出発
今日は、ユーリオン達がルナマリアに向かって出発する日だ。
準備や今後の予定についての話し合いも、昨日までに済ませてある。
朝食を頂き、別れの挨拶をする。
ここで問題が1つ発覚する。
ユーリオン達の馬車は、王族が使う物なだけあって大きいし、良い物だ。
しかし、身体の大きいヴィルトまで入ると厳しいと言わざる得ない。
「ヴィルト、走れる?」
「……イジメか?」
「冗談だよ」
ヴィルト用に用意してもらった大きい馬をジェイドが連れてくる。
黒い毛並みに立派な体格を持っているので風格がある。
「名前はあるのか?」
「いえ、特には」
「赤〇馬と黒〇号、どっちが良いかな」
「無双するのも、覇王になるのもやめて」
「間を取って、キタちゃんって呼ぼうかな」
「どう間を取ったの!?」
「よろしくな」
ヴィルトが声をかけると、馬が背を向ける。
「お、乗れって事か」
ヴィルトが乗ろうと近づくと、馬が後ろ足で蹴り上げる。
オークを蹴っ飛ばすほどの脚力なので、これは頼もしい。
「なにしやがるこの駄馬っ! てめぇ馬刺しにして喰ってやる!!」
「ヒヒーンッ!!」
馬と本気で喧嘩しそうなヴィルトをユーリオンが宥める。
馬を怪我させてしまえば、移動手段が無くなるので、困るのはヴィルト本人だろう。
馬の方もこんな大きい奴は乗せたくないと文句を言うので、ユーリオンが宥める。
奇麗な水に食事、甘いリンゴに適度な休憩を約束する事で頑張って貰える事になった。
「もう、ヴィルトも〝言語理解〟があるなら、自分で交渉してよ」
「は? いや、馬の言葉なんか分かるかよ。え、お前分かるの?」
「え、うん……ヴィルトもじゃないの?」
「いや、俺は『私、動物の気持ちが分かるんですぅ』みたいな痛い奴じゃないし」
「いや、そういうんじゃなくて、ほんとに分かるんだよ」
「……お前がそう思うなら、そうなんだろうな……お前の中ではな」
「…………」
鑑定スキルの無いヴィルトは、よく分かっていなかった。
しかし、鑑定スキルを持つユーリオンは、自分とヴィルトの違いに気づく。
同じスキル名でも、ヴィルトの方にはレベルの表示が無く、僕の方には有る。
(………スキルをくれた神様の違いだろうか?)
ユーリオンは少し考えたが、考えても答えは出ないので、思考を止める。
現状違いは有っても、明確に困るというほど問題は起きていないからだ。
それはそれとして、少しイラっとしたので、その分は走らせる事にする。
こうしてユーリオン達は、ルナマリアに向けて出発した。
住人達も笑顔で手を振り、見送ってくれている。
これなら、次に来た時も歓迎してくれるはずだ。
しかし、住人達は不思議に思っていた。
なぜ、誰も乗っていない馬が一緒に走っているのだろう?
なぜ、あのオークは馬に乗らず、走って追いかけているのだろう?
「ちょ、待、俺を乗せてけー」
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