良い名前じゃない♪」

「そうだね、ちょっと照れくさいけど、ニクスとの絆が形として残るのは、僕も嬉しいや」

「じゃあ、これで決定ね!」

「一応母様にも相談してみるけど、僕もこれが良いな」


 この後、母様に相談すると、良い名前だと褒められた。

 ただ、フェニックスの名を使うと、悪目立ちするのではと心配された。

 

 確かにニクスの正体を隠しているのに、目立つのは危険かもしれない。

 でも、ニクスも喜んでくれたし、ダンジョンへ行った事で強くなった。

 過信するつもりは無いが、自衛くらいはできる。


 母様にお願いすると、渋々といった感じではあるが、納得してくれた。

 後は父が了承すれば、正式な家名として決定される。

  

 母様は、フェニックス本人から、名を使う事の許可を貰ったと言えば、信じてくれる。

 しかし、ニクスの正体を知らない父からすれば、幻獣種の名を使う事を危険視されそうだ。

 次に会う時までに、説得する方法を考えておこう。

 





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