表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第2章 ダンジョンへ行くまで
13/216

エレナの事情1


 side:エレナ


 私はグランファーレル王国にある、特産品も何も無い田舎の村で生まれた。

 両親は愛情深く大切に育ててくれたが、私は村ではとても嫌われていた。

 いや、憎まれていたと言ってもいいのかもしれない。


 私が何か嫌われる事をしたわけではない。

 私が生まれてきたのが罪だと、村の人達にはよく言われた。


 紫の髪や左右で違う瞳を持つのは呪われてるそうだ。

 そのどちらかでも嫌悪の対象となり、時には災いを広げない為に殺される事もあるらしい。


 私はその両方を持って生まれてきてしまった。

 それは大人ですら聞いた事も無いそうだ。


 私は酷い事を言われる度に傷つき悲しんだ。

 でも一番辛かったのは、私のせいで何も悪い事をしていない両親まで酷い事を言われる事だった。


 両親はいつも私の髪も瞳もとても奇麗だと褒めてくれた。

 それでも私が泣き止まない時にはいつも同じお話をしてくれた。


 それが本当にある物語なのか、両親が私の為に考えてくれた物語なのか分からない。

 でも、そのお話が私の心の支えとなっているのは間違いない。


 ある所に他の人とは違う容姿を持つ小さな女の子がいました。

 女の子は皆と仲良くしたいので話しかけますが、いつも酷い事を言われます。


「お前みたいな奴とは仲良くなんかできない」

「なんて醜い姿なんだ」


 女の子は悲しみましたが、きっと自分を知ってもらえれば、仲良くできると頑張ります。

 でも誰も女の子の中身を知ろうとはしてくれません。


 女の子の周りには容姿でしか判断できない人ばかりだったのです。

 ある時、悪いドラゴンがやってきて言いました。


「俺様は腹が減っている。生贄を用意すれば暴れないでやろう」

 

 皆は、女の子を生贄にする事にしました。

 女の子は悲しかったし、怖かったけど逃げませんでした。

 女の子がドラゴンの元へ行き、最後だからと尋ねます。


「私の容姿はドラゴンさんから見てどうですか」

「いちいち生贄の容姿など気にしたことは無い」

 

 それは冷たい言葉のように感じますが、女の子にとっては違いました。

 初めて容姿を否定されず、他と同じに扱われたからです。

 女の子がもういいかと諦め、ドラゴンが口を大きく開けたその時でした。


「待て」

 

 そこには、女の子が見た事のない男の子がいました。

 ドラゴンは食事を邪魔されたので怒ります。


「なんだお前は」

「僕は女の子を助けに来たのだ」

 

 ドラゴン以上に女の子は驚きました。

 女の子に優しくしてくれる人など、誰もいなかったからです。

 男の子はドラゴンを相手に勇敢に戦い、自らも傷つきながらも撃退しました。


「どうして私なんかの為に?」

「貴女のように美しい女の子は初めて見ました」


 男の子は遠くから旅をしていた王子様でした。

 女の子の容姿は遠いところでは、美しいとされていたのです。


「美しい貴女、どうか僕と結婚してください」

「はい、私と結婚してください」

 

 女の子は王子様の国へ行き、時が経つと結婚しました。

 女の子が今まで言われた酷い事の何倍も、王子様は女の子の容姿を褒めてくれます。

 そして女の子はとても幸せに暮らしました。 


 両親はこのお話をした最後にいつも言っていた。


「エレナ、お前にもいつか髪も瞳も奇麗だと言ってくれる男の子が現れるよ」

「ええ、そうよ。だってエレナはこんなに可愛いんだもの」

 

 私は両親以外にも、私を好きになってくれる誰かが現れるのを待っていた。

 でも、村でいつまでも男の子が来るのを待つ事はできなかった。


 私が生まれた年から、良くない事が起こるようになっていたからである。

 大雨が続き、作物が駄目になる事があった。

 魔獣に畑が荒らされる事があった。

 税が上がり、生活が苦しくなった。

 病気で亡くなる人がいた。

 大きなケガをする人がいた。


 良くない事が起こる度に全てを私のせいにされた。

 そして最悪の1日となったあの日だ。


 村の近くに肉食魔獣の群れが住み着いたのを村人が見つけた。

 恐怖に錯乱した村人達は私を殺す事を決めた。


 村人の冷静じゃない様子に気づいた両親は、私を連れて村を出る事を決める。

 ほとんど荷物を持たないまま急いで逃げ出したが、村人に気づかれてしまう。

 

 村人たちは逃げる事を許さず、私たちを追ってくる。

 そして騒ぎに気づいた魔獣も襲ってきて大混乱となった。


 両親は村人の矢に撃たれ、血を流していたがそれでも私を庇い逃げ続けた。

 気づけば夜になっており、王都の壁がうっすらと見えてきた。

 

 両親の血の匂いに惹かれたのか、魔獣もしつこく追ってきている。

 私は何度も嫌だと泣き喚いたが、両親は私だけでも逃げろと言う。


「エレナ、王都まで行って助けを呼んできてくれないか」

 

 ……嘘だ。

 自分たちを囮にして私を逃がすつもりなんだ。


「エレナ、広い王都の中でなら、きっと貴女を好きになってくれる子が現れるわ」


 ………噓だ。

 両親以外に私なんかを好きになってくれる人なんていない。


「「エレナ、大好きだよ。これまでも、これからも愛しているよ」」


 私は溢れる涙も拭わず、ひたすら夜の道を走った。

 何度も振り返りそうになる自分を抑える。

 何度も戻りたくなる自分を抑えつけ走り続けた。


 私が門の近くまで行くと、門番が2人いた。

 運が良い事に1人が門から離れる。

 私は近くにあった石を拾い、音がなるように外壁に石を投げつける。


「ん?……なんの音だ」


 音の確認に行くと、門番がいなくなると思ったのか、その場を離れてくれない。

 私は「どうか門から離れてほしい」と願いながら再度石を投げた。


 願いが通じたのか、門の方を警戒しつつも音のした方へと移動してくれた。

 そして私は夜の闇にまぎれ、こっそりと王都へと入る事ができた。


 夜を人の来なそうな路地裏で明かすと、起きた時には朝になっていた。

 起きたら全て悪い夢だったなんて事はない。

 これからどうすればいいのだろうか。


 私は拾ったボロボロの布で髪と顔を隠しながら目的の無いまま移動する。

 美味しそうな匂いがしてくると、お腹が鳴った。


 どんなに悲しくて辛い時でも、お腹は空くのだと自嘲する。

 両親が持たせてくれた財布には、少しだがお金が入っている。

 今、思えば私のような小さな女の子が、人目の付く場所で財布を広げるのは良くなかった。


「お嬢ちゃん、おじさん達お金に困ってるんだ。貸してくれないかい?」

「そうなんだ。絶対に返すし、なんなら倍にして返すよ」

 

 知らない男に声をかけられた。

 危険だと思い、逃げようとすると布を掴まれ、捕まってしまう。


「おいおい、なにも逃げる必要はないだろう?」

「そうだぜ。別になにもしやしないって」


 私は怖くて暴れると、爪が男の手を引っ搔いたのか、男が私を手放す。

 その時に布が落ちて、私の髪も瞳も見られてしまった。

 自分を隠すための布を拾う余裕は無く、私は全力で逃げた。


 逃げてる途中で私を捜す男の声が聞こえると、怖くて震えてしまいそうになる。

 とっさに物陰に隠れると、生ごみだらけで臭いも酷く、更に汚れてしまった。

 

 その後は逃げ疲れて路地裏の陰で休んでいると、不思議な男の子に出会った。

 私と同じくらいの年齢で、私とは違い、今まで見た事が無い奇麗な男の子だった。

 ボロボロで汚れている自分が恥ずかしく顔を伏せていたが、ふと見上げると目が会ってしまう。


 男の子はこんな私を見て「奇麗だ」と言ったのだ。

 からかっているわけじゃない事は、真剣な瞳を見ればわかった。

 期待しちゃいけないと思いつつも、私は尋ねてしまった。


「……わたしの目…嫌じゃないの?」

「とても美しいと思う」 

 

 私は涙が止まらなかった。

 両親の言っていた事は本当だった。

 両親以外にも私の瞳を褒めてくれる人はいたんだと嬉しかった。

 褒めてくれた事以上に嬉しかったのは、彼が両親の言葉を嘘ではなく、本当にしてくれた事だ。

 

 気が付くと、男の子といた大人がいなくなっていた。

 男の子の名前はユーリオン君。

 私の事を聞かれたので話すと、両親の事を考えてしまう。

 ユーリオン君が一緒に来ないかと誘ってくれて、本当はとても嬉しかった。


 これから、どうすれば良いのか分からないし、瞳を奇麗だと言ってくれた相手なのだ。

 信じたいと思えるが、私を助ける理由がわからなかった。


 私が理由を尋ねると、ユーリオン君はまた私の瞳が奇麗だと言ってくれた。

 もういい、私には十分な理由だ。

 私は何度も聞かせてもらった物語を思い出し、この男の子が王子様なんだと思った。 


 その男の子は魔法を使う事ができ、お湯で私の汚れを流してくれた。

 せっかくの王子様との出会いなのに、私が汚れも臭いも酷いのは、あんまりだと思う。


 汚れを落とした後、私を追っていた男に見つかって挟まれた時にはもう駄目だと思った。

 怖くてほとんど目をつむっていたけど、ユーリオン君が魔法で倒したようだ。

 物語でドラゴンを撃退した王子様のように頼もしいと感じた。


 ユーリオン君といた大人の男性が戻ってきた。

 私の為に服や帽子を買いに行ってくれたらしい。

 嬉しさよりも申し訳なさが大きく、遠慮してしまう。


 すると、着替えないと一緒に行けないと言われてしまう。

 私は置いて行かれないように慌てて着替える。

 着替え終わって感想を聞くと、また褒めてくれた。


 路地裏から出ると、今度は大人の女性2人に出会う。

 ママもとっても奇麗だったけど、この2人はさらに奇麗だった。

 

 ユーリオン君達は皆奇麗だけど、耳が私や両親とは違う。

 もしかしたら、別の種族なのだろうか。

 

 ユーリオン君の家に着くと、とても驚いた。

 それは広くて奇麗なお庭もある、とても大きな家だった。

 

 家の中に入ると、私を見た人が悲鳴を上げたり、怖がられたりもした。

 ……やっぱり、村以外でも私は嫌われているらしい。


 最初にアイリスさんがお風呂へと入れてくれて奇麗に洗ってくれた。

 路地裏では簡単に流しただけなので、奇麗になれてとても嬉しい。

 お風呂の中でアイリスさんからは色々な話を聞いた。


 ユーリオン君やアイリスさんは別の種族でエルフという事。

 元々エルフは別の国に住んでいる為、私の髪や瞳に嫌悪感は無いそうだ。

 

 ユーリオン君が王族で、本当に王子様なんだと知った時には感動して涙が出た。

 でも、エルフは五感が鋭いと知り、第一印象が臭かったのかと思うと、別の涙が流れた。


 お風呂から上がると、ようやく奇麗な状態でユーリオン君に会えた。

 今度は瞳だけでなく、紫の髪も奇麗だと言って貰えた。

 

 また泣きそうになったが、食事を用意してくれたと聞くとお腹が鳴ってしまう。

 とても恥ずかしかったが、食事はとても美味しかった。

 すると、私は急に眠気が来てしまい、眠ってしまうのだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ