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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第3章 初めてのダンジョン攻略
21/216

それぞれに思う事


 side:シフリー


 今回の任務はこれまでにない特殊なものだった。

 けっして騎士団である我々がするような仕事ではない。

 表向きの任務は、グランファーレル王国第3王子であるユーリオン殿下の護衛。

 これならば光栄であり、名誉ある任務だ。

 しかし、裏にある本当の任務はダンジョン内で護衛対象を殺す事だった。

 

 王族の殺害だなんて、それも国を護る騎士団に依頼するなど、あまりにもふざけた話だ。

 王族の殺害など本来なら計画しただけでも本人だけでなく、身内まで処刑される。

 私とて普通にこんな話を聞かされたなら、どんな報酬が約束されていようと密告してやるさ。

 だが、依頼してきた人物が問題だった。

 もし私が国王陛下に密告したとしても、無かった事にされる可能性が高い。

 最悪なのは密告した事で怨みを買い、私が、ありもしない罪を着せられて処刑される事だ。


 私はおおいに悩んだ。

 人生でこれほどまでに悩んだことは無い。

 聞かなかった事にしたいと願ったが、その願いは叶わない。

 理不尽だとは思うが、聞かされてしまった時点で私に選択肢は無いのだ。

 仮に私が関わらなかったとしても、計画を知った私をあのお方は消すはずだ。

 計画の結果に拘らず、もうこの国に私の居場所は無くなるのだ。


 私は結局、裏の任務を受ける事にした。

 もはや選択肢が無いならば、せめて報酬を受け取れる方を選ぶだけだ。

 物語に登場するような正義の騎士ならば、己の事など後回しで計画を止めるのだろう。

 だが、幼い頃に憧れた騎士のように私はなれなかった。


 成功報酬は、あのお方の祖国であり、我がグランファーレル王国の北西に位置する

 「カイザル帝国」での『士爵』、つまり準貴族身分である。

 平民の出で、大きな活躍もしていない私が士爵となり、名誉ある形で名を残せるのだ。


 私は騎士団の中から、今回の計画で仲間にすべき者を選んでいった。

 普段から付き合いがあり、信頼の置ける者。金を必要としている者。実力はあるが素行が悪い者。

 愛国心も正義感も無い騎士が私を含めて9人も集まってしまった。

 私は仲間となる者たちに報酬として金銭だけでなく、計画後の居場所も用意する事にした。

 私たちはこの国にはいられなくなる。

 だから計画成功後に私が家臣として迎える事も約束した。


 作戦決行日である今日がやってきてしまった。

 ダンジョンまでの道中も、ダンジョン内でも我々は護衛の任務に集中した。

 ユーリオン殿下もピエリスも、態度には出さずとも、我々を信用してはいないようだった。


 10階層のフロアボスである「ヒートゴーレム」を倒すと、警戒が一段階下がるのを感じた。

 ボス部屋で仕掛けるという案もあったのだが、やはり転移装置の方が確実だろう。

 計画通り転移装置が起動するタイミングで仕掛ける。

 ピエリスは他の団員が転移装置から降ろし、私とユーリオン殿下のみが31階層へと転移する。


 そして私は混乱したこのタイミングで、念の為、水や食料などが入っているカバンを奪う。

 転移後もユーリオン様は喚くでも嘆くでもなく、冷静に状況を分析していた。

 ユーリオン様がこのまま年を重ねれば、良き主となり、国を支える事もできたであろう。

 その可能性を奪うのは我々であり、私だ。

 怨みなど無いが、死んでもらうほか無く、本当にやりきれないものだ。

 

 この場で直接殺す方が確実で早いのだが、そうすると犯罪歴が残る可能性がある。

 それも王族殺しだ。

 なので始末はこの階層のモンスターに任せる。

 私は罪悪感を得られる報酬への期待で上書きすると、ユーリオン殿下を残し、転移した。


 

 side:ピエリス


 今回の任務でユーリオン様の護衛は俺以外にもいるが、他は全員敵だと判断している。

 だが、護衛という立場で行動している以上は、こちらから手を出すわけにはいかない。

 限りなく黒に近いのに、相手が手を出すまでは警戒しかできず、後手に回るしかないのだ。


 道中で仕掛けてくるとは思ってなかったが、まさかダンジョン内でも真面目に護衛している。

 わざとモンスターを見逃したりする事も警戒していたが、そういう事も一度もない。

 ならば、フロアボスとの戦闘中がもっとも警戒するべき状況だろう。

 フロアボス、騎士団、俺とユーリオン様のみの状況となるからだ。

 部屋からは出られず、余計なモンスターが邪魔をしてくる可能性も無い。

 俺は何が起きても対応できるように、更に護衛に集中する。


 予想に反して騎士団は真面目に「ヒートゴーレム」を倒し、戦闘が終了した。

 熱気で部屋が暑くなり、ここまで神経を尖らせていた事もあり、少し疲労を感じてしまう。

 ユーリオン様も慣れない暑さの中、文句は言わないが辛そうだ。

 騎士団の1人が気を使ってか、先に戻る事を提案してきた。

 仕掛けるのに絶好な状況で戦力を分けるなど、何を考えているのか。

 

 ユーリオン様も辛そうだし、向こうの戦力が別れるのならば、こちらに不都合はない。

 護衛を減らす事で、モンスターからユーリオン様を護れなかった言い訳にするつもりか?

 いや、護れなかった時点で全員処刑になるのだから、それは無いか。


 転移装置に乗ると、起動するタイミングで仕掛けられてしまった。

 団員達に物理的に降ろされ、ユーリオン様とシフリーのみが転移する。

 急いで追いかけなければならないのに、囲まれてしまった。


「どけ貴様ら!」

「そう邪険にすんなよ。同じ護衛仲間じゃないか?」

「そうだぜ。ここまで一緒にやってきたじゃないか」


 ニヤニヤと、こちらを嘲笑うかのように語りかけてくる。

 余計な問答は不要だ。

 全員殺してユーリオン様の元へ向かう。


「風よ 集いて 貫く槍となれ ウインドランス!」


 俺は両手に風魔法で作った槍を用意し、投擲する。 

 相手は8人で仮にも騎士団の人間だ。

 怒りで頭が沸騰しそうだが、冷静に対処しなければ、助けには行けない。


「はん、そんな攻撃」


 予定通り、盾で防御し、魔法は防がれる。

 だが、盾で視界を奪われている隙をつき、2人の首を両手の剣で刎ねる。


「は、はえー!?」

「こいつヤリやがった! ぶっ殺してやる!」

 

 後、6人だ。

 いや、目的はこいつらを殺す事じゃない。

 隙をついて、転移装置でユーリオン様を助けに行くのが最優先だ。

 しかし、どこへ移動したのかは分からない。 

 全員は殺さず、1人は残して情報を吐かせなければ。


 だが、魔法の撃ち合いになれば、人数の多い向こうが有利だ。

 ここは同士討ちを警戒するように、接近戦で数を減らそう。

 俺は一番近くにいた男に斬りかかると、剣と剣での押し合いになる。


「おいおい、俺を殺したら、殿下のいる場所が分からなくなるぞ」

「……なら、生きているうちにさっさと教えろ!」

「そうだなぁ、殿下はなぁ、今はなぁ」


 ゆっくりと、煽るように喋るが、そのふざけようが許せない。

 こいつは殺して、他の奴に聞けばいい。


「もう、あの世だよぅ。フハハハハハ!」

「貴様ぁぁぁーーーー!!」

 

 感情が爆発し、目の前の男を殺す事に全力になってしまった。

 この男の首は刎ねたが、周囲を警戒していなかった俺は、魔法の集中攻撃を浴びる。


 冷静でいようと心がけていたのに、感情に振り回されてしまった。

 なんと未熟な事か、その結果、こんな奴らにいい様にされ、意識が遠のいていく。

 ……ユーリオン様、助けにいけず、申し訳ございません。

 せめて、最後に、こいつらだけは。

 最後の悪あがきで魔法を放つと、結果も確認できないまま意識を失うのであった。


「くそ、このエルフまたヤリやがった」

「おい、こいつは殺すなよ。どうせなら売って金にしよう」

「今では、エルフは貴重だからな」

「なら、殿下も生かしておいた方が良かったんじゃ?」

「馬鹿か、お前は。生きているのが知られたらどうなるかくらい考えろ」

「生き残ったのは4人か。身動きできないように縛って、少し休んだら行くぞ」


 しばらくして、ピエリスは痛みで一度目覚めたが、身動きの取れない状態にされていた。

 罪人に使うような「魔封じの腕輪」も着けられていた為、魔法も使用できない。

 ピエリスはユーリオンを助けに行けず、己の不甲斐なさに悔し涙を流した。

 満身創痍ながらも願うのは、自身の事よりもユーリオンの事だけだった。


 side:アメリア


 今日、ユーリオンとピエリスがダンジョンへと出発した。

 伝統である為、断る事はできないが、信頼できる護衛を用意できなかった事が悔やまれる。

 私自身、政治にも権力にも興味が無い為、嫁ぎはしたものの国とは距離を取っていた。

 その結果、自分の子供ですら護ってあげる事ができなかった。

 なんとかピエリス1人を護衛に加えるのが精一杯だった。

 どうか無事に帰ってきてほしい。

 

 1人で部屋にいると落ち着かない為、アイリスかエレナにお茶の相手をしてもらおうと思う。

 窓から、庭で花の世話をしているアイリスの姿が見えたので、声をかける。


「アイリス、お茶の相手をしてくれる?」

「はい、もう少しで終わるので、エレナにも声をかけてもらえますか?」

「わかったわ」

「おそらく今は、ユーリオン様の部屋の掃除をしていると思います」

 

 エレナもきっと私と同じで、心配で塞ぎこんでいそうだものね。

 ……あの娘も大丈夫かしら?


 私はユーリオンの部屋に向かうと、扉が開いていたので中を覗く。

 中ではエレナが丁寧に掃除をしているところだった。

 こちらからは背中しか見えないが、涙声でユーリオンを心配しながらも、作業を行っている。


「うぅ~、ユーリオンさまぁ~」


 私は声をかけようとしたが、タイミング悪くエレナの奇功を見てしまう。

 なぜかユーリオンの名前を呼びながら、ベッドに顔を埋めている。


「ユーリオンさまぁ~」


 心配で溢れそうな涙を抑えているのだろうか?

 次にエレナは枕を抱きしめると、匂いを嗅ぎ始めた。


「あぁ、ユーリオン様の匂いがしますぅ。安心する香りぃ」

 

 枕を抱きしめながら、クルクルと回るエレナと目が合う。


「…………」

「…………」


 時が止まったかのように、お互いに無言で見つめあう。


「あ、アメリア様!? こ、これはちにゃうんです!」


 ……どうやら、ちにゃうらしい。


「いつもしてるわけじゃないんです! たまに、たまになんです、信じてください!」


 ……どうやら初犯でもないらしい。


「……大丈夫。誰にも言わないわ」 

「……あめりあさまぁ」


 ちょっと、いや少し変わっているが、ユーリオンを第一に考えてくれるし、悪い子ではない。


「気分転換にお茶にしましょ。用意してくれる?」 

「かしこまりました」


 アイリスも合流して3人でお茶会が始まる。


「ユーリオン様も兄さんも、無事に戻ってきてくれると良いのですが」

「うぅ、ユーリオンさまぁ」


 またエレナが泣きそうになっている。


「……ピエリスは強いけど、さすがに護衛が1人じゃ心配ね」

「国王陛下は本当に分かっているんですかね? 何かあれば、絶対に許しませんよ」

「……アリアノールがそこまで馬鹿な真似をしないだろうと、考えているようよ」

「……あれに対して、なぜそこまで信頼できるのか」

「アイリス」

「失礼しました」


 気持ちも言いたい事も分かるが、あれでも第一王妃なのだ。

 誰かに聞かれる可能性もあるので、陰口は良くない。


「私、強くなりたいです。ユーリオン様を護れるようになりたいです」

「そうね。今までは他に優先して覚える事があったから護身術程度だったけど、

 そろそろ戦闘を覚えても良いころ合いかもね」

「……あの子の力になってくれるのは嬉しいけど、ケガしちゃ駄目よ。ユーリオンが悲しむわ」

「そうね、嫁入り前の体だし、傷だらけの身体をユーリオン様には見せれないわね」

「そ、そんなお嫁さんだなんて……子供は寂しくないように、3人は欲しいですぅ」

 

 エレナが泣きそうな顔から一転して頬を染めながら言う。


「……冗談のつもりだったのだけど」

「うぅ、そうですよね……私なんかじゃ、お嫁さんにはなれませんよね……」

 

 私は感情があまり顔に出ないから、エレナのように感情が豊かなのは少し羨ましい。


「エレナ、今日の仕事が終わったら戦闘の特訓よ。護衛もできるように頑張りなさい」

「わかりました。お願いします!」

「あと、ユーリオン様の部屋で匂いを嗅ぐ癖は直しなさい」


 エレナが凄い勢いでこちらを見てくるが、私は何も言ってない。


「私たちエルフは鼻が効くから、貴女からユーリオン様の匂いがすれば分かるのよ」

「……え? それじゃユーリオン様も……気づいてる?」

「どうかしらね? 気づいてないのか、気にしていないのか。

 まあ、まだまだ幼いから良いけど、大人になってもやってたら引かれるかもよ?」

「そ、そんなぁ~」


 思っていたより騒々しいお茶会となってしまったが、1人で考え込むより気分は良くなった。

 どうか、どうか2人とも無事に帰ってきてほしい。

 願うのはそれだけだった。

 


 side:????


 今日はのんびりと、冒険者の様子でも見て過ごそうと思っていたら誰も来ない。

 昼くらいになってようやく人が来たが、同じ格好をしているし、冒険者のようには見えない。


「また、このパターンかよ」 


 思わず文句も出てしまう。

 金持ちのボンボンや権力者が箔をつける為に、護衛を雇って潜りに来るのだ。

 金も権力も言ってしまえば力の1つではあるし、それで護衛を連れてくるのはかまわない。

 だが、自身は見てるだけで何もしないのはダンジョンの目的から離れた行為だ。

 しかも、だいたいの奴らが貸切にする為、他の者に迷惑だし気に食わないのだ。


「あ、しかもボンボンでイケメンかよ……無様に死なねーかな」


 金が有って顔も良いとか、人生イージーすぎて、ストレスが爆発しそうだった。

 まだまだ幼いが、将来は女の方から寄ってくるのが予想できる。


 他に見るものもないし、このクソガキ様が無様に泣き喚く姿が見れるかもと期待する。

 だが、期待に反して順調に10階層のボス前まで来てしまう。

 まあ、流石にあの人数ならケガも無いか。


「つまんねえな」


 ボスの「ヒートゴーレム」も普通にやられてしまった。

 後は転移装置で1階層まで戻って終わりかと思いきや、ここから急展開だった。


 事情は分からぬが、クソガキ様と護衛1人が、何故か31階層に転移した。

 しかも、護衛はクソガキ様を置いて、1階層に転移してしまう。


「ふはははは、ざまぁ!! おいおい、こいつ死んだわwww」

 

 行為自体は決して褒められたものではないが、笑えてくる。

 笑った事でストレスが発散できたのか、今度は若干同情してしまう。

 ネタバレになるので、基本的に鑑定はしない主義だが、ここで子供が生き残れるとは思えない。


「つーか、こいつ全然慌てたりしねーのな。状況わかってんのか?」 


 ここからが本当に面白くなる展開とは、流石の俺様も予想できなかったぜ。

 まさか、まさかの展開だよ。

 糸を使った変な魔法や罠を使って攻略していくのだ。

 時に冷や冷やさせられる時もあったが、鳥と一緒に協力しながら進んでいった。


「鑑定するかぁ……でも、ネタバレは白けるんだよなぁ」


 結局、鑑定せずに見世物として楽しんでいると、40階層のフロアボスまで来てしまった。

 休んでいるようなので、そろそろ良いかと鑑定してみる。

 少年の方は予想通り異世界人であったが、ステータスがおかしかった。

 謎の加護や一部見れないEXスキルがあるのだ。

 俺様でも見えないという事は、そういう事なのだろう。


 鳥の方もまさかのフェニックスだった。

 通常の魔獣とは思えず、ユニークモンスターだろうなと思っていたら、貴重な幻獣種。

 それも人間嫌いなフェニックスが、何で人種に協力しているんだ?


「ステータスは見れても、過去は見れないんだよなぁ……あー気になる!」


 異世界人に幻獣種の組み合わせなんて、面白いに決まっている。

 どんな過去があれば、一緒にいるのか、直接話を聞きたい。


 今日の40階層のフロアボス誰だったかなと考えていると、同情してしまう。

 通常の個体ではなく、ユニークモンスターの「ジャック・オー・ランタン」だった。

 シフト制では無いが、何体かいる中から、ランダムに出るようになっているのだ。


「どんだけ運が悪いんだよ。可愛そうだが、さすがに死んだな」

 

 始まれば、すぐ終わると思っていた戦いは、何故か挨拶から始まった。

 「ジャック・オー・ランタン」との会話を聞いてると、ここまでの事情を聞いてしまう。


「なんてかわいそうな子なんだ」 


 助けてあげたいが、俺様にも守らなければならないルールがある。

 残念ながら俺様は、見守る事しかできない。


 結果は見えていた戦いだったが、予想に反して少年の勝ちだった。

 よほど少年を気に入ったのか、大鎌にスキルまで付与してプレゼントしちゃってるよ。

 これは色々と話を聞く必要があるが、まず先にやる事がある。

 フロアボス攻略後に出現する宝箱に少しだけ干渉する事にした。


「少年よ俺様に感謝し、生涯崇めるがいい、ハハハ」


 直接謝罪はできないが、勘違いでクソガキ呼ばわりしたお詫びの気持ちだ。 

 まあ、俺様の存在を知らないので、感謝も崇めるのも無理なんだけどな


 「ジャック・オー・ランタン」の魂を回収し、話を聞くことにする。


「おいおい、なに負けてんだよ」

「お久しぶりです。いやぁ、全力を尽くしたのですが、すいません」

「何が全力だよ。界渡りのスキルも使ってなければ、眷属も5体出してないだろうが」

 

 少年の鑑定には見えてなかったが、

 ユニークモンスターであるこの「ジャック・オー・ランタン」には、

 EXスキルに「界渡り」という、空間移動系のスキルがあったのだ。

 最初に何もない場所からいきなり現れたのも、このスキルの力だ。


「一応言い訳をさせてもらうと、通常のフロアボスと同程度以上には戦いましたよ。

 自分で言うのもなんですが、私はユニークモンスターで同種よりも強い。

 自分の意思で挑んできたなら、出し惜しみ無しで戦いましたが、彼らは違う。

 そんな彼らを運が悪かったで殺すのは、あまりにも不憫です」


「……まあ、確かにお前の言いたい事はわかる。だが、スキルを付与した武器まで渡すのはな」

「おや? 口は悪いが人の良い貴方様の事ですから、宝箱に何か干渉しているのでは?」

「うっ」

「ふふふ」

「チッ まあいい。それでどうする? お前ならすぐにフロアボスとして復活させられるが」

「それも大変魅力的ではあるのですが、一度野良に戻ろうかと」

「50年以上無敗だったお前が野良になるなんて、冒険者からすれば悪夢だな」

 

 ここ100年の間に、40階層を突破した冒険者は数人はいた。

 だが、この「ジャック・オー・ランタン」を倒せた者はいなかった。


「分かっているとは思うが、野良になるなら、レベルやスキルもリセットされるし、

 次もユニークモンスターになれるとは限らないぞ」


 こいつを野良にするのは本当にもったいないのだが、仕方ないか。


「ええ、1階層から修行しなおします」

「そうか、まあ頑張れ」

「ありがとうございます。それではダンジョンマスター様もお元気で」


「何がお元気でだ。いつまで経とうが、良くも悪くも俺様は変わらねーよ」 

 

 魂を転生させてやると、また興味深い少年を観察するのだった。









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― 新着の感想 ―
[一言] 愚物しかいない国なら滅んだほうが世の為なのに滅びないよね(笑)
2021/12/31 18:17 退会済み
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