領主だからできる事
図書室で参考になりそうな本を借り、母様と合流して屋敷へと帰る。
馬車の中で、押し付け、もとい下賜される領地の事を母様に聞いてみる。
話し合って決めた土地なのだから、色々知っているはずだ。
「領地の事を教えてください」
「ブロブレム領という名で、あそこには、特産品や名物のような物は特に無いわ。
でも、立地が良く、作物も育つので、元々は育てた作物で交易を行っていたの」
「目立った物が無くても、良い土地だったのですね」
「なのに、欲深い前領主が無理に税を上げ、払えない領民は奴隷にしていたの。
教会には賄賂を要求したり、我が領で暮らすならと、無償で回復魔法を使わせたり、
フォレスティアから資源の強奪や、人さらいなども指示していたそうよ」
……前領主は頭がおかしい。
そんな無茶苦茶が、いつまでも続くと、本気で思っていたのか。
「それで、国に処分されたのですか?」
「国が動く前に領民達が一丸となり、そこに屋敷を護る騎士達も協力し、討たれたそうよ」
「……当然の結果ですが、人望も無かったんですね」
「今、あそこを代理で管理しているのは、国王陛下が信頼する人物らしいわ」
「今は、上手くまとめているんですよね? 僕が領主になる事を領民が受け入れてくれますかね」
上手くまとまっているなら、僕は名ばかりの領主になり、そのまま管理してもらいたい。
「代理の者は、確かに上手くまとめているようだけど、年齢的に厳しいらしいわ。
あくまでも代理で、交代時に揉めないように、経験が有っても野心の無い者を送ったそうだから」
「僕が領主になるまでに、平和になっている事を祈ります」
「……平和にする為、貴方が領主になるのよ」
「……わかりました。頑張ってみます」
領主になんかなりたくない。
せっかく、セバスチャンの弟子になれて、執事を本格的に学べるようになったのだ。
なのに、領主としての勉強もしなければならなくなった。
いや、考え方によっては、執事になった後、主に領主の事を教えてあげる事が可能になる。
嫌々学ぶのではなく、この経験も役に立つと思って頑張ろう。
領地が上手くいっていれば、領主の僕は自由にしていても良いはずだ。
しっかり学んで、執事として過ごせる時間を確保しなければ。
それに僕の領地になるという事は、ある程度は僕が領主として決められる。
もちろん、前領主のように無茶苦茶な事をするつもりは無い。
国の意識を変革させるのは難しいし、かなりの時間がかかる。
だが、自分の領地で、領民の意識を変えるくらいなら、領主なら可能なのではないか。
エレナが屋敷の外でも、自由に過ごせるようにしたい。
遊びに行くのでも、買い物をするのでも、ただ散歩しに行くのでもいい。
髪や瞳、外見的な特徴だけで人を判断しない、そんな場所を作りたい。
これは僕の目指す『執事』でも難しいミッションだ。
人の意識を変えるのには、どうしても立場が必要になる。
最初は領主の指示だからと、嫌々従うだけだろう。
でも、いつの日か、偏見を持たず、差別しない事が普通な土地にしてみせる。
『領主』としての目標が定まれば、やる気が出てきた。
「頑張って。それに、良い家名も考えるのよ」
「……はい」
せっかく上がったやる気が、少し下がるのを感じた。




