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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第4章 聖女様との出会い
28/216

聖女様との交流


 side:????


「君たちの役割は分かっているね」 

「はい、聖女様の秘密を絶対に守る事です」

「そうだ。聖女マリア様とユーリオン殿下の婚約は、我らが神の望んだこと。

 何としてでも、今回の婚約は成立させなければならない。

 むろん私もフォローはするが、男の私では常に側に控える事はできない。頼んだぞ」

「お任せください、普段以上に気を引き締めて、注意致します」


「今回の婚約はおおむね決まっていて、後は会談が無事に終われば良いだけなのだ」

「でも秘密を隠したまま婚約が決まって、後で問題にならないのですか?」

「婚約が決まれば、月神様に祝福された2人として、すぐに大々的に広める手はずになっている。

 後で苦情が来るかもしれないが、その時には既に、婚約解消はできないだろう」


「……なんだか、騙しているみたいで。……正直にお話しするのでは、駄目なのですか?」

「君が心苦しく感じる気持ちは人として正しく、よく分かる。

 だが、その結果婚約が成立しなければ、我々は月神様の意向に背く事になる。

 それは絶対に許されない行為だ」

「……そうですね、私達の感情より優先すべきは、月神様の神託に従う事です」

「その通りだ。辛いかもしれないが、頑張ってくれ」

「はい、精いっぱい務めさせて頂きます」


 教会にとっても重要な会談を間近に控え、

 聖職者の男性と聖女の世話係をする2人の修道女は、聖女本人よりも緊張していた。



 side:ユーリオン


 今日は聖女様に渡すお菓子の準備をする。

 屋台で売っているようなりんご飴系をいくつかと、ジャムを入れたキャンディーを贈る。

 簡単な物になってしまうが、砂糖は高級品だし、飴なら嫌いな人は少ないだろう。


 小鍋に砂糖と水を入れてよく混ぜて、火を着けて沸騰したら中火で7分くらい煮詰める。

 王道なりんご飴にしたいが、大口を開けて食べるのは、はしたない行為となるので今回は諦める。

 なので、イチゴやブルーベリー、グレープなどの一口で食べれる果物で作る。

 本来なら割箸に刺して飴をまとわせるのだが、割箸は無いし、見た目が串焼きになってしまう。

 

 今回は錬金術で作った極細の鉄串で、果物を刺して飴をまとわせ、鉄串を抜いて冷やし固める。

 果物に穴を開けた事で、果物の中にも少量だが飴が入り、美味しくなる。


 次はリンゴ、オレンジ、レモンなどでジャムを作り、ハチミツなど飴の中身を用意する。

 砂糖を多めにする事で飴が溶けにくくなるが、中も外も甘くなってしまう。

 なので、飴を甘くする分、中身のジャムは甘くし過ぎないように注意する。

 こちらは形や大きさが均等になるように、錬金術のスキルを使って作る。

 スキルのおかげで、理想通りの大きさで、奇麗な真ん丸に作れた。


 錬金術で作った2種類のスチール缶の容器に丁寧にしまう。

 果物に飴をまとわせた方は種類ごとに、箱の形にした容器に並べる。

 中身を入れた飴の方は、意図してランダムになるように、容器に入れる。

 こちらは蓋を外して傾ければ、飴が1つ出るように作ってある。

 イメージしたのは、サ〇マドロップの缶だ。


 贈り物として適切かは分からないが、喜んでもらえると良いな。

 甘い匂いに釣られたのか、いつの間にか厨房の前に人が集まっていた。

 手伝うと言われたのだが、個人的な贈り物なので1人で作りたかった。

 

 ジャムはパンに使えるので残しておいても良いが、飴の方は使い切りたい。

 ハチミツは貴重だから、1人1個にしてもらうとして、皆にも飴を振舞うのだった。


「飴のパリッとした食感と、柔らかい果物の食感の組み合わせが良いですね!」

「果物の甘酸っぱさが、飴の甘さと合わさって丁度いい」

「ハチミツなんて初めて食べました!」

「……どれも美味しい」 


 喜んでもらえて何よりだが、もしここでカロリーの話なんかしたら、大変だろうなぁと思う。



 そして、会談の日となった。

 贈り物はストレージの中で、忘れるなんて事はないし、冷やしてある。

 今回はお互いに少人数での参加となる。

 王国側はユリウス、アメリア、僕で、セバスチャンとアイリスが控えている。

 教会側は枢機卿、聖女、世話係の修道女2人が参加する。

 

 最初に食事会を行い、その後に親側、子側に別れてゆっくりと話す予定となっている。

 重要な話は両親と枢機卿の間で行われるはずなので、こちらは親睦を深めるのが目的となる。

 

 王城に着くと、聖女様達も到着しているようなので、父と合流し、会談の席へ向かう。

 簡単な挨拶を済ませると、ゲストに対する歓迎の証として、コース料理が運ばれてくる。

 無言の必要は無いが、ホストから話を振られるまでは食事に集中するのがマナーとされている。

 美味しい食事に夢中になってしまいました的な意味合いがあるらしい。


 食事が運ばれて来る度に、修道女が聖女様の耳元で説明をしている。

 なので、1人でも食べられるのだが、どうしても食器が擦れる音がしてしまう。

 音を立てないのがマナーではあるが、見えないのだから仕方のない事だろう。

 

 スープの番には、普段からそうしているのか、パンをスープに浸して食べてしまった。

 これには壁に控えていた料理長が何か言いそうになるが、その前にセバスチャンが無言で睨む。


 気配に敏感なのか、聖女様が自分が何かしてしまったのかと、委縮してしまう。

 枢機卿もしまったと言わんばかりに、一瞬嫌な空気が流れてしまう。


「このスープ本当に美味しいですね。パンに浸すと、より美味しさを感じられます」

「……そうだな。ここは歓迎の場であるのだし、あまり形式ばるのも良くないな」

 

 主催者の代表である父が乗ってきたおかげで、場の空気が和らぐ。

 その後は簡単な会話も行いつつ、食事は無事に終了した。 


 聖女様はデザートのフルーツも美味しそうに食べていたので、安心して渡せる。


「聖女様、以前助けて頂いた際のお礼なのですが、飴を使ったお菓子を用意しました」

「お気遣い頂き、ありがとうございます。ですが、私がしたくてした事ですので」

「それでも助けて頂きましたから。簡単な物なので、あまり気負わずに受け取ってください」

「……もしかして、ユーリオン殿下が作られたのですか?」

「はい、そうです。味見も済ませていますので、ご安心ください」

「せっかくなので今、頂いてもよろしいでしょうか?」

「果物を使っている為、あまり日持ちはしませんので、ぜひ」


 修道女が種類についてそれぞれ説明すると、イチゴから食べるようだ。

「……すごく美味しいです。甘くて、ほんの少しすっぱくて」


 喜んでもらえて良かった。

 聖女様は修道女の2人と枢機卿にもススメて、皆で分けて食べる。

 美味しいと思った物を独占するのではなく、当たり前のように他者に分けられる人なのだな。

 

 父が少し羨ましそうに見ていたので、念の為、用意していた分を渡すと喜んでくれた。

 父とはあまり親子らしい事をしていないので、これはこれで良かったのかもしれない。


 次は本日のメインとなる交流の場となる。

 父たちとは別れ、僕と聖女様、2人の修道女の4人で用意された部屋へと向かう。

 案内してくれたメイドは、お茶の用意に行ってくれた。

 僕はソファーに座り、テーブルを挟んだ反対側に、聖女様を挟むように3人も座っている。


「改めまして、ユーリオンです」

「次代の聖女を予定しておりますマリアです。よろしくお願いいたします」

 

 修道女2人はあえて名乗らず、あくまで聖女様のサポートにまわるようだ。

 お互いに簡単な自己紹介を済ませると、何から話そうか考えてしまう。


「ユーリオン殿下にお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「なんでしょうか?」

「私はあくまでも次代の聖女となりますので、よろしければマリアと呼んで欲しいのです」

「なるほど、わかりました。それではマリア様と呼ばせてもらいます」

「ありがとうございます。ユーリオン殿下」

「なら、僕の方も殿下は不要です」

「……それではユーリオン様と呼ばせて頂きます。……なんだか、少し照れますね」


 その長く奇麗な桃色の髪にも負けないくらい頬を染めながら、はにかむ姿はとても可愛らしい。 

 人と話すときは目を見て話すのが基本だが、マリア様は黒いリボンで隠してるので合わない。

 聞いても良いのだろうか? 

 もし、目に傷があるようなら、隠したいだろうし、どうしよう。


「ユーリオン様は普段何をなさっているのですか?」

「勉強と魔法の訓練が多いですね。今後は執事の修行の時間が追加される予定ですが」

「……執事ですか? 理由を聞いても良いのでしょうか……?」

「僕の夢は、理想の執事になる事なんです。」

「……夢にするほど、支えたい誰かがいるのですか?」

 

 今はまだ、そこまで考えてなかった。

 主がいてこその執事だろう。

 逆に主がいない執事ってなんだろう……野良執事になるのか?


 でも、自分で自分を認められるまでは、主を持ちたくない。

 ころころと主を変えるような尻軽執事にはなりたくないのだ。

 しかし、実戦訓練もせずに、最初の主を満足させる事ができるのだろうか?

 自分が自分に満足しても、主が満足しなければ、1流とは呼べないのではないか。

 今までは、あの執事のようになる事だけを考えてきた。

 これからは、主の事も考えなければいけないのかもしれない。


「……いえ、いません。今は自分を鍛えているだけです」

「そうなのですね、良かった。もしも想う女性がいるのなら、どうしようか困ってました」

「特に想いを寄せる女性はいません」 

「ユーリオン様は、どのような女性がお好みなのでしょうか?

 私は……目が見えないので、せめてユーリオン様が望む容姿、性格でいたいのです」


 マリア様が気落ちしながらも、真摯な気持ちを伝えてくれる。

 まだ会ったばかりだし、別に僕の事が好きなわけでもないだろう。

 それでも神託があり、選ばれた僕に少しでも好かれる為、努力しようと真剣なのだ。

 真面目な彼女に対し、適当な言葉で誤魔化すのは良くないと思う。


「そうですね、髪は長い方が髪型を変えられるし、女性らしくて好きです。

 性格は明るくても、静かでも良いですが、無言の時間が苦痛に感じられない方が良いですね」

「そのぅ、殿方は女性の家庭的な部分に弱いという話を聞いた事があります。

 本当に心苦しく思うのですが、私は料理どころか掃除もできません」

「一般的にはそれも確かに女性の魅力の1つだと思います」

 

 僕の言葉にマリア様が目に見えて落ち込む。


「ですが、僕は料理も掃除も好きな一般的では無いかもしれない男性です。

 なので女性が家事をできなくても、問題点としては見ません」

「……ほ、本当ですか?」

「マリア様は見えない事を凄く気にしていますし、それは見える僕が本当に理解するのは難しい。

 いくら見える者が気にするなと言っても、解決する問題では無いのでしょう。

 だけど、目の見える女性貴族だって、料理も掃除も着替えもできないのが普通なんです。

 あまり見えない事を負い目に感じて、劣等感を得る必要は無いのですよ」


「……わ、私が婚約者に選ばれて……嫌じゃ、迷惑じゃ…無いのですか?」

「マリア様はピエリスを助けてくれました。それに、先ほど皆でお菓子を分けてましたよね。

 まだ共有した時間は短いですが、貴女の優しさと誠実さは僕にも伝わっています。

 少なくとも僕は、今回の婚約を嫌だとは感じていません」


 こういう時、なにか上手い事か良い事を言えれば良かったのに、その言葉を知らない。

 前世では沢山の本があったのだから、慰め、喜ばす方法も勉強しとけば良かったと思う。


「……ぅ……うぅ……っ……」 


 マリア様が目を覆うリボンからも滴る程に泣いていた。

 どうしようかテンパるが、まずは涙を拭う為にハンカチを渡すべきだろう。


「マリア様、宜しければ使ってください」  


 マリア様の右手をお借りし、その手にハンカチを乗せる。


「……っ…あ…ありがとう……ございます」

「……ぅ、マリア様……良かったですね……ユーリオン殿下とならきっと、幸せになれますよぉ……」


 横にいる無言だった修道女2人も釣られたのか、一緒に泣いていた。

 

 マリア様は涙を拭う為、目を覆っているリボンを外そうとする。

 ……あ、外しても良いんだ。

 聞けずにいたのだが、特に理由は無かったのだろうか。


 マリア様がハンカチで目を拭うと、初めてその瞳を見る事になる。

 右目は輝くようなジョーヌで、左目はエメラルドグリーンで、左右で違っていた。


「マリア様も左右で瞳の色が違うのですね」

「「アッーーーーー!!」」


 修道女2人が泣いたり、叫んだりと忙しい。


「はい、隠すように言われていたのですが、つい外してしまいました。『も』というのは?」

「僕のメイドをしているエレナも、左右で瞳の色が違うんです」

「そうなのですね。見えないので分かりませんが、珍しいそうですね」

「はい、見たのはマリア様とエレナだけです。マリア様の瞳もとても奇麗ですよ」

「褒めて頂けるのは嬉しいですが、……なんだか、恥ずかしいです」


「ユーリオン殿下、そのぅ、マリア様の瞳の事は…」


 何を隠したかったのか、ようやく理解した。

 それは不吉とされている左右で色が違う瞳。

 2人の様子から察するに、おそらくマリア様には不吉とされている事を隠しているのだろう。


「僕は、マリア様の瞳は奇麗だと思います」


 繰り返す事で、僕がそんな事は気にしていないと2人に伝える。


「……っ…さすがは月神様に選ばれたお方……私たちが心配する必要なんて無かった…」

 

 また2人が泣きだすが、水分不足にならないか心配だ。 

 まるでタイミングを見計らっていたかのように、ノックの音が聞こえてくる。


 メイドがお茶を持ってきてくれた。

 カップの温度が冷めていたので、話の腰を折らないように気を使ってくれたのだろう。

 今は熱々より、少し冷めてる方が飲みやすくて丁度いい。

 お茶も来たし、話もひと段落したので、もう一つの贈り物を渡す。


「マリア様、実はもう一つ別の飴を用意していたので、受け取ってください」

「お礼なら先ほど十分に受け取ってますし、あまり気を使わないでください」

「元々2種類用意していたので、お気になさらず。むしろ受け取ってもらわないと困ります」

「そうなのですか、ならありがたく頂戴します」


 飴の入った缶を渡すと、触って形を確かめてもらい、自分で蓋を開けてもらう。


「その容器は中が見えず、蓋を開けて傾けると全部同じ大きさ、形の飴が1つ出てきます」

「中身は全部同じという事ですか?」

「いいえ、同じなのは外側だけです。飴の中には色んな味が入っています」

「どんな味が入っているのですか?」

「それは食べてからのお楽しみ。見えないからこそ、分からないからこそ、楽しんでもらえればと」

「……見えないから、分からないからこそ楽しむ……そんな風に考えた事……1度もありませんでした」

「僕には何かを見せてあげる事はできませんが、せめて楽しいと思えるようには頑張ってみます」

「……ユーリオン様、ありがとうございます」

「こちらの飴は、多少は日持ちもしますので、持ち帰る事も可能です」

「そうなのですか、でも、ここで1つ頂きますね」

 

 最初の1つは大当たりのハチミツ入りが出るようにしてある。

 今食べてくれると反応が見れるので良かった。

 いや、よく考えると最初の1個がハチミツでは、後の期待値が上がってしまうのでは?

 他も美味しいと思うが、ジャム入りを食べた時に残念な気持ちになったら、どうしよう……。


「中からドロッとしたものが出てきました。砂糖や果汁とは違った甘さ……これは何でしょう?」

「それはハチミツです。最初の1個以外にも、何個か当りとして入ってます」

「これがハチミツ……初めて食べました」

「ハチミツは喉にも健康にも良いのですよ」

「凄く美味しいです! 2人もどうぞ」

「「ありがとうございます!」」

 

 上下関係はあるのかもしれないが、3人は仲が良さそうに見えて安心できる。

 家で待つエレナにも女の子の友人を作らせてあげたいな。

 一般的には、エレナを受け入れてもらうのは難しい。

 僕が誰かに声をかければ、それは命令に近いものになってしまい、それでは友人とは呼べない。

 

 どこか、差別や偏見の無い土地は無いだろうか?

 そこでならエレナは自由に外出できるし、マリア様も目を隠す必要は無い。

 理想の執事になる事、長生きして母様を大事にする事に加え、

 安住の地を探す事を第3の目標に決めるのだった。


「あ、中身はリンゴのジャムだ! ちょっぴり食感が残ってて美味しい!」

「私のはレモンのジャムかな? 外の甘さに対して酸っぱいのが凄く合う」

「な、中身は言わないでください! うぅ、自分で確かめるのを楽しみにしてたのに……」

「「ご、ごめんなさい!!」」


 大人組の話し合いが終わるまで、こちらは楽しく過ごすのであった。







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