ダンジョンへ向けて
自分の部屋で椅子に座りながら、明日のダンジョンについて考える。
1年近く準備期間は貰えたが、死ぬ可能性もある以上は緊張してしまう。
「ステータス」
《現在》
【名:ユーリオン】【種:ハーフエルフ】【性:男】【年:5】【レベル:1】
【魔法適正】『光/5』『闇/5』『火/5』『水/10』『土/5』『風/10』『無/20』
【称号】『王族(グランファーレル/フォレスティア)』
【加護】『???の加護』
【スキル】『魔力操作Lv7』『魔力具現化Lv7』『魔糸操術Lv8』『身体強化Lv2』『格闘術Lv3』
『剣術Lv3』『槍術Lv2』『弓術Lv4』『火術Lv1』『水術Lv3』『土術Lv1』『風術Lv3』
『算術Lv6』『家事技能Lv3』
【EXスキル】『記憶継承』『言語理解Lv3』『ストレージLv1』『鑑定Lv4』『隠蔽』『???』『???』『???』
《過去》
【名:ユーリオン】【種:ハーフエルフ】【性:男】【年:2】【レベル:1】
【魔法適正】『光/5』『闇/5』『火/5』『水/10』『土/5』『風/10』『無/20』
【称号】『王族(グランファーレル/フォレスティア)』
【加護】『???の加護』
【スキル】『魔力操作Lv4』『魔力具現化Lv4』『魔糸操術Lv4』『算術Lv6』
【EXスキル】『記憶継承』『言語理解Lv1』『ストレージLv1』『鑑定Lv3』『隠蔽』『???』『???』『???』
以前に比べるとスキルは増えたが、レベルや魔法適正は上がっていない。
この世界では魔力を持つ相手を殺す事でレベルが上がり、レベルが上がる事で魔法適正も上がる。
魔獣とは違い、生きていない魔物は殺すという表現には違和感を覚えるが。
いくら戦って勝っても、殺さなければレベルが上がらない物騒な世界である。
しかし、殺せば殺すほどレベルは上がるだろうが、レベル=強さとはならない。
確かに戦闘しても殺さなければ、レベルは上がらないが、戦った経験で学んでいるのだ。
極端な話、寝ている相手を殺してレベルを上げた奴と、訓練で鍛えている奴なら後者の方が強い。
レベルを上げる魔道具は知らないが、魔法適正は魔道具でも上げられる。
魔道具はダンジョンで入手可能で、深ければ深いほど難易度が上がるが報酬も良くなる。
僕が今回入るのは「炎のダンジョン」で、グランファーレル王国内にある。
その名が示す通り火神が創ったとされている。
ダンジョンは神々が創造したものであり、内容も神によってそれぞれ違う。
共通しているのは全部で50階層あり、10階層ごとにフロアボスが存在している事。
フロアボスは特殊な存在であり、通常とは違い、殺した者だけでなく、
戦闘に参加した者も、レベルを上げる為の経験値を得る事ができる。
なら、大人数でボスに挑めば良いと思うかもしれない。
しかし、安全は確保できるだろうが、人数に応じて貰える経験値が減ってしまう仕様だ。
戦闘に参加したと判断されないと、経験値は貰えないので、寄生してレベル上げもできない。
「炎のダンジョン」はトラップがほとんど無く、純粋な戦闘を好む冒険者には喜ばれている。
フロアボスも火属性のモンスターばかりなので、水属性の魔法が重要だ。
水の魔法は一応使えるが、攻撃となると自信は無い。
一番得意な魔糸は、火とは相性が悪いので心配である。
すると僕の不安を感じたのか、ニクスが僕の方へ飛んできて椅子の背に止まる。
「ピィー!」
雛だった頃からすっかり成長し、今では全長で50㎝くらいある。
成長したらフェニックスと、バレるのではないかと心配もしていたのだが、杞憂となった。
この世界に写真は無く、フェニックスの絵は燃えている鳥が描かれている。
なので、燃えていないニクスを見られても、フェニックスだとは思われない。
とはいえ、魔獣のレッドホークに比べ、幻獣種のフェニックスの目には知性を感じる。
嘴や羽もとても美しいし、今のサイズはレッドホークと同じくらいだが、まだ成長する。
目立ってしまうので、なにか対策も考えておかなければならない。
「明日は初ダンジョンだ。よろしく頼むね」
「ピィー!!」
ニクスは任せろと言わんばかりに、羽を大きく広げて見せる。
頼りがいのある相棒に安心すると、明日に備えて早めに寝る事にした。
次の日の朝、エレナに優しく起こされる。
「ユーリオン様、朝ですよー」
「……おはよう、エレナ」
「はい、おはようございます」
今日はいつもより早く起こしてもらうようにした。
荷物の確認は前日までにも何回も確認しているが、当日なにか気づく可能性もあるからだ。
エレナが屋敷で働き始めて一年以上も経つ。
僕が5歳となったように、エレナも5歳になっている。
よく泣くイメージだったが、今では精神面でも成長している。
最初の頃は、やはりエルフ以外との交流はうまくいってなかった。
だが今では、屋敷内のヒューマン限定ではあるが、うまくやれているようだ。
当然エレナがいたからと、不幸な事が起きる事も無かった。
僕が着替えて荷物の再確認をしていると、エレナが不安そうに見つめる。
「やっぱり、私も同行してはダメですか?
盾にもなりますし、いざとなったら囮にもなれます」
「駄目だよ。盾も囮も必要ない」
真剣な眼差しで見つめられるが、僕の答えは決まっている。
アイリスやピエリスに武術面でも鍛えられて、ある程度は戦えるだろう。
だが、ダンジョンへ護衛として連れていけるほどではない。
「ユーリオン様に何かあったらと思うと、怖くて震えが止まらないんです」
「大丈夫。目的は10階層のフロアボスまでなんだし、必ず無事に帰ってくる」
「……はい」
「僕がいない間、母さんの側で支えてあげてほしい」
「わかりました。絶対に無事に帰ってきてくださいね」
「うん、約束するよ」
「もし破ったら、私も死んで後を追いますからね」
「……うん」
気持ちは少し重かったが、心配してくれる事には感謝している。
エレナの為にも、ますます死ぬわけにはいかなくなった。
朝食を食べ終えると、そろそろ屋敷を出る時間となる。
「……ユーリオン」
母がとても心配そうに見つめる。
僕のダンジョン行きが決まった際、母は抗議した。
しかし、グランファーレル王国の伝統であり、5歳という年齢にも前例がある。
そして僕自身が優秀であると周囲に認知されていたので、決定は覆らなかった。
「大丈夫ですよ。無理も無茶もしません」
母が無言で僕を抱きしめる。
気恥しくもあるが、嬉しさを感じてしまう。
「……ピエリス以外は信用してはダメよ」
「それもわかっています」
今回、僕に護衛として同行してくれるのは、ピエリスを除けば9人。
その全てが国側で用意しているので、アリアノールの息がかかっている可能性が高い。
正直、護衛と言ってもピエリス以外は信用できない。
「……ピエリス、ユーリオンをお願い」
「任せてください。命にかけても護りますよ」
「ユーリオン様は当然ですが、兄さんも無事に帰ってきてくださいよ」
「ああ。いっそユーリオン様と2人の方が気が楽だ。敵かもしれない味方はたちが悪い」
「……ニクスもユーリオンをよろしくね」
「ピィー!!」
ニクスの返事を最後に屋敷から冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドへ入ると、特に何かを期待していたわけではないが、普通だった。
中は人が集まるだけあって広く、正面奥に受付が全部で4つある。
左2つは依頼受注の「受付」、右2つは依頼達成の「受付」と、素材買取用の「受付」だった。
左壁の方に依頼内容の書かれた紙が貼られており、今も3人ほど見ている。
右側には机と椅子が置かれているので、受付待ちや、待ち合わせ等に使われているのだろう。
ここへ来たのはダンジョンへ入る為に必要な冒険者カードを作るためである。
子供でも可能な依頼もある為、冒険者登録は意思疎通さえできれば、種族・年齢制限は無い。
冒険者といっても戦ったり、ダンジョンへ入る事だけが仕事ではない。
低ランクの依頼なら採取や配送、清掃や調理の手伝いなどもあるので、実質何でも屋に近い。
僕は受付で登録をお願いする。
国から今日登録しに来る事は伝わっているので、特に問題も起きない。
「初めまして、ユーリオン殿下」
「よろしくお願いします」
「はい。実物を見ながらの方が説明も分かりやすいと思いますので、先に登録を済ませますね。
こちらのカードに血を一滴でいいので、垂らしてもらえますか?」
僕は右手の人差し指をナイフで軽く刺し、血を垂らす。
1分も経たないうちに僕の冒険者登録が完了し、カードが出来上がる。
表示される情報は名前とランクくらいかと思っていたら、だいぶ細かい。
【名:ユーリオン】【総合ランク:F】【個人:-】【集団:-】
【所属:-】【パーティー:-】
【ダンジョン:-】
【対魔:-】【対人:-】【守護:-】【採取:-】
【罪:-】
「それでは、説明させて頂きます」
「はい」
「ランクは総合評価で最高のSから最低のFまであります。
同じランクでも評価が良ければ【+】が付き、逆に評価が悪いと【-】が付きます。
その隣にある個人は1人での戦闘能力。集団は複数人での戦闘能力です」
「所属はどこの国のギルドに所属しているかとなり、所属できるのはBランク以上です。
所属すると、そのギルド周辺から許可なく移動できず、指定した依頼は受けて貰います。
その代わり、国やギルド側で便宜を図ったり、評価に応じた給金が毎月支払われます」
「パーティーは冒険者同士の2人~6人で組んでいて、名前を登録した場合に表示されます。
複数のパーティーに登録はできず、正式な登録も抹消もギルドで行う必要があります。
臨時のパーティーなら、自由に組んでもらってかまいません」
「ダンジョンは、どこのダンジョンの、どの階層まで攻略しているかが表示されます」
「対魔はモンスターとの戦闘評価。対人は人種との戦闘評価。
守護は場所や物、依頼人をどこまで護れたかの評価。
採取は依頼物の状態が良いかの評価です。
こちらも全て、ランクと同様にS~Fで評価されます」
「罪はカード登録後からの発覚した罪が表示されます。
登録前の罪や発覚していない罪は表示されない為、罪が無いからと信用しすぎないように注意を」
「何かご不明な点はございましたか?」
「情報がかなり細かいのですね」
「そうですね。モンスターとの戦いと、人種との戦いは全く違います。
戦闘が得意でも、護衛が苦手な人もいる。
採取も物の状態が悪ければ、依頼人は納得しません。
冒険者ギルドには様々な依頼が来ますし、受ける側も同じ人は存在しません。
なので、「依頼人」「ギルド」「冒険者」が全員が納得できるように細かく分けています」
「なるほど」
「依頼は同ランクか、1つ上か1つ下のランクまでしか受けられません。
依頼の中には、冒険者のランクを指定している事もあります。
それと、カードは身分証にもなっているので、無くさないように注意してくださいね」
「はい、わかりました。説明ありがとうございます」
お礼を言って席を立つ。
ピエリスは既に登録しているので、説明を受けるのは二度目だろう。
説明を受けている間に今回護衛してくれる騎士団が到着したようだ。
代表の1人が近づいてくる。
「お初にお目にかかりますユーリオン殿下。護衛代表を務めさせて頂きますシフリーと申します」
「ユーリオンです。よろしくお願いします」
「それでは馬車を用意していますので、どうぞこちらに」
僕は移動しながら騎士団を鑑定してみる。
まだ鑑定のレベルが低いので、魔力を持つ生物に使用しても、効果は薄い。
残念ながら、スキルなどの知りたい情報は得られない。
騎士団に偽装してくる事も警戒していたのだが、名前も騎士団である事も本当だった。
ダンジョンへ向かう途中で一度魔獣数匹に襲われたが、騎士団が全て倒してくれた。
そうして初めてのダンジョンとなる「炎のダンジョン」へたどり着いた。
評価とブクマをお願いします。




