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【異世界転生】理想の執事を目指します  作者: 夜空のスピカ
第2章 ダンジョンへ行くまで
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初めての戦闘と母の気持ち


 side:ユーリオン


 人気のない路地裏にて、誘拐犯らしき男2人に挟まれた僕とエレナ。

 まだ幼い僕らはどこから見ても、絶体絶命のピンチと言えるだろう。

 エレナはまた泣きそうになっているが、僕は違った。


 僕はまだ執事にはなれていないし、隣で震えているエレナは主ではない。

 でも、悪漢に襲われて女の子を守るこの状況はアニメで見たシーンにとても良く似ていた。

 

 時間を稼げば、ピエリスが戻ってきて助けてくれるという保険もあるので、恐怖は無かった。 

 僕は戦う事を決めると、まずは1人確実に倒すことにする。


 相手は2人でこちらは実質1人。

 さらには挟まれて逃げ場が無い状況である。

 僕は作戦を決めると、最初にやってきた男の方に近づき地面に両手をつける。


「ん? なんだ、土下座して自分だけは助けてくださいってか」

 

 男は馬鹿にするように笑うが、もちろん、そんなはずはない。

 僕は両手から地面へと魔力を流し、油断している男へと、地面から魔糸を繰り出す。


「な、なんだこれ、てめえ何しやがった!?」


 男は叫ぶがもう遅い。

 両手両足を縛り、首の頸動脈を絞めつけて気絶させる。


 首を絞めるのは殺してしまう可能性もあるし、後遺症が残る場合もあるので危険だ。

 だが、この世界には魔法があるので、動けなくしただけでは安心できない。

 動けないようにし、さらには意識を奪って初めて安全と言えるのだ。


 目の前の状況に驚いていた、もう1人の男が慌てて懐から武器を取り出す。


「クソガキが! まさか、魔法を使えるとは思わなかったぜ」


 ナイフを右手に持ち、こちらの魔法を警戒しているのか、徐々に迫ってくる。


「逃げるよエレナ!」

  

 僕はエレナの手を引っ張り、倒した男の方から路地裏を抜けようとする。


「逃がすかよ!」

 

 男は逃がすまいと本気で迫ってきた。

 僕は逃げるつもりはないし、子供の足で大人から逃げれるとは思っていない。

 

 男が手を伸ばし、僕の後ろを走っていたエレナへと触れようかという瞬間ギリギリ間に合う。

 地面から魔糸が伸び、男は拘束されると地面に転がる。


「くそがぁー! 地面には触れてなかっただろう!?」


 最初に地面に両手を付けたのは、そうしないと魔法が使えないと思わせる為だ。

 手からの方がイメージしやすく早いのだが、地面を踏んでいれば足からも同じ事ができる。

 

 予想通り、こちらが魔法を使えないと勘違いし、相手は油断していた。

 でも、やはり足を通しての場合は発動が遅く、少し危なかった。

 僕は転がった男の方も念の為、頸動脈を魔糸で絞めて気絶させる。


 こうして僕の初めての戦闘はケガも無く、勝利する事ができたが改善点は多い。

 地面から魔糸を出す技は、最終的には視認できる範囲なら、地面に触れずに出したい。 

 戦闘が終了しても目をつむり、震えている彼女に声をかける。


「エレナ、もう大丈夫だよ」 

「……ユーリオン君、強いんだね」

「日々鍛えていますから」 

 

 エレナを落ち着かせていると、丁度いいタイミングでピエリスが戻ってくる。


「……この縛られて倒れている男たちは何ですか?」

「誘拐犯です」

「……色々言いたいことはありますが、まずは事情を聞かせてください」

 

 僕は事の経緯をピエリスに説明した。


「事情はわかりました。この者たちの始末をつけますので、先に戻っていてください」

「わかりました」

「それと彼女の服と靴、それに髪を隠せるように帽子も用意したので、こちらをどうぞ」

「ありがとうございます」


 帽子の事までは気が回っていなかったので、気遣いに感謝する。


「エレナ、これに着替えて」

「こ、こんな奇麗なお洋服着れないよぅ…汚しちゃう…」


 タオルの時のように遠慮するが、流石に無理やり着替えさせるわけにもいかない。


「着替えてくれないと、一緒に行けないよ?」


 ここまできて、置いていく気などないが、そう言うと彼女は涙目になりながら着替える。


「き、着替えたよ。どうかな?」

「とても似合っているよ」

「あ、ありが…とう」

 

 エレナが照れながらお礼を言う。

 大きな白い帽子は髪だけでなく顔も隠せたし、白いワンピースもとても似合っている。

 

 エレナと路地裏から出ると、母とアイリスが待っていた。

 戦闘が終わって安心していたが、まだ母からの許可という難題が待っていたのを思い出す。

 何をどう言って説得するのか考えたが、まずは一番大事な気持ちを伝える事にする。


「……その娘?」

「はい、エレナを助けたいんです。お願いします」

「……いいわ」


 色々言われるかと身構えていたのに、あっさりと許可がおりた。


「……まさか、最初に欲しいと言われるのが女の子だなんて」

 

 吹きながらも、アイリスが笑いを必死に堪えていた。


「……いえ、そういうつもりではないのですが……許可がもらえるならそれで良いです、はい」

 

 ピエリスを除いた4人で屋敷へと帰るのであった。

 エルフのアメリアとアイリスは気にしていなかったので忘れていた。

 エレナの髪や瞳を見た屋敷の使用人達が悲鳴を上げてしまい、ちょっとした騒ぎになった。

 

 エレナはアイリスがお風呂へ入れて洗ってくれた。

 髪も整えてもらったようで、清潔になったエレナは本当に可愛い。


 汚れて乱れていた髪はアメジストの輝きを取り戻し、サラサラになっている。

 照れて恥ずかしそうにしながらも、こちらを見つめる青と橙色の瞳は、吸いこまれそうなほど美しい。


 エレナに食事を取らせると、安心したのか、その後すぐに眠ってしまった。

 無理もない。

 こんなにも幼い女の子が親を亡くし、1人で逃げてきたのだ。


 他の使用人が怖がるので、アイリスがエレナをベッドへと運ぶ。

 エレナが起きたら辛いかもしれないが、詳しい話を聞き、今後を決めなければならない。


「ただいま戻りました。誘拐犯は警備兵に引き渡しておいたので、ご安心を」 

 

 エレナが起きる前に先にピエリスが戻ってきた。

 ピエリスはユーリオンが気に病まないように、あえて言わなかった事がある。

 未遂で知らなかったとはいえ、王族の誘拐を実行したのだ。もちろん極刑である。


「誘拐犯?……何の話?」

「ユーリオン様、言ってなかったんですか?」


 アメリアとアイリスは路地裏には入らず、ユーリオンが言ってなかった為、知らなかった。

 ピエリスは当然伝えていると思っていた。


 ユーリオンは2人にピエリスが残る理由を用事があるとしか伝えていなかった。

 あの場で説明すれば時間を取られるし、エレナを早く屋敷に連れて行って安心させたかった。

 

 ユーリオンは2人と別行動してからの出来事を事細かに説明した。

 話を聞き終えたアイリスは、兄ピエリスをあきれた眼差しで見つめている。

 一方アメリアは涙を流し、ユーリオンを抱きしめる。


「……危ない事をしないで。

 あなたがどんなに普通の子より優れていたとしても、まだ小さな子供なのよ。

 今回偶々うまくいったからといって、次も無事である保証なんてない。

 死んじゃうかもしれないのよ」

 

 普段あまり感情を見せない母アメリアが、涙を流して心配する姿に強い愛情を感じた。

 僕には前世の記憶があり、愛情深く育ててくれた両親の事も覚えている。


 だからか、アメリアを母だと認識していても、心のどこかでユーリオンの母親なんだと思っていた。

 自分が政略結婚で生まれたので、アメリアにあまり愛されていないのではと。

 嫌われていると思った事は一度も無いが、スキンシップの多い前世の母と比べてしまっていた。 


 事実は違う。

 たしかにアメリアは夫であるユリウスを嫌ってはいないが、男女の愛情は持っていない。

 それでも自分が生み、日々成長していくユーリオンを他の何よりも愛していた。


 アメリアにとって初めての子供、子育てである為、接し方や愛情の伝え方がわからなかった。

 元々自分の感情を伝えるのが苦手な事もあり、ユーリオンは気づかなかった。

 

 だが、この件に関してはアメリアだけが悪いのではない。

 普通の子供なら甘え、いたずらやワガママで周囲を困らせて自分をアピールするものだ。

 しかし、ユーリオンは悪い事もしないが、自分から甘えたりもしなかったのだ。

 

 どちらかが悪いという話でも、どちらも悪かったという話でもない。

 感情を出すのが苦手な母と、甘えない子供の不器用な組み合わせになっただけの事だ。

 これでは、一般的な親子関係のようにはいかないだろう。


 気づけばユーリオンも涙を流していた。

 抱きしめられ、涙を流し心配してくれるアメリアに、母親の愛を感じていた。


 前世の親と今の親を比べるなんて、馬鹿なこ事をしたものだと思う。

 愛情表現が不器用で伝わりづらいが、アメリアはユーリオンを、僕を愛してくれていたのだ。


「心配かけて、ごめんなさい」

「……男の子なんだから、ちょっとくらいはヤンチャでもいい。

 少しくらいならケガをしてもいい。

 でも、どうか命を早めるような真似だけはしないでほしい」 

 

 涙ながらに謝る僕の背中を母は優しくさすってくれた。

 そして、その言葉で理解してしまった。

 

 エルフである母は、ハーフエルフである子供の僕より定められた寿命が長い。

 僕は生まれた瞬間、母より先に死ぬことが定められているのだ。

 

 ……親より先に死ぬのが定められているハーフエルフは、なんて悲しい種族なのだろうか。

 僕は前世だけでなく今世でも、親より先に死ぬような親不孝者だ。


 僕は心の中で誓った。

 1番の目標は理想の執事となる事でこれは変わらないし、変えるつもりはない。

 2番目に母であるアメリアを大切にしようと。


 前世で親孝行出来なかった分も足し、生んで良かったと思われる子供であろうと。

 今は何ができるのか、何をすればいいのか分からない。

 だけど僕の死後も母が穏やかに暮らせる環境を用意すると決めた。


 そして母アメリアには、前世の事を含めて全て話そうと思う。

 気味悪がられるかもしれないし、嫌われるかもしれないという恐怖心はある。

 それでも、隠し事をしながらの長い親子関係など僕にはできなかった。


 僕は抱きしめている母から一旦離れると、涙を拭い伝える。


「お母様にとても大事な話があります」

 

 ピエリスとアイリスは、エレナの様子を見てくると言い、気を遣って部屋から出ていく。

 2人が部屋から出ると、母が魔法で防音状態にする。


「……これで何を話しても、外には漏れないわ」

 

 僕は前世で死んで神様に転生させてもらった事、夢の事、スキルの事を全て伝えた。 

 少し長い話となってしまったが、母は話を遮る事無く、最後まで聞いてくれた。

 僕の話が終わると、母がとても真剣な表情になる。


「……一つだけ正直に答えてほしい」

「……なんでしょうか?」

「私の赤ちゃんに貴方の魂が乗り移ったのではなく、

 貴方が私の赤ちゃんとして生まれてきたのよね?」

「はい、神様が『転生』と言っていましたので、そのはずです」


 もし仮に元の魂を追い出して僕の魂を入れたのなら酷い話だ。

 だけど、あの神様がそんな非道をするとは思えなかった。


「……そう、ならあなたは間違いなく私の子供よ」

 

 そう言うと母が僕を優しく抱きしめてくれる。


「僕の話を信じてくれるのですか?」

「そうね、普通なら信じられないわね。でも、子供の言う事は信じたいわ」

「ありがとうございます」 

「……でも執事になるために別世界へ行くだなんて、凄い決断ね」

「夢を叶える為ですから」 

「……そう。なら、その夢が叶うように応援するわね」


 それからピエリスがエレナが目覚めたと呼びに来るまで、たくさんの事を話した。

 全てを話しても受け入れてくたアメリアには感謝しかない。

 さすがに甘えたりは恥ずかしくてできないが、ようやく親子らしくなれた気がした。 

 

 ちなみに僕の前世の年齢を知っても、アメリアの態度は変わらなかった。

 長命種のエルフからすれば、僕程度はまだまだ子供なのだろう。



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