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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第4章 聖女様との出会い
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王城にて


 冒険者ギルドでの用件も済んだので、王城まで来た。

 門番には当然顔を知られているので、面倒事も無く通される。

 僕が来たという事で、伝令の為に兵が国王の元へ1人走っていく。


 来る事は分かっていても、来たからといって、国王には直ぐに会えない。

 僕とピエリスは国王の準備が整うまで別室で待たされる。

 お茶とお菓子、果物も用意されたが、念の為、鑑定してしまう。

 あまり疑心暗鬼になるのも良くないと思うが、殺されかけたのだ。

 人の行為を疑ってかかるような生活は送りたくないが、しばらくは用心しなければ。


「謁見が終われば、ようやく休めるね。体調は大丈夫?」

「正直、痛みや疲労などはまだありますが、動けない程ではないです」

「なら早く終わらせて、ゆっくり休もう」

「……アメリア様にも、アイリスにも合わせる顔がありませんがね」

「ピエリス、失敗を無かった事にはできないけど、僕は生きている。

 だから、別の形で失敗を取り返すか、手柄を立てれば良いんじゃないかな」

「……ユーリオン様…俺にまだ、チャンスをくれるんですか?」

「チャンスなんて偉そうな事は言えない。でも、僕や母様の信頼には答えてほしいな」

「……はい、次こそは必ず!」

   

 暗い表情のピエリスだったが、少しだけ明るさが戻った。

 予定より遅れて帰還したから母様達も心配しているだろうな。


「ニクス、先に屋敷に戻って、僕とピエリスの無事を伝えてくれる?」

「ピィー!」


 僕が窓を開けると、ニクスが飛んでいく。

 あ、どうせなら簡単な手紙を書くべきだったと飛んで行ってから気づく。

 ニクスと普通に喋れるようになったけど、それを知られてはいけないのだった。

 母様はフェニックスである事を知っているし、上手く伝えてくれると信じよう。


 お茶を飲みながら待っていると、準備が整ったと、使いが来て案内してくれる。

 案内された部屋の前には、扉を守るかのように2人の騎士がいた。

 騎士が扉を開けてくれると、中はかなり広い。


 一番奥に段差があり、他より高い位置に豪華な椅子が置かれていて国王が座っている。

 その後ろには王妃アリアノールが立っていて、2人を護る騎士も側で待機している。

 王へと続く道の左右には数人の騎士達がいる。

 広さの割にひと気が無いので、淋しい印象を受けるが、まさに謁見の間という感じだ。


 その道をゆっくりと進み、ピエリスが途中で止まった後も僕は王に近い位置まで進んだ。

 どこまで王に近づけるかで、王との関係を表している。


「ユーリオンよ、まずは良くぞ無事に帰還した」

「ありがとうございます」

「本来ならば、無事伝統を終えたという事で、祝いの場となるのだが、事が事だ。

 できるだけ、ひと気は少なくしてあるので理解してくれ」

「わかりました」

「早速だが、護衛に付いた騎士団全員が裏切り、命を狙ったという事で相違ないか?」

「はい、最初から僕の命を狙っていた計画的犯行だったようです」

「……なんという事だ。国を護るべき騎士団が王族の命を狙うなどど」

 

 本当に悲しんでいるように見える。

 可能性は低いが、父も関わっているのではと、少し疑ってしまった。 


「先に送られてきた者達を尋問しているが、1人を除いて反応が悪い」 


 傀儡化のスキルの影響だろうか?

 解除してもすぐには元に戻らないようだ。


「シフリーという男は良く喋るのだが、その内容が真実とは思えないほどに酷い。

 宝物庫にある、嘘を見破る魔道具の使用許可を出すか、迷っている所だ」

「シフリーの話が真実だと分かると、不味いという事でしょうか?」

「……襲われた方からすれば、納得できないだろうがな」


 シフリーは支配下にあるので、嘘を言うはずがない。

 国王の立場としては話の信憑性を確かめない訳にもいかないが、真実だと非常に不味い。

 だが、王族の命が狙われる程の事件が起きたのに、犯人の話を全て虚言とするのも不味い。

 さて、我が父でもある国王陛下はどのような決断をするのだろうか。


 この場には非常に顔色が悪い人物がいる。

 それはピエリスの事ではなく、王妃アリアノールだ。

 シフリー以外の証拠は無いが、他に僕が死んで喜ぶような人もいないだろう。

 ピエリスが酷い目にあったのも、本を正せば王妃の命令が原因だ。

 少しくらいの意趣返しはしたい。


「王妃様、顔色が優れないようですが、ご気分でも悪いのでしょうか?」

「……! ……あ、貴方に心配される筋合いは無いわ!」

「失礼いたしました。何か心配事でもあるかのようでしたので」


 僕に話しかけられるとは思っていなかったのか、一瞬驚いた後、声を荒げる。

 それは心配で、気が気じゃないだろうさ。

 シフリーの話が真実か確認されれば、いくら王妃とて許されない。

 ここまでの事をしたのだ。

 極刑は無くても、何らかの形で罰は受けるだろう。


「………」

「いらぬ世話とは承知しておりますが、やはり体調が優れないご様子。

 無理をせずに、自室へ戻られては如何でしょうか?」 

 

 王妃の顔色が更に悪くなり、言い返す事もしてこない。

 気分が悪くても、部屋に戻りはしないだろう。

 この場で真実が分かる魔道具の使用が決定されるかもしれないのだ。

 1人で部屋で休んでいる間に自分の罪が暴かれるかもしれないなどど、落ち着けるはずもない。


「……ふぅ、アリア部屋に戻っていなさい」

「わ、私は!」

「アリア」


 国王が再度名前を呼ぶと、侍女に付き添われながら部屋を出ていく。 


「この場は、これにて解散とする」

 

 この場では真実を明らかにするのか、明言はしなかった。 

 僕とピエリスは、先ほどの部屋へと案内される。

 もう帰ろうかと思っていたのだが、少し待っていてほしいと頼まれたのだ。

 10分ほど待っていると、セバスチャンがやってきた。


「お待たせしてしまい、申し訳ございません」

「お久しぶりです。お元気そうで何よりです」

「ありがとうございます。ユーリオン様をご案内させて頂きます」


 ピエリスもついてこようとしたが、遠慮するように言われて渋々了承する。

 案内された部屋には、国王が1人いるだけだった。

 セバスチャンが部屋から出ていき、2人だけになる。


「私は外で見張りをしていますので」 

「さて、2人きりになったし、腹を割って話そうか」

「真実を明らかにしたくないのですよね?」

「あぁ。騎士団を個人で動かせる者など限られている。それに加え、犯人が自供しているのだ」

「このまま、うやむやにして納得しろと?」


 今回の事を無かった事にするつもりだろうか? 


「無かった事にするとは言っていない。二度とこんな事が起きないように言って聞かせる」

「言っても納得しなかったから、こんな事件が起きたのではないですか?」

「そ、それは! いや、すまない。結局、私がアリアを抑えられなかった事が原因だ」

「ここまで明言しないよう注意してきたのに、口にして良いのですか?」

「ふ、魔道具を使えば分かる所まで来ているんだし、確信しているんだろ?」

「はい。シフリーに指示したのが王妃アリアノールであると確信しています」


 さて、どうしたものか。

 感情で言えば、許したくは無い。

 なら罰するのかと言えば、アリアノールの立場がある為、それも難しい。

 でも、こちらが一方的に被害を受けたまま、我慢して終わりというのは納得できない。


「真実を明らかにしない場合、罪の無いアリアを罰する事はできない。

 その代わり、もし次にアリアがユーリオンに何かするようなら、王妃の座から降ろす」


 確かに罪が表に出ない以上は、罰を与える事はできないだろう。

 そして第一王妃という立場がある限り、重罰は難しい。

 次に何かした場合、王妃の座を降ろすと言うならば、最大級の罰になるか。 

 だが、それはあくまでも次の話となる。

 今回の件で罰を与えれない事に対し、感情が納得できずにいる。


「……僕は命を狙われ、ピエリスは死ぬかもしれない重症を負ったのに、それを許せと?」

「1度だけ、どうか1度だけ、許してほしい」


 父ではあるが、国王でもある男が立ち上がり、頭を深く下げて頼んでくる。

 ここで、ごねたとしても、アリアノールに与えられるのは、どうせ名ばかりの罰となる。

 ならば、次に何かあった時に、アリアノールを王妃の座から降ろす方が賢い選択か。


「……僕だけでなく、母様達にも何かあれば、絶対に許しませんよ」

 

 気絶しないように手加減しつつ、威圧スキルを使って脅す。


「………わかった。アリアにも厳しく言い聞かせると約束する」

「では、今回の件はこちらが折れましょう」

「……本当にすまなかった」


 父はもう一度深く頭を下げて謝罪してくれた。


「アリアに罰を与える事はできないが、代わりに何か望みはあるか?」

「なら、セバスチャンの弟子になりたいです」

「………前にも言っていたが、本気で執事になりたいのか?」

「もちろんです」

「……何がお前をそうさせるのか分からんが……しかしなぁ」

「王の座に興味が無いというアピールにもなります。王妃も余計な心配をしなくなるのでは?」

「それを言われるとなぁ」

「セバスチャンの言いつけは守るし、仕事の邪魔にならないようにしますので」

「……はぁ、わかった。前例は無いが、こちらには負い目もあるからな」

「ありがとうございます」


 父が渋々だが納得する。

 こちらも渋々納得しているので、お相子だ。


「それで、40階層を攻略したというのは本当の事なのか?」 

「はい」


 僕は冒険者カードを渡す。

 

「カードを見ても信じられんな……本当に凄い」

「あまり目立ちたくないので、広めないでくださいね」

「分かっている。今回の件は大事にしたくないのだ。関連するような事を広めるつもりはない」

「なら、良いのですが」

「しかし、事件が無ければ国中に広めて祝祭にしたいくらいの偉業だ」

「恥ずかしいので、絶対に嫌ですね」


 父から話が出てこないので、自分から話を振る事にする。


「ルナマリア神聖国から使者は来ましたか?」 

「そうだ、それ以上の衝撃があって忘れていたが、婚約の話が来ているのだ。何故知ってる?」

「街に戻ってすぐに教会へと向かったのですが、そこで聖女様に会いました」

「そうか。悪いがこの話は断るわけにはいかないだろう」

「やはり、そうなりますか」

「教皇直々の手紙もあったし、あの国が神の名を騙ってまで婚姻を結ぶとは考えられない。

 ならば、理由までは分からないが、月神様が本当に望んでいるという事になる。

 そして、相手は神が選ぶ聖女様だ。正室として迎えない訳にはいかない」


 5歳で婚約かぁ、前世では考えられないな。

 月神様、せめて理由くらいは教えてほしいです。


「わかりました。聖女様にはピエリスを助けてもらった恩もあります。

 どのみちお礼もしたいので、一度ゆっくり話したいですね」

「向こうの立場もあるし、こちらの方で場を設ける事にする。お礼はこちらで用意するか?」

「いえ、自分で用意します」

「なら治療のお礼という事でお布施は用意するから、婚約者となる聖女様個人に何か用意しなさい」

「わかりました。何か考えておきます」


 話す事はだいたい終わったので、セバスチャンを部屋に入れて、弟子入りの件を話す。

 最初は流石に驚いていたが、前々から真剣な事は伝わっていたので、了承してもらえた。


 ピエリスの待つ部屋に戻ると、心配そうな表情だった。

 父との話を聞かせて、アリアノールの罪を問わない事を謝罪する。


「本当は罰したいだろうけど、今回は耐えてほしい」

「ユーリオン様が謝るような事など、何一つとしてありません!」

「でも、ピエリスは酷い怪我までしたのに」

「それは俺が未熟だっただけの事。決してユーリオン様のせいではありません」

「……ありがとう」

「次こそは必ず、ユーリオン様の信頼に答えてみせますので」


 王城を後にする時には、もう夜に近い夕方だった。

 色々あったが、やっとの事で屋敷へとたどり着く。

 馬車の音で気づいたのか、母様やエレナが玄関で待っていてくれた。

 

「ただいま帰りました」

「「お帰りなさい」」


 人を感動させるような台詞ではないのに、不思議と涙が出そうなくらいに嬉しい言葉だ。

 ようやく張りつめていた緊張の糸が切れるのを感じ、自然と笑顔になる。

 あぁ、ここが僕の帰る家なんだと、心が安らいでいくのだった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 毒や物理的に命を奪いに来た相手を処断できない王なら為政者としての資格なし。早く隠居するべきだな。
2021/12/31 18:28 退会済み
管理
[気になる点] …自分の意見を申すなら!…今回主人公が同意して決めたことに口を挟むのも野暮と言う物!…しかし!!欲をいうなら!…馬鹿アリアに…次は無いの意味を込めて、手打ち、及び!脅しではなく本気の意…
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