ボス部屋の前まで
大岩をどけて、スケルトンの魔石を回収する。
人の身体に魔石は存在していないが、モンスターには、核になる魔石が存在する。
魔石は様々な用途として使われているので、小さくても需要はあるし、大きいと高額だ。
スケルトン達の魔石は小さかったが、初めての戦利品なので、記念に取っておこうかな。
「ねえ、その魔石食べて良い?」
「……食べるの?」
「そうよ。人種は無理だけど、私たちは魔石を吸収する事でも強くなれるの」
「……いいよ」
「ありがと♪」
記念も大事だけど、生き残る為の努力を最大限にするべきだろう。
欲しがっているし、僕は3つともニクスに食べさせる事にする。
魔石を食べるニクスを横に、僕も簡単な飲食を済ませる。
「錬金術」のスキルを覚えた事で、前世の有名な漫画を思い出した。
手と手を打ち合わせて円を作り、両手を地面につけるが何も起きない。
「……なにしてるの?」
ニクスが不思議そうに尋ねてくる。
地面から鋭い岩を生やすイメージで、錬金術を使用したのだが、失敗に終わる。
材料とイメージだけではダメな事に気づく。
錬金術の基本は「理解」「分解」「再構築」と書かれていた。
僕がやった事は、地面を正しく理解せず、結果だけをイメージしていた。
これでは土魔法を使ったのと、あまり変わらない。
土魔法の適正もレベルも低い僕では、失敗して当然だろう。
地面に対して「鑑定」を使用する事で、素材とする成分の詳細を知る。
「錬金術」をメインに、「土魔法」も補助で合わせて再挑戦する。
すると、イメージ通りの鋭い岩ができた。
土魔法は役立つほど覚えてなかったが、「錬金術」と合わせれば良い戦力になりそうだ。
音を出し過ぎたと後悔するが、もう遅い。
大人でも簡単に丸吞みできそうな大蛇がこちらにやってくる。
【フレイムバイパー(Lv.25)】
【スキル】『蛇眼Lv.4』『熱牙Lv.3』『火術Lv.2』『自己再生(小)Lv.3』『気配隠蔽Lv.3』
鑑定すると、スキルも見れるようになっており、本当にありがたい。
「気配察知」で分からなかったのは、「気配隠蔽」を使われていたからか。
「危険感知」もアラートが鳴っているが、この階層で危険でない相手なんかいないだろう。
「ユーリオン、どうするの?」
「逃がしてはくれなさそうだし、戦おう」
「わかった。フォローにまわるわ」
「頼んだ!」
作戦を考える時間をくれるはずもなく、「フレイムバイパー」が口を大きく広げて迫ってくる。
大きさのわりに素早いので、やはり、逃げ切る事は難しいだろう。
攻撃を避ける事はできたが、代わりに噛まれた岩が熱で溶けている。
あんなの、掠っただけでも致命傷になる。
僕は一旦距離を置こうと全力で離れようとするが、なぜか逃げられない。
鑑定で確認すると、「蛇眼」の効果で、動きを制限されたようだ。
目と目が合っている間、対象の動きを鈍くするという効果である。
幸いにも「フレイムバイパー」の方も動きが遅くなるようなので、一気には襲われない。
ニクスが「フレイムバイパー」の目の周りを飛んで邪魔するが、サイズ差があり効果は薄い。
「フレイムバイパー」は口を開くと、火術で炎の塊を作る。
動きを制限して、動く必要のない魔法で仕留める……そのコンボは卑怯だろう。
動きは制限されていても、スキルは使える。
生き残る為に必死に頭を働かせる。
水魔法は間に合わないだろうし、もう賭けに出るしかない。
僕は自分に向かって飛んでくる炎の塊を鑑定して理解し、「錬金術」で分解する。
少し熱かったが、魔力と火の要素に分けると、形を失い霧散する。
……成功して良かった。
やはり「鑑定」と「錬金術」の相性が凄く良い。
失敗してたらと考えると、震えが止まらない。
「フレイムバイパー」は何が起きたのか理解できず、蛇眼を緩めてしまう。
その隙を逃さず、僕は錬金術で地面から槍のような岩を大量に生やし、串刺しにする。
良かった、皮はそこまで固くないようだ。
悲鳴を上げながら暴れまわるが、簡単には抜けないように、先端には返しもつけてある。
「自己再生(小)」のスキルも持っていたし、頭を潰さないと倒せないだろう。
動きを制限された「フレイムバイパー」では避ける事もできず、魔糸で首を切断した。
切断した後もしばらく動いていたが、距離を置き、動かなくなってから再度鑑定する。
死体と表示された事でようやく安堵するが、食用可と表示されていて微妙な気分になる。
この世界で人は魔獣を食べるし、魔獣も人を食べる。
美味しくする手間暇をかけなくても、美味しい魔獣の肉があるので、畜産が発達していない。
その為、前世と比べると、動物の肉はあまり美味しく無い。
実際、動物の肉より魔獣の肉の方が美味しく、栄養価も高いと言われている。
だけど僕は、人を食べているかもしれないと思うと、魔獣の肉を食べる気にはなれない。
いざとなったら食べ物は必要なので、魔石だけ取って、ストレージに回収しておこう。
スケルトンとは違う大きめな魔石も、ニクスにあげる。
「いいの?」
「いいよ。生きて帰れなければ、宝の持ち腐れだしね」
ニクスは魔石を吸収できる分、早くレベルが上がると思っていたが、そうはならなかった。
幻獣種は他種に比べると、不滅であり特別な存在なので、レベルが上がりづらいそうだ。
その後もニクスと共に順調に戦闘を行い、危険は避けつつレベルを上げていく。
そして40階層のフロアボスの扉の前にたどり着いたので、休憩を取る。
【名:ユーリオン】【種:ハーフエルフ】【性:男】【年:5】【レベル:28】
【魔法適正】『光/20』『闇/20』『火/25』『水/35』『土/20』『風/40』『無/50』
【称号】『???の加護』『王族(グランファーレル/フォレスティア)』
【スキル】『魔力操作Lv8』『魔力具現化Lv8』『魔糸操術Lv8』『身体強化Lv4』『格闘術Lv3』
『剣術Lv3』『槍術Lv2』『弓術Lv4』『火術Lv4』『水術Lv5』『土術Lv5』『風術Lv5』『算術Lv6』
『家事技能Lv3』『気配察知Lv5』『危険感知Lv5』『傀儡化Lv3』『傀儡操作Lv3』『威圧Lv5』
『罠師Lv.4』『暗殺Lv.3』『狂化Lv.1』『不屈Lv.5』『交渉術Lv.3』『熱耐性Lv.5』
【EXスキル】『記憶継承』『言語理解Lv6』『ストレージLv5』『鑑定Lv7』『隠蔽』『錬金術Lv5』『???』『???』
【幻獣種:フェニックス】【名:ニクス】【レベル:19】
【魔法適正】『光/20』『闇/0』『火/100』『水/0』『土/0』『風/20』『無/25』
【スキル】『光術Lv3』『火術Lv6』『風術Lv2』『自己再生Lv5』『魔力喰いLv5』『身体強化Lv4』
『身体変化Lv3』『威圧Lv3』
僕もニクスもレベルが上がり、スキルも増えた。
お互いに覚えた『威圧』は、相手に恐怖やプレッシャーを与えたりするスキルだ。
ここでは、自分たちの方がレベルが低く、弱い敵もいないので、現状役に立っていない。
ニクスの『身体変化』はレベルに応じて、姿を変えれるので、これからも種族を誤魔化せる。
スキルレベルが上がって、僕を乗せれるくらい大きくなってくれたら良いな。
『罠師』は罠の発見、解除、設置が得意になる便利なスキルだ。
ここにきてから罠を多用していたので、覚えてからは、より戦いやすくなった。
『暗殺』は自身が認識されにくくなり、認識されても、記憶に残りづらくする事もできる。
『狂化』は使用すると理性が薄れるが、痛みを感じなくなり、身体能力も上がる。
痛みを感じないだけで、ケガが治るわけでも、無敵になるわけでもないし、微妙だ。
『不屈』は肉体的にも精神的にも耐久力が上がるスキルだ。
恐怖や魅了などの精神攻撃も効かなくなるので、地味だけど、良いスキルだと思う。
『交渉術』は会話可能な相手との交渉が、上手くいきやすくなるスキルだ。
36階層で魔獣に囲まれた際に、ストレージに入れておいた魔獣の肉のおかげで何とかなった。
初めて魔獣と会話したが、ニクスほど流暢には喋らず、意思だけ伝えてくる感じだった。
『熱耐性』のスキルを覚えれて、本当に良かった。
戦闘以外で一番辛かったのが暑さなのだ。
このスキルを得たおかげで、ニクスに見張りを頼み、仮眠をとる事もできた。
これが無ければ眠る事もできず、体力を奪われ、戦闘以外で死んでいたかもしれない。
火神のダンジョンで深く潜るなら、必須と言えるスキルだろう。
そして『ストレージ』が『5』に上がった事で、コンビニから大型スーパーまで容量が増えた。
40階層のフロアボスを倒せば、転移装置で1階層に転移できる。
これがゲームなら、ボス部屋の前でセーブできるのだが、現実はそうはいかない。
せめてどんなボスか分かれば、戦闘前に作戦を考えられるのだが、扉越しに鑑定はできない。
今は万全を期すために身体を休めるしかない。
体感となるが1日は経過している。
無事に逃げていてくれれば良いのだが、ピエリスの事も心配だった。




